最終話 微かな、笑み

私は、晴れた空を見上げながら、縁とよく一緒に散歩をした、河川敷を歩いている。


縁を失ってから、5年が経ち、私は大学生になっていた。両親や縁の両親、篝君や友達が私を支えてくれた。だから、今、私はここにいる。

昨日、篝君が告白してくれた。縁と私をよく知る篝君は、ゆっくりと歩み寄ってくれた。

周りも私と篝君の関係に、なにも言わずに、ゆっくり見守っていてくれていたと思う。

篝君には、感謝しきない程の感謝があり、篝君となら、とはっきりと思うことができる。


篝君の気持ちに応えたい。


自殺をはかった時、抱きしめてくれた縁に言われた気がする。いつか幸せになれると願おう、と。


晴れた空を見上げる。


縁の分まで笑わないよ。私は、私の心のままに笑ってる。


縁の分まで泣かないよ。私は、私の心に従って涙を流してる。


そして、時が私を癒してくれたと思う。縁は、過去のもの。


だけど、やっぱり縁に会いたいと、心から思う。


あの日、あの時、感情を取り戻した私に、夕陽の光が、縁の微かな、笑みが見えた。そして、心に感じた微かな重み。


その微かな重みを胸に、私は晴れた空を見上げ、微かな、笑みを返す。



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