第4話 〜第3世界〜

気がつくと皆移動していた。

「見ての通りここは水の中の世界です」

辺りを見渡す、最初から水で満たされているようだ。

しかし神なので特に気にせず動き回れるししゃべることもできる。

不思議だ。

「これ泳ごうと思ったら泳げる?」

芸術神が聞く。

「泳げますよ。まぁここで泳いでもいいですし、1つ目の世界にも海はありますからそちらで泳いでも問題ないですよ」

「僕今回も一緒にいる」

冥界神は今回も同行するようだ。

「どうぞどうぞ。僕はもう寝る時間なのですいませんがあとは自由にしてください」

全能神はそう言い残すと姿を消した。

命与神がこちらをチラッと見る。

「ごめんね。私も仕事残ってるから、もし早く終わったら戻ってくるね」

相変わらずお面で表情はわからないが、残念そうなトーンで話すので多少は興味があるようだ。

さて今回も同じメンバーか。

芸術神は海に興味あるみたいだけど、今回もスパルタ指導があるのだろうか。

恐る恐る芸術神の方を見るが、少し前までいた場所に芸術神がない。

「……芸術神なら泳ぎに行ったよ」

何かを悟ったのか、冥界神が教えてくれた。

「おぉそうかじゃあ早速世界創造始めるか」

海だから海の生物が住むんだよな?

何描けばいいんだ。砂?海底って言えば砂があるイメージだけど。

ここは地球とは違う構造だから、風船に水を入れたみたいに、水だけで埋め尽くされているだけの空間のようだ。

さて、何を描けばいいのか。

生物は俺が描くわけじゃないし、あと何が必要なんだ。

俺はしばらく手を動かさずにその場で考え込んだ。

あまり遠くまで見えすぎると強い生物しか生き残れなくなるな。

中央に渦でも描いておくか。

俺は中央部に泳いで移動してみた。

「おぉすげぇ」

神だからなのか、抵抗力は少なく思ったよりも速度が出た。

ちょっと楽しくなって、描くことを忘れてしばらく泳ぎ回った。

ぜぇはぁぜぇはぁ。

流石に疲れた。そう言えばこの海って色変わらないのか。

「おいここって色変わらないのか?」

猫ロボが答える。

「はい、変わりません」

「変えることできるのか」

「否。私はその解答を持ちません」

猫ロボではわからないようだ。

直接全能神に確認するしかないか。全能神呼ぼうと思ったところ急に知らない声が聞こえた。

「君は水の色変えたいの。それとも外から入ってくる光の色を変えたいの」

俺は声の聞こえた方を見る。しかし誰もいない。

「変えたいなら変えられるよ」

今度は逆側から声が聞こえたのでそちらを向く。しかしやはり誰もいない。

「お前声だけなのか?」

クスッと笑う声が聞こえた。

「そんなことないよ」

そういうと何もないところから大きな眼鏡をかけ、大きなローブを身に纏った小柄な神がいた。

「お前が新しい神か」

「はい。知恵の神です。初めましてですね。創造の神」

知恵の神はお辞儀をした。

「転移したら、見渡す限りの水で驚きました。今透過する実験を試していたところでした」

実験が好きなのだろうか。興奮したように話す。

「あーそうか。それで海の色変えられるのか?」

俺は確認したかったことを改めて聞く。

「はい。変えられますが、どのように変えたいのでしょうか。一部の色を染めたいのですか?それとも空のように時間によって色を変えたいのでしょうか」

「ん?時間によって変えることもできるのか?」

「はい。できますよ。海が青い理由は知っていますか?」

「あぁ水分子は青い光が吸収されにくいからだっけ?」

「はい。人間の目には反射された光が色として認識されます。そもそもここは地球ではありませんし、お好きなように変更可能ですよ。その証拠にこの水透明でしょ?」

改めて周囲を見渡すと確かに水は透き通っていた。

「知恵の神、もう1個聞いてもいいか」

「はい、なんでしょう」

知恵の神はニコニコしていた。

「ここは何層でできているんだ?」

「ふふふ、着眼点がいいですね。この中にいるとわかりませんが、実はこの世界は3層になっております」

知恵の神曰く、俺たちが今いるのが1番内側の層で水で満たされており、全体の約80%を占める。1層目と2層目の間には空気が充満しおり、2層目と3層目の間には外からくる余計な光を屈折させる層があるという。

「あれ?でも他の世界も実は何層かあるのか?」

「はい、ありますよ……。もしかしなくても全能神から何にも聞いてないんですか?」

知恵の神はギョッとした顔をした。

「あぁ世界創造しろとしか言われてないな。あとはこっちから聞いたことしかほとんど教えてくれないな。まぁあいつほとんどいないから猫ロボから知識をもらってる感じだけどな」

知恵の神は呆れたようで肩を落としていた。

「はぁ、しょうがないですね。あの神ほとんど寝てますからね」

「なぁあいつなんであんなに寝てるんだ?」

「えっそれも知らないんですか……」

表情がわかりやすい知恵の神。

「全知全能の神はそれはそれは大量の情報を処理しなければいけません。僕達と話している時でさえ情報が流れ込んでくるのです。私達は情報が処理しきれなくなったとしても、追加の情報を遮断できますが、全知全能の神はできません。とはいえ、ある程度で一旦落ち着くとは思いますが。彼は情報を処理に集中するために眠るのです。まぁ脳自体は活発に動いているので寝ていても疲れは取れません。だからほとんどの時間を睡眠に費やしているのです」

知恵の神が一気に喋った。

「眠いというよりは情報を整理するためにどこかに消えているのか。まぁ仕方ないか。話がそれちまったが、他の世界にも層があるってどういうことだ」

「あなたは第1の世界で集合世界。いわゆる地球みたいな世界を創造しました。そして第2の世界ではモノクロ世界。この第2世界がこの7つの惑星の中で太陽として光を届ける役割をします。あなたが創造したのは世界の内側ですが、外がどの程度の熱量、光量なのかは知っていますか。とはいえ生物が生きられるようにうまく調整して世界は創られているのです。8つの世界の流れる時間も異なりますが、それは神にとってはあまり関係ないことなので割愛しましょう」

「……なるほど。それで話は戻りますが、色を変える方法としては、水の水質を変える。もしくは微生物を配置。あとは今のあなたの神格なら色を染めることは容易いでしょう。ただここに人間と同じ目を持った生物が暮らすかは分かりませんが」

そう言って知恵の神は微笑んだ。

「ありがとう知恵の神。いくつか方法があるんだな」

「いえ、また何か知りたいことがあったら呼んでください。猫ロボさんははあくまでも全能神が処理した内容を反映した機械ですので、タイミングによっては答えられないですからね。それでは、僕は一足先に他の世界の性質を見てきます」

そうかと見送ろうと思ったが、最後の言葉が気に掛かった。

「もしかしなくても転移できるのか」

またまたキョトンとした表情をしたが、笑顔で「はい」と答えた。

他の世界に飛ばす事ができるのは全能神だけだと思っていたが違うようだ。

俺は知恵の神が去った後も、色を染めることについて悩んでいた。

全体を見た時に、一部だけ色が違うのは違和感を感じるよな。

そもそも3層に分かれているとはいえ、水で満たされた世界。

1つ目は空があったし、2つ目は暗かった。

中心部からでは光の影響なのか外側は見れないが、第1層の端まで行けば宇宙空間を観れるのではないかと、気になったので見に行ってみることにした。

「おぉー!」

思ったより鮮明ではなかったものの、外側を見る事ができた。

この惑星の右手に一際明るさを放つ惑星が見えた。あれが第2世界モノクロ世界の外側か。

あれ待てよ。第一世界の惑星はどこだ?

色んな方角を確認したがどうやらここから見えないようだ。あの明るい惑星のせいで見えないだけだろうか。

「猫ロボ、惑星はどのように配置されてるんだ」

猫ロボが動いた。

「惑星はある1点を中心としその同一円周上に7つの惑星がございます」

「なるほどな、太陽源第2の惑星を中心に回ってるわけじゃないんだな」

「はい。ここはオリジナルの世界線ですからね」

「ちなみに第8世界ってここから見ることはできないのか」

「そうですね。すでに説明があったように次元が異なるのでここから見ることはできません」

「次元が違うってどういう感じなんだ」

「そうですね。神の世界は他の生物から干渉されないように、距離的・時間的・空間的に全く別物です。もし、万が一見つかったとしてもそれはすでに過去の出来事ですし、それを捕まえることも、映像に収めることも何もできません。幻もしくは夢だと認識するでしょう」

「わかるようなわからないような」

「一方神はその力を持って様々な現象へ干渉できます。例えばこの世界での1秒の間に神は他の惑星をそれぞれ楽しんで戻ってくることも可能です」

そう言う猫ロボの周りの空気が一瞬揺らいだ気がした。

そして気がつけば他の神が揃っていた。

普段無表情な猫ロボが笑った気がした。

「なになに?」

全能神は急に転送されてきたにも関わらず、寝ているようだが、他の神は何が起こったのかわからないと言うような顔をしていた。

「すまん」

猫ロボからパチンと音が聞こえると転送されてきた神達は一瞬にして消えた。

「一応創造神が神の世界を創造するときは、今までと同じ状況で描けるようにしておきますが、変わったものが多いでしょうからね。頑張ってください」

「よくわからないが、神の世界はその時がきたら考えることにするわ。今は目の前の世界の続きを描いていくことにする」


俺は試行錯誤しながら、潜水艦を描いたり、海の中に建物を描いたり、海に泡を描いたり、海にはこんなものないだろうと思うものまで描いていた。

海の色についてだが、水そのものに色をつけるのではなく、外から光が入ってきた時に、反射して色が変わるようにと外側の層に薄く色をつけることにした。


「よっしゃーこの世界も終わりだ」

終わった余韻に浸っていると、どこからともなく全能神と命与神が現れた。

「創造神お疲れ様でした。今回も個性的な世界ですね」

「ここでどんな生物が暮らすのよ……知恵の神に任せようかしら」

そういえば命与神と知恵の神が生物を創っているって全能神言ってたな。

「今回も神格レベル上がってますね。次の世界からはとても楽になるかもしれません」

全能神に言われ新しいスキルを確認する。

「素材……サンプル……」

詳細を確認する。どうやら描かなくても、最初から描かれているものをそのまま世界創造に使えるらしい。

「めちゃくちゃ便利じゃねーか。むしろ最初にこのスキル習得したかった」

「さて次の世界もよろしくお願いしますね。次は機械の世界です。行ってらっしゃーい」

今回は誰もついてこないのか、全能神に次の世界に飛ばされた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る