第44話 SASUKEェ
ワープ床を突破したら、ダンジョン名の由来でもある、アスレチック地帯に到着しました。
丸太の上を直進して、水たまりに落ちないように走り抜けるやつとか。
雲梯を、パワーで突破していくやつとか。
ロープ登りを、スピード勝負でやるやつとか。
これらの施設を、読者の脳内イメージで語るなら、SASU〇Eですね。
あっちのサスケじゃないですからね。写輪眼で有名な。
ちなみに写輪眼が一発で漢字変換できるのは、作者のIMEが学習してしまったのか、それともマイクロソフトがナルト人気に屈したのかはわかりません。
とにかくダンジョン配信者としましては、サスケぇ的なアスレチック地帯で、お客さんを集める方法が二つあります。
一つ目は、ガチガチのアスリートが真面目にクリアするやつ。
こちらが本来の使い方です。実際、スポーツ自慢の冒険者たちが、記録タイム狙いでチャレンジすることが多いですね。
二つ目は、女の子パーティーが、きゃーきゃーと可愛い悲鳴を出しながら、セクシーなシーンを連発するやつです。
みなさんもご存じ、お色気配信の題材として使われているわけですね。
となれば、連想するパーティーは、一つしかないですね。
吟遊詩人のジェナーディが率いる美少女パーティーです。
この物語が始まったころ、私たちは魔法ギルドの実施した実験配信に応募したわけですが、あのときからおパンツ配信業界のトップを走り続けているのが、ジェナーディです。
もしかして同じ時間帯に配信しているんじゃないかなぁと思って、私は予備のVITを使って、アスレチック渓谷で配信中の冒険者たちを一覧表示しました。
条件に該当した冒険者たちのアイコンが一覧表示されたわけですが、彼らと私たちが現地で遭遇することはないです。
なぜならこのダンジョンは、パーティーごとに別の空間を進んでいるんですよ。そういう仕組みじゃないと、入るたびに形を変えられないでしょう?
そんな仕組みのダンジョンにおいて、現在もっとも視聴者数を集めているのが、ジェナーディのパーティーでした。
「やっぱり配信していましたねぇ。ところで、髪型、衣装、お化粧に変化があるみたいですが、もしやアイドル要素を追加したんでしょうか……?」
ジェナーディ率いる美少女パーティーですけど、髪型や衣装に個性を持たせるようになっていました。
どうやらアイドルグループみたいに、役割担当を作ったみたいですね。
クール・パッション・キュートみたいに。
なんでそんなことをしたかといえば、彼女たちの配信の同時視聴者数が6000人まで減っていることから予測がつきました。
ジェナーディ以外のお色気路線の配信者が育ってしまい、そちらにお客さんが分散してしまったので、人気を維持するためにアイドル要素を追加したんです。
ふーむ、いくらジェナーディみたいな計算高い女であっても、ナンバーワンを継続するのは難しいんですねぇ。
うん、あらためて思いますね、私たちにお色気路線は無理です。
というわけで、当初の計画通り、第三の道を切り開こうと思います。
ずばり、お笑い体当たり路線です!
まずは私からお手本を見せましょう。
「レベル一の遊び人が、SASUKEェ的なコースを全力で走るとどうなるのか、その目に焼きつけてくださいね!!!!」
私はスタートしました。手抜きなんてせずに全力疾走です。
でも遅いです。だってレベル一のスピード能力って相当低いですし、そもそも遊び人の基礎ステータスが低いですし。
もしこれが記録狙いの配信であれば、まったく無価値な走りでしょう。
しかしお客さんを集めるための配信なんですから、足が遅いことはむしろプラス!
コメント欄も盛り上がっています。
『足遅すぎぃ!』『すげぇ、冒険者なのに、こんな遅いやつ初めてみた……』『とにかくがんばれユーリュー!』
いい感じですね。私の遅い走りと視聴者の心が一体化したのを感じます。
ならばあとはお客さんに笑いを提供するのみ!
私は、一つの目の障害である丸太渡りをいきなり踏み外して、下にある池にぼちゃんと落ちました。
ふっふっふ、ワザと落ちたわけじゃないですからね。
レベル一の遊び人が全力でアスレチックにチャレンジしても、運動能力が低すぎて、普通に失敗するんですよ。
もちろんコメント欄は大盛り上がりでした。
『ユーリュー、バランスなさすぎぃwww』『こんなひどいアスレチック配信見たことがない』『しかもワザとじゃなくて、マジで落ちてるから、おもしろすぎる』
これがお笑い体当たり路線の力です。たとえアスリートみたいな能力がなくても、おパンツ配信をやれるだけの美貌がなくても、お客さんを集められるんですよ。
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