海を背に 青条揚羽 夏は来ぬ

海を背に 青条揚羽あおすじあげは 夏は



 季語は夏は来ぬ、季節は夏。

 念のために書いておくと、夏はぬ、つまり来ないという意味ではない。夏はぬと読み、『ぬ』は完了の助動詞で、夏が来たという意味になる。

 そのまんま『夏は来ぬ』という童謡というか唱歌があるのだが、若い人はご存じないかもしれない。


 アオスジアゲハについては、『ちょう』だけでは春の季語となり、『揚羽あげは』では夏の季語となる。派生的に黒揚羽くろあげは烏揚羽からすあげはも夏の季語とされるが、なぜかネット情報ではアオスジアゲハは見当たらない。まあ、すでに夏は出ているので季語としてはそちらでいいだろう。

 あと、『海』はそれ単体では季語にならない。



 古くから詠まれている季語の中には、死語と化しているものも少なくない。

 季語のうち生物をテーマとするものでは、死語ではないが気候の変化に伴って現状が季語にそぐわないものとなったものもある。


 春のチョウは、早ければ3月から、遅くとも4月には飛んでいるが、アゲハチョウの仲間はそこから遅れてゴールデンウイーク明けごろから出現する印象であった。以前は。


 近年、といっても具体的にいつ頃からかは筆者は記録に残していないのだが、少なくとも2010年代末ぐらいには街なかで見かけるアゲハ(ナミアゲハ)もアオスジアゲハも、4月から成虫が見られるようになった記憶がある。

 とはいえ、だからといって揚羽も春の季語になどと言うつもりはない。

 やっぱり筆者にとっても、アゲハの仲間は夏の虫の印象がある。



 表題の句は、今年個人的に見た記録を確認していて、夏に海の見える公園に行った時の記憶を元に詠んだものだ。

 これで、海の青とアオスジアゲハの青が映えるような写真を一緒に挙げられればいいのだが、それは来年以降の課題としたい。

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