第20話 或る潜水艦の独航

西暦2032(令和14)年1月10日 ゾルシア共和国南部沖合


 海中を、1隻の潜水艦が進む。黒いクジラの様なフォルムをしたその艦は、艦尾のスクリューを比較的遅めに回し、半ば漂う様に進んでいく。


 海上自衛隊はガロア皇国の侵攻後、情報を集めるために潜水艦部隊を派遣。海中より敵の音紋を採集していた。このデータがあれば、自分達の魚雷はより正確に敵を狙う事が出来る様になるからである。


 たいげい型潜水艦の一番艦「たいげい」も、その任務を秘密裏にこなす1隻であり、前級のそうりゅう型よりも優れた粛音性を有している他、リチウムイオン電池による長時間潜水能力を確保。水中戦において、大型ディーゼル動力式潜水艦として最高峰の性能を持っていた。


「音紋採取完了。これで大体のデータは取れましたね」

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