勇者達は、悠久の時を越え、魔王に勝利する?

久遠 れんり

悠久の時、無慈悲なその始まり

始まりと終わり

「それでは、行って参ります」


 出発と凱旋が行われる、王城前の広場。

 十重二十重に周りを囲む、集まった民衆の声援に応え、今から魔王退治へ出発をする。


 俺達は王様からの命令に従い、特殊な武具を集め。力をつけるため努力をした五年。

 仲間達と協力し、大陸中で封印された遺跡やダンジョンを攻略。

 そして今、この場所に立つ。


 今まで積み上げた実績。俺達は偽りでは無い力と、自信をつけた。



 近隣の王国からも招かれた貴賓達、その注目の中、第一歩を踏み出す。

 するとそこに、へろへろと、魔力の固まりが降ってくる。


 小手調べの攻撃かもしれない。

 周囲に魔族は見えないが最大警戒。

 ヌーベスが背負っていた、身長を越える大きさのアテーナーの五角盾を素早く構え、俺達を防御する。

 俺達も、反射的に構えを取る。

 賢者ニックスがアロンの杖を構え、反対側で、プルーイがアルテミスの弓を引き絞る。

 その背後で、聖女セレヌムがケーリュケイオンの杖を構え、魔力を流す。


 そして、勇者の俺。勇者インブレムがダモクレスの剣を八相に構える。



 そして同時に、周りに振りまかれる気迫。

 民衆の足が止まるほどの力。


 そして、パシュンと情けない音を出して、その魔力の固まりはアテーナーの五角盾に触れて破裂をする。

 その時、盾は最終奥義、反射が発動をする。


 だが全部は返せなかったようで、一瞬で俺達は石化をする。


 今にも警戒し飛び出そうとする、そのタイミング。

 きっと石像としては、素晴らしいだろう。


 だが、反射をしたことで、即死こそしなかった。だが、俺達はそこから長く苦しい生涯が始まる事になった。


 当然俺達が、石化したことで、周囲は大騒ぎ、民衆は慌てふためき、王家と、貴賓達は城へと引き返す。


 城門からモンスターが突入をしてきて、目の前で民衆を襲い蹂躙を始める。


 おもちゃのように、棍棒で殴られすっ飛んでいく子どもや男達。

 女は、オーク達に集められ蹂躙される。


 腹が減れば、適当な人間を捕まえ食らう。

 そんな地獄のような光景。

 さっきまで、俺達に期待し応援をしてくれた人々。


 それが、ひたすら目の前で逃げ惑い、虫けらのように…… 殺され犯され、食われる。

 その地獄は、三日も四日も続き、やがて沈静化をする。


 魔物達が言っていた言葉から、盾が反射した超古代魔法の石化が、魔王を襲い始めたようだ。魔物達は、潮が引く様に帰って行った。


 魔物達が引いた後、住民達が静かに隠れていたところから出てくる。


 そして、悲しみだろうか? それとも悔しさだろうか? 誰かがぼそっ散った一言で俺達に攻撃が始まる。


 最初の頃は、罵りと罵詈雑言、そしてそれは、時間とともに懇願へと変わる。

「勇者様。生き返って、かたきを取って…… お願いします……」

 そんな言葉が、増えてくる。


 そしてそんな復興の中、俺達の周りは壊さないように囲まれ、広場の中心にただ立つ事になった。

 やがて、一年が過ぎ、ほとぼりが冷めた頃、ヌーベスの家族が姿を見せる。


 疲れた感じで、着ている物も随分とみすぼらしくなった気がする。


 しばらく、奥さんは涙を流しながらヌーベスを見ていたが、「ごめんなさい」そう一言だけ言って、子どもを連れ、町の外へと出て行った。

 ここからでは、ヌーベスの背中しか見えないが、さっきの情景はあまり良くない状態なんだろうと推測できる。

 だが、幾ら望んでも俺達の体は、ピクリとも動かない。


 それからも時は流れ、人々の服装や暮らしは変化を続けていく。

 やがて、弓手プルーイの息子達が、結婚相手を連れて現れ、その後子どもを見せに来た。

 俺や、賢者ニックス、聖女セレヌムは結婚をしていなかったため、弓手プルーイの様に成長を見ることはできなかったが、成長すれば、別れも知ることになる。

 彼の妻が、なくなったことも報告を受ける。やがて子どもたちも。


 幾百年が流れ、シュプレヒコールをあげる民衆と、王政の廃止が叫ばれ、王家が倒れたようだ。


 そんな時、頭の中に念話が響く。賢者ニックスからだ。

〈皆、すまない。ずっと魔法の開発はしている、魔力の干渉はできるから、皆訓練はしておいてくれ、魔力操作で訓練を頼む〉


 その後は、仲間達と励まし合いながら魔力を錬り、ひたすら時を重ね。賢者ニックスが石化魔法の解除ができるまで努力を続ける。


 そんな中、俺達が変化せずとも、周りは移り変わる。

 そんなある日。地の底に響くような音がしたと思ったら、あっという間に水にのまれた。

 その後、水は引いたが、辺りは当然廃墟となっていた。

 曇りや雨が続き。気がつけば雪が降り積もり、そのまま雪に閉じ込められる。


 一体どのくらい経っただろう。

 雪が溶け、それが終われば、木々が再び茂り始め、町の跡は完全に木々に覆われる。


 それからさらに、何万年かした頃、文明をなくした人々が住み着き始めた。

 やがて営みの中で、言葉をしゃべり、文字を書き粗末な家を作り始める。


 数万年後、彼らの中に序列が発生し指導者が現れる。

 他の集落との戦闘まで始まりだした。

 

 そこまで来て、彼らの粗末な武器で、外にいるはずのモンスターは倒せるのだろうかと心配になってくる。


 やがて外から来た者だろうか。

 魔導杖のような物を持ち、破裂音をさせながら、彼らを無慈悲に殺していく。


 彼らの後にやって来たのは、学者だろうか?

 城の跡から、財宝を見つけ持ち出していく。

 

 俺達の体にも興味が出たようだが、普通の道具では崩せず諦めてくれた。

 その間も、セレヌムが体中を触られたと念話で叫んでいた。


 やがて、賢者ニックスが耳元で、叫ぶ。

〈何だよもう〉

「馬鹿だな、見ろよ」

 そう言って彼は、俺の目の前で踊り出す。


〈おお、できたのか。俺達も解除をしてくれ〉

「ちょっと待て」

 彼は杖を構えて、呪文を唱える。


 すると、全員の体を魔力が包み、呪いが解除されていく。


「どうだ?」

「おお、動ける」

 何万年ぶりかの肌を通しての感覚。


 皆で抱き合い、その感覚を確認をする。


「参ったよ。これは、魔法かと思ったら、呪いだった。きっと、セレヌムの浄化魔法で解けたはずだ」

「何ですって」

 がっくりと彼女が膝を突く。


「まあ、落ち込んでいたって、仕方が無い」

 弓手プルーイがそう言い出す。彼もつらさを克服したようだ。


「どうするんだ?」

 つい俺は、間抜けなことを聞いてしまう。


「覚えているのだろ、彼らの願いを」

 賢者ニックスがしみじみと、思いを語る。


「それはそうだが、魔王はまだ居るのか?」

 ふと疑問を口に出す。

「分からん。魔王城へ行ってみよう」

 賢者ニックスがそう言うと、歩き始める。


 外へ出ると、いつの間にか王都は山の上になっていた。


「地形すら変わっている。こんな景色を見たことがない。それにモンスターも見当たらないぞ」

 俺達は驚く。全く覚えのない景色。


「そうだなドラゴンはともかく、小型のワイバーンくらいは居てもおかしくないのに」

 プルーイが性能の良い目で周辺を見回す。


「この肌寒さの、せいではないか?」

「そうだな、昔に比べると寒いな」

 ニックスの言葉に俺も同意をする。


 とりあえず、覚えのある、方向だけを目印にして歩いて行く。

 だが、行く手にはいつの間にか海があり、陸地が見当たらない。


「これは、どうする?」

「寒いから、使いやすいだろう」

 そう言って、賢者ニックスが軽く杖を振ると、目の前、海面に五メートル幅の氷でできた道ができあがる。


 歩いて行くと、周囲はどんどん寒くなり、周りに大きな氷が浮かび始めた。

「ここはまだ、あの雪が解けていなかったのか」

 思わずぼやいてしまう。


「そう言えば、雪に閉ざされていたときが、長くありましたね」

「ああ、周りが、なにも見えず寂しかったぜ」

 ヌーベスがため息を漏らす。奴は先頭だったので、自分の盾がお友達だったのだろう。


 わいわいと、皆で盛り上がり、途中大きな魚を捕ったりして何とか海を渡る。

 ただ、到着をしたのは、氷に覆われた大陸。


「これって、魔王城は地下というか氷の下ではないのか?」

 つい、当たり前のことを言葉に出す。


「探査をしてみる」

 探査魔法を放つ。 数万年に及ぶ修行のせいなのか、ものすごく簡単に魔法を組めるし、発動もできる。賢者ニックスは周辺をくまなく探査をする。

「氷の厚さが二千五百メートルから、四千五百メートルもある」

 そう言って嫌そうな顔をするが、その前に寒くて彼の鼻水が凍っている。


「先に、寒さ用のシールドを張ってくれ」

「ああ、分かった」

 一瞬で、シールドか展開される。


 そして、歩き始め、ようやくそれらしい物を見つけたようだ。


 氷の下に埋まっている三角の奇妙な建物。

 上から見れば四角錐。

 氷を、溶かしながらガンガンと降りていく。


 上から来たので、非常に楽に頂上から中へ入っていく。


 奥へ踏み込むが、生き物の気配はなく、又、罠もない。


 そして、最奥の広間にそいつは立っていた。


 上顎と、下顎に尖った犬歯が生え。凶暴な顔つき。

 だが、徐々に襲う石化による恐怖に歪んだ顔、とても魔王とは思えない。



 当然石だから、しゃべる事も出来ず。

 試しに賢者ニックスは、念話で話し掛けてみる。


 だが彼は、長期間一人で石となり、ここに居たのだろう。


 俺達は、仲間が見えていたし、途中から念話での励ましもあった。

 だが彼は一人。

 きっと、同じ期間ずっと一人で。


 何時壊れてしまったのかは分からないが、長期間死ぬこともできず放置され、きっと強靱であった彼の精神でも、悠久の孤独には耐えられなかったのだろう。


 俺達は、お互いに感謝し、話し合う。

 魔王の城を彼の、墓標としようとして話が決まる。


 中心に彼の体を横たえ、攻撃をしてみる。通常の武器では役に立たず。ダモクレスの剣をフルパワーで使おうかと考える。だがこれは、自身の命を奪われることもある。


「ねえ。浄化で治るなら、心臓の辺りだけでも復活させて、とどめを刺してみる?」

「いや、相手は魔王。倒せなかったときが怖い」


 俺達は再び話し合い、厳重に封じることに決めた。

 魔王にとって、最悪だろうが、これからも彼には、苦しんでいただこう。


 ドアをつくり、それで通路を塞ぐ。

 土魔法でつくったため、ぴったりと通路にはまり隙間は無い。

 さらに、強化魔法を掛け、きっちりと封印をする。


「さらば魔王よ」

 皆で見ながら、氷で最後に封じてしまう。


 その後俺達は、様子を見るため近くの大陸で、街を開き、俺と、聖女セレヌムは子をなした。


 やがて、訪れる人が増え、魔法を用いた街を開き統治する。


 今度は見ることはできないが、俺達亡き後も発展してくれることを願おう。


 

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 うーむ。うーむ。うーむ。

 まとまらねえ。

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