第15話 〜異常事態〜

第7世界につくと、破壊神は一緒に見てまわるか、別々に見てまわるかを聞いてきた。

「あーどうします?伝令のヒョウ2神で1体なのである程度近くにいた方がいいと思いますけど」

「それもそうですね。それでは一緒に見て参りましょうか」

俺は破壊神と一緒に天界の方から異常がないか確認することにした。

死者の世界は出来たばかりであったが、死者はすでに多くいた。一旦どこか仮の場所にでもいたのだろうか。冥界神天界神はいないが、滞りなく動いているようだ。

ただ、意外にも天界は怠けたものは少なく皆勉学に励んでいた。

「いやぁ死してなお勉学に励まなきゃいけないなんて大変っすね」

「そうかい。少しでもいい人生を送りたいと思うのが普通ではなかろうか。ここでは人間以外の生物も一様に次を選ぶことができるのだから、行きたい世界があればそれを掴み取るチャンスがあるのであれば努力すると言うのは何もおかしなことではないと思いますけどね」

「ん?破壊神は破壊神以外になりたかったのか?」

少し羨ましそうに眺めていた気がしたのでつい質問してしまった。

「ふふ。いやそうではないんです」

破壊神は遠くを見ているようだった。前世の記憶でもあるのだろうか。

「さてこんなところで感傷に浸っている場合ではないですね。調査を進めましょう」

俺らは天界をぐるっと見て回ったが特に異変はなかった。

冥界の方を見に行くかと移動していると持っていたヒョウが鳴き始めた。

「なんだなんだ」

俺は破壊神と足を止めた。

「ヒョウが鳴いた時は緊急時の合図か?それとも誰か喋るのか」

しばらくしても特に何も反応がないのでヒョウの右耳を押して誰が鳴らしたのか聞いてみることにした。

「おい。誰だヒョウを鳴らしたのは」

「僕たちではありません」第1世界を調査している全能神が答えた。

「僕たちでもない」第3世界を調査している冥界神が答えた。

「わしらでもない」第4世界の発明神が答える。

「ちょっと待てこれで声聞こえているのか」「たぶん」第5世界の軍神と模倣神の会話が聞こえてきた。

「聞こえてるぞ」

返答する。

「えーっとあとは第2世界と第6世界のメンバーか。聞こえてたら返事してくれ」

少し間があいたが、「ごめん。私達は何もない」と第6世界に行っている芸術神から声が聞こえてきた。

「命与神。愛の神大丈夫か」

ザァザァザァ……ザザザ……とノイズ音が聞こえてきた。

「おいこれまずくないか」

「どうしましょう。全員で行きますか」

「いや全員で行くのは危険じゃないか」

「俺と軍神で見てきます」

模倣神が続けた。

「俺らのところ妖精にも手伝ってもらって異常ないこと確認し終えているので行ってきます」

「くれぐれもお気をつけくださいね」

「それでは行ってきます」

そこで模倣神達との通信が一旦切れた。

「それでは他の方々も気をつけて、調査が終わったら第8世界に集合していてください。神のご加護を」

他の神々とも通信を切り俺たちも急いで冥界を確認することにした。

冥界は3層に分かれているので、順々に見て回った。

冥界の第2層に行った瞬間に顔の横を砲丸が掠めて行った時は死ぬかと思った。死者に俺たちの存在見えてるんじゃないのか。

それ以外は特段変わったことはなかった。

「そいじゃ戻りますかー」

破壊神と第8世界へと戻る。


「まぁまだ戻ってきてないよねー」

「そうでございますね。すいません。一服してもよろしいでしょうか」

「ん?」

先程までステッキを握っていたのに、キセルに代わっていた。

「あぁ別にいいぞ」

破壊神は慣れた手つきでキセルを吸い始めた。

「何もないといいですねー」

「えぇ。神というのもなかなかに忙しいですね」

「破壊神は僕たちと合流する前はどういうふうに過ごされていたんですか」

「そうですね。私は実は顕現したのが遅くて彼らのことすらよく知らないのです」

「そっかぁーそりゃ大変だったな」

何も知らないのに巻き込まれていたのは可哀想だな。

「はい。でも彼らはとても楽しそうに過ごしていました。あちらが偽物の世界だとは気づかないくらいでした。ただこちらの世界へ乗り込んできて今こうして過ごせているのはとても素晴らしいことなんでしょうね」

「あんたは今楽しくないのか」

「ふふどうでしょうか。私はどうしたいのでしょうね」

どこかすっとぼけた顔で遠くを見つめている。

キセルを吸い終えると、どこからかティーセットを持ってきた。

「よろしければ」と言って椅子に座るとコーヒーを入れてくれた。

「それにしても他の皆様なかなか戻ってきませんね」

「ちょっと確認してみるか」

俺はヒョウの右耳を押した。

「第7世界の調査終わって第8世界に戻ってきてるが、他のみんなはどういう状況だ。教えてくれ」

これに最初に反応したのは第6世界に行っている豊穣神だった。

「私たちはそろそろ戻りますわ。特に……異常ありませんでした」

「僕たちも終わりました」

ヒョウからではなく、声が近くから聞こえた。

第1世界へ行っていた全能神と重力神が戻ってきた。

「あ、おかえり」

「えぇ、ただいま。それで他の世界はどうですか」

「こちら第3世界の水神です。すいません。こちらは少し異常があります。対応が終わり次第戻ります」

「手助けは必要ですか」全能神が水神に確認する。

「いえ、僕の得意分野ですので大丈夫です。ありがとうございます」

「あとは第4世界の知恵の神・発明神と第2世界に行った軍神と模倣神ですね」

ガガガガガガガガガガ……。どこからかヒョウを通して雑音が聞こえる。

「おいどっちだ?大丈夫か?」

瞬間バァァァァンと爆音が轟いた。

音が聞こえた方を見る。

「いくぞ」

言うまでもなく神達は瞬間移動していた。


世界全体が暗くなったようだった。

いや、本当に暗くなった。

第2世界モノクロ世界があったはずの場所には爆発して飛び散った惑星の欠片が散らばっていた。

「な……」

皆言葉を失っていた。

「皆さん大丈夫ですか」

第4世界へ行っていた知恵の神と発明の神がやってきた。

「あぁ……俺らは大丈夫だが……」

命与神・愛の神・軍神・模倣神の4神がどうなったのか。

この爆発と共に消滅したのか。

「全能神どうして第2世界爆発したのか分かったか」

全能神は猫ロボ何体かだし、爆発前・爆発後の映像を様々な角度から撮影したものを慎重に確認していた。

「僕も一緒に確認します」

知恵の神は爆発の瞬間の映像をアップにすると様々な角度で見始めた。

「重力神。散らばった欠片集められるか」

俺は重力神に指示を出す。

「はい」

「冥界神・水神は戻ってきたとこ悪いが、ここで全能神と知恵の神を護衛をしていてくれ」

行きたそうな顔をしている冥界神。そりゃ師匠である軍神が無事なのか気になることであろう。

しかし、敵がいつ俺らを襲ってくるのかわからない。

全能神と知恵の神は集中していると防御が弱くなるから仕方ない。

「それ以外の発明神、破壊神……それと芸術神と豊穣神も現状調査しに行くぞ」

戻ってきたばかりで状況が読み込めていない芸術神と豊穣神。

説明している暇もないので第2世界があった場所へ移動する。


木っ端微塵。

熱を持っていたはずの表面部分も爆発と同時に温度を失ったようで、欠片を触ってみたが、熱くはなかった。

「おーい誰かいるか」

俺はいなくなっている神を探しながら、何か手がかりはないかと辺りをキョロキョロと見渡す。

大きめの塊がある場所へ行く。

コンコンと叩いてみる。特になにもなさそうだ。

モノクロ世界で一生懸命描いたものも、爆発の影響で全く原形がなく複雑な思いで欠片を見つめる。

しばらくみて回ったが誰も何も手がかりを得られた様子はない。

重力神が欠片を集めてくれた。

「集めるの早いな」

「俺引力も操れるので」

「あっすまん。重力と引力勘違いしてたわ」

「いえ、俺も役に立てるの嬉しいので。それでこの欠片どうしますか」

大量の欠片。どこに置くか。

「取り敢えずこの第2世界があった場所に集めておこう」

重力神は運んできた欠片を置く。

「それじゃあ一旦全能神達のところに戻るか」

戻ろうとしたその時、集めた欠片の中に何か違うものがあることに気づいた。

近くに行ってみると、鎧の一部のようだった。

「これ……」

「それ軍神の鎧じゃない」

芸術神が答えた。

最悪の結果が頭をよぎる。

「取り敢えず合流しよう」

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