第7話 彼氏とベッド

 調子が狂い、ほてった体をカズオ君に押し付けて、キスをしたら本能でというプランが立ち消えた。


「どうぞ」


「お邪魔します。可愛い部屋だね」

 自分が可愛いと言われたみたいでニヤけた。いや、ここは私が主導して、ちょっと痛いのはこの際は仕方ない。男の子は獣で穴に入れたくなるらしい。濡れてくれたらいいけど。


「ここに座って」


「床で寝るよ」


「ダメ、ベッドで」


「分かった。隅で寝るから気にしないで寝つきと寝相はいい方だから」

 私はカズオ君を押し倒した。


「どしたの?」

 無理やり、カズオ君のくちびるに吸い付いた。グッと押し込んで何とか舌を入れようとしたけど、くちびるが開かない。仕方ないのでくちびるを離した。


「息が出来なくて死にそうだったよ。今のがチュー? くちびるが固くてびっくりしたよ」


「胸を触って」


「あ、そうだね。忘れてた、レポート完成したよ。今から取りに行くね」


「私を見て、私だけを見て」


「分かってる。今、君の胸の話をしている」

 天然も時には悪だ。


「レポートもどうでもいいから、胸を触って、何か感じない?」


「背中が熱い」

 やっと、やっと本能が出てきた。その熱いのを私に押し付けてよ。一緒に大人になろうよ。え、何? この状況であくび?


「最近、腰が痛くてさ。冷やすより温める方がいいみたい」


「もしかして湿布貼ってるの?」


「時間差で効いてくるみたいなんだ。これがいいってバレー部の友達が、誤解しないでね。男子だから腰をやるともしもの時に困るって言われたからさ。そのもしもが何に当たるかは教えてくれないんだよね。彼女がいるなら彼女が可哀想だって、付き合っていることは言ってないよ」


「も、い、い」


「へ?」


「床で寝ろ!」

 私はカズオ君の横に転がり、蹴り落とした。


「ベッドで寝かしてくれるって、言ったじゃん」


「取り消しよ、取り消し」


「腰が痛いって言ったのに何で」


「うるさい、うるさい、うるさい。この家から出ていけ」


「電車ないよ」


「床で満足出来ないなら下のソファで寝ろ」


「あのソファ気持ちいいんだ。ご厚意感謝します。ゆっくり眠れそうだ。下にレポート置いておくね」


「そんなのいらん。おやすみ」


 階段を下りて行く音が消えた。何よ、人がせっかく攻めたのにさ、何もない顔で腰が痛いって言って、良いふうに捉えたら湿布のせいだけでは無いかもしれない。


 もしかして誰ともした事が無いから、腰が熱くなる感覚に慣れていないのかも、いやいや天然だから押し倒されても何があったか分かっていないだけという線もある。

 今頃、下で悶々もんもんとしているかもしれない。ちょうどトイレに行きたいし、覗きに行くか。そうかトイレで致している可能性もある。

 そこに乱入してよしよしいいぞ。


 階段を下りてソファのある部屋を覗くとスースー寝るカズオ君が、ムカついたので腹を足で蹴飛ばした。

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