第2話瞬の能力

所長「そろそろ、助手を募集しようかと思っている」。


冬樹「そうですね、こんなオヤジが二人の探偵事務所じゃ、いつかやって行けなく

なりますもんね」。


所長「できれば、若い人材が欲しいんだがな」。


冬樹「若い人なんて来ますかね?」。

「どうやって募集するんですか?」。


所長「事務所の前に貼り紙をする」。


冬樹「え?」。「そんな紙切れで人、来ますかね?」。


所長「そんなに大勢来られても困るしな」。「ただし、条件は書いておく」。


冬樹「条件って?、俺を採用した時みたいに尾行や張り込みさせるんですか?」。


所長「今回はこの、事務所内で行う」。

「要連絡、24時間受付中、必ず日時をを指定して、その時間に必ず来ること」。

「それが条件だ!」。


冬樹「まさか、俺に一晩中この事務所に居ろと?」。


所長「そんなことはない」。「指定した時間に、この事務所に居ればいいだけだ」。

冬樹(ホッ)胸を撫でおろす。


所長「早速、貼り紙をしてきてくれ」。


冬樹「わかりました」。


こうして、アシスタント募集の紙を貼り、あとは連絡を待つのみだ。


瞬「アシスタント募集の張り紙がしてある!」。


実は瞬は、冬樹のことを知っていた。大学生の彼は冬樹の姿を見かけ、尾行した事が

あったのだった。


瞬「あこがれの人と一緒に働けるなんて超ラッキーだ」。


瞬「ふむふむ、連絡すればいいんだな」。


では、早速連絡を…。


所長「こちら槇原探偵事務所」。


瞬「瞬、瞬です。採用して下さい」。


所長「日時と時間は?」。


瞬「あと、5分くらいしたら向かいます」。


所長「5分!?」。


所長「わかった、メモできるようなものは所持しているか?」。


瞬「はい、でも、普段着なんですが、かまいませんか?」。



所長「かまわない、採用したら嫌な恰好でもすることになるからな」。


瞬「わかりました」。


所長「冬樹、あと5分くらいしたら、来るそうだ」。


冬樹「誰がです?、依頼人ですか?」。


所長「アシスタントだ」。


冬樹「さっき貼り出したばかりっすよ?」。


所長「こいつで決まれば、もう面接する事もないじゃないか」。

「ハッハッハッハー」。


冬樹(確かに、夜中に来られても困るし、かといって、ヤバイやつだったらどうしよう)


瞬(コンコン)「失礼しまーす」。


冬樹(入って来たのはどう見ても学生って感じだ。)

(からかいに来たのか?)


所長「自己紹介をしてもらおうか」。


瞬「初めまして、瑞穂 瞬22歳 大学生です」。「特技は陸上をやっていたので走るのが速いです」。「それと…」。

所長「よし、今から面接兼、試験をする」。「準備はいいか?」。

瞬「はい!」。


所長「では、この探偵事務所の電話番号は?」。

瞬「03-XXXX-XXXです」。

所長「次、私の名前は?」。

瞬「槇原 優です」。

所長「次、ここは何階だ?」。

瞬「5階です」。

所長「よし、今の時間は?」。

瞬「何時、何分、何秒です」。


冬樹(すごいな、観察力が優れている。)(ニコっとしてこっちを見た。)


所長「採用だ、いつから来れる?」。


瞬「本当ですか?、やったー」。

所長「次来る時間は追って連絡する」。


瞬「電話番号は…」。


所長「そんなもの、ディスプレイに表示されていた」。「発信者番号を切らずに電話してきた証拠だ」。


瞬「すごい、連絡待っています」。


冬樹(帰って行った)。


冬樹「所長、即決ですね」。「決め手は?」。


所長「わし好み、コホ、やつは探偵の素質を持っている。しかも若い!」。


冬樹「まぁ、やな感じはしませんでしたけど」。


所長「あとは任せたぞ、冬樹」。「アシスタントとして育てるのはお前自身だからな」。


冬樹「いい助手になってくれればいいですけど」。


次の日曜日、大学近くに瞬を呼び出し、同行させた。


瞬「これから、どうするんですか?」。


冬樹「まず、茶店に入って君の履歴書を見る」。


瞬「その後は?」。


冬樹「履歴書を確認しながら話す」。


瞬「わかりました」。


茶店に入り、履歴書に目を通しながら瞬に質問する。


冬樹「この世界に興味を持ったキッカケは?」。



瞬「冬樹さん、あなたに憧れていました」。


冬樹「俺?」。


瞬瞬「いえ、あなたを尾行させていただきました」。


冬樹「尾行?」。


瞬「一か月くらい前に、うちの大学にきましたよね?」。


冬樹「あぁ」。


瞬「その時見たんです」。


冬樹「なにを?」。


瞬「あなたをです」。


瞬はそのあと、俺を尾行した、いきさつを話始めた。


瞬{あまり見かけない人だったので、すぐに学校関係者ではないと思ったんです」。


冬樹「そして、あとをつけたと…」。


瞬「はい、駅までつけて、同じ電車に乗りました」。「冬樹さんが椅子に座ったから、近くでは降りないと思ったんです」。


冬樹「それで?」。


瞬「スマホはいじりながら、どこで降りるか観察していました」。

「同じ駅に降り、近くの喫茶店に入ったところまでです」。

「そのあとは知りません」。


冬樹「興味本位ってやつか?」。


瞬「ええ、それもありましたが」。


(瞬は小さい頃に両親を失くし、祖父母に育てられた事を語った)

瞬「こんな人がが父親だったらいいなって」。

「そう思ったらついていってしまいました」。


冬樹「親父か…」。


冬樹(俺の父は他界している、葬式にも出席した)。

(だが、あまり父親のことは好きではなかった)。


冬樹「わかった、ついて来い」。「行くぞ」。


瞬「はい」。


冬樹(あとになってわかるのだが、瞬は瞬間記憶能力の持ち主で、顔や名前、背景や匂い、時間の感覚にも優れており正に探偵にはうってつけの人材だった)。


これから二人で色んな事件を解決していくことになる。


瞬との出会い、偶然か?

それとも運命か?


冬樹(こいつの成長が楽しみで仕方ない)。

(出会いは様々な感情を呼び起こす)。


こうして槇原探偵事務所に新しい力が加わった。






                調査報告

瞬という頼りになりそうなヤツが助手になって、ひとまず安心といったところか。


だが、瞬のヤツ、嘘をついている。俺は瞬の顔に見覚えがある。

大学でみかけたわけではない。

事務所の入っているこのビルの前でだ。

やつは茶店までで尾行はやめたといっていたが、俺はヤツがこのビルの前を通り過ぎて行く姿を目撃」している。

しかも、俺の名前を知っていた。

事務所には所長のネームプレートが机に置かれていたが、名刺すら渡してもいない、

所長に呼ばれたり、自分から名乗ったこともない。

瞬の奴はまだ俺たちに隠していることがあるのかもしれないが、今は忘れておこう。





                                    完

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