第2話

のりのきいたパリパリのワイシャツにそでを通し、真新しいネクタイを締めれば、新入生の出立。野球と言えば坊主!などという古臭い考えを一新するべく、野球部から見たら長く、他の人から見たら短い髪をセットする。高校生といえばワックスだろうと意気込んだはいいものの、使い方のわからないおしゃれアイテムは朝っぱらから虎雅を困らせた。朝練におしゃれもクソもあるかと、適当に立たせた髪は春風に靡く。電車に揺られて二駅、私立の名に恥じない立派な校舎に迎えられ、虎雅の一日は始まった。


っしゃこーい。グラウンドにこだまする掛け声。もはや、日本語かどうかも定かではない。強豪というだけあって、朝練からハードだ。4月頭の寒さの残る気温も、これだけ動けば真夏と大差ない。滝のような汗に視界が滲む、必死に追いかけてグラブにボールの収まるあの感覚は何度味わっても忘れられない。劇薬のように効いてくる。1時間という短い時間に、短期集中で行われる練習は酷く身体にこたえた。

1時間目が始まる頃には虎雅の意識は夢へと堕ちていた。

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