第10話 〜被害状況〜

「これで一件落着か」

俺はほっと胸を撫で下ろす。

「それじゃあ世界創造に戻るか」

ってちがーう。

俺はこいつらに拉致される前のことを思い出す。

俺の絵が下手だと侮辱してきた。沸々と怒りが戻ってきた。

全能神が近づいてきた。

「あのぉ創造神さん……」

さんづけされたことに違和感を覚える。

「待って。それは何かあるだろ」

「いえいえ滅相もございません」

胡散臭い笑みを浮かべる。

「ごめん。無神経だった」

違う方角から謝罪の声が聞こえた。そちらを見ると芸術神が立っていた。

絵が下手だと言ったことについてだろう。

近くには妖精世界にいたもいた。

ニコニコしているはずのの表情すら、落ち込んでいた。

「ごめんなさい」

くそっ。流石にこれ以上怒っているのも馬鹿らしくなってきた。

「はいはい。もういいですよ」

「本当にごめんな」

芸術神が再度詫びた。

すると横からぬぉと全能神が割り込んで来る。

「いやぁすいませんね。創造神さんには私からもう1つお伝えしなければならないことがありまして」

嫌な予感しかしない。

「彼らが襲ってきた際に世界が一部壊れてしまいまして」

テヘッ。っと不気味に笑った。

「あぁー。わかったよ。直せばいいんだろ直せば」

「やる気出してくれて助かります」

全能神が調子良く言った。

「それで1つ僕から提案なのですが、あなたしか創造物生み出せないんのですが、創造神の力を込めたペンを作って、お手伝いできればと思うのですが、どうでしょう」

「……?えっ待って俺以外も絵描けるようになるのか?」

「えぇそう言うことですね」

「それなら俺いらないんじゃないのか」

「いやいやいやそんなことはありません。あなたは無限に絵を描くことができますが、ペンを作ったところで制限もありますし。ここでもう一度芸術神や知恵の神に絵の描き方教えてもらうのもいいんじゃないでしょうか」

「今更?」

「いやぁ本当は最初からちゃんと教えてあげたかったのですが、時間がなかったもので」

相変わらず胡散臭い笑みをする。

「第3世界で芸術神自分からいなくなってた気がするけどな」

俺は芸術神をみる。

「ははは……」苦笑いの芸術神。

「時間ないのに教えてもらう時間あんのかよ」

「えぇ時間がないと言うのは、模倣神達が世界の一部を書き換えたりしていたからだったみたいなので、もう少し色んな絵の描き方を学んだりする時間を取っても大丈夫だと思います」

「はぁ〜わかったよ。それで先に修復行けばいいのか」

「そうですね。お願いします。後ほどペンは届に行くので、先に行っていてください」

そう言って修復が必要な場所の地図をもらった。

「知恵の神はまだ本調子じゃないようだから、修復は私が着いてくよ」

第3世界でいなくなった穴埋めなのか、芸術神が率先して教えてくれるらしい。

「さてどこから行くか」

貰った地図を確認する。

「えーっと第5世界妖精世界が損壊率90%で、第4世界機械の世界が30%、第3世界水の世界は2%か」

第5世界妖精世界はそもそもほとんど創ってないから、数字こそ大きいもののそこまで被害はないようだ。

「思ったほど悲惨じゃなくて良かった」

「全能神早かったから」

気づくと冥界神が後ろに立っていた。

「よっ!」

「冥界神……なんかキャラ変わったか?」

「ん?そう?そんなことないと思うけど」

軍神と一緒に行動してたから影響を受けたのだろうか。ものすごく元気な気がするが、本人が気付いてないので言っても意味なさそうだな。

「それはそうと全能神何が早かったって?」

「あっそうかお前いなかったな」

そう言って冥界神は俺が第5世界妖精世界から消えた後の全能神の素早い対応について芸術神が教えてくれた。

「あいつ色々隠し持ってたんだな……」

芸術神と冥界神はコクリと頷いた。

「それはそうと冥界神に聞いておきたかったことがあるんだ」

第7世界である冥界についてだ。

「冥界についてなんだけどどういう世界にしたいか決まったか。前はなんでもいいって言ってたけど実際1番長くいるのお前だろ?」

芸術神も気になっていたのだろう。2人で冥界神を見つめる。

冥界神は少し困った顔をした。

「……いい……」

聞き取れず聞き返す。

「ん?なんだって?」

「いいよ。なんでも……」

この神はあまり表情に出ないので本心がどうかがわからない。冥界とい死者の世界。冥界神の仕事の場所ではあるが、あまりいいイメージではないのかもしれない。

「俺は、お前が少しでも楽しく思える方がありがたい」

「ありがとうでも大丈夫。そもそも僕1人じゃないし」

「んっ?どういうことだ?」

初めて聞く情報に、俺と芸術神は目も丸くした。冥界神は真っ直ぐにこちらに視線を向ける。

「冥界をさすがに僕1人じゃ見きれないよ」

まぁそれもそうか。芸術神も確かにという顔をしている。

「まだいないけど。冥界には力が弱い見習いの神が3神増える予定」

「おっそうなのか?」

「うん。それじゃ」

頷くと冥界神は軍神と全能神のいる場所へ混ざりに行った。

「なぁ芸術神。お前は今の本心だと思うか?ってかお前ならどうするよ」

芸術神はどうかなと小さく言った。

「まぁでも私なら自分が美しいと思うもので埋め尽くすかもね。冥界神っていまいち何考えてるかわからないけどさ、案外平気かもよ。そもそもずっと冥界にいなくても上手く世界は回るかもしれないしね」

「まぁ他の神の知恵とか借りればそれも可能そうだな」

そう言って俺と芸術神は世界の修復作業に取り掛かった。


第3世界水の世界・第4世界機械の世界が終わると俺は第5世界妖精世界に戻ってきた。

芸術神から第5世界妖精世界にあった並行世界は割れていると聞いていたが、俺がきた時には既に元に戻っていた。

これが割れたのか、触っても弾力感のある並行世界との膜に不思議な感じがした。

「さて始めるか」

またゼロからのスタート。でも芸術神と知恵の神に色々教えてもらったし、一時的に全能神からコピーの能力を制限なく使えるようにしてもらっていた。

これで花をたくさん描かなくてもどうにかなるだろう。

はやはり良く働く。

描いた絵は気づけば俺の元にはなくて、設置されている。

そのおかげで俺は集中して絵を描くことができた。

妖精の世界はとても緑豊かな場所となった。

どこの世界よりも空気が澄んでいる気がした。


また完成を察して全能神が顔を見せにきた。

「とても表情がやさしくなりましたね」

といたからだろうか。彼らはとても暖かかった。

何か嫌なことがあったらここに来たら忘れられるかもな。

はこの後妖精世界の他の生物や仲間が増えるらしく表情とは裏腹にみなそわそわしていた。

「それじゃあそろそろ俺は次の世界に行くな」

そう言ってに別れを告げると、俺は第6世界へと転移した。

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