第18話 落陽の1か月

西暦2032(令和14)年1月


 ゾルシア共和国本土に対する侵攻作戦は、年明けに幕を開けた。


 この時、ガロア皇国軍が用意した戦力は以下の通り。陸軍に当たる皇国大陸軍は東部方面軍を基幹に西部方面軍や北部方面軍からも抽出して編制した4個軍団に、中央軍に属する近衛師団や皇国最強と名高い機甲師団『黒竜騎兵団』と『赤獅子騎兵団』で構成。30万人の将兵による攻勢が見込まれていた。


 続けて皇国海洋軍は、戦艦8隻、装甲巡洋艦16隻、空母4隻、巡洋艦10隻、駆逐艦80隻、潜水艦16隻、補給艦20の計154隻を動員。島国たるゾルシア各所の港湾施設を、潜水艦を用いて機雷を敷設して封鎖しつつ、通商破壊戦を実施。そうして戦闘能力を低下させつつ大艦隊で水上戦力を磨り潰しながら、上陸船団が無事に本土へ攻め入れる状況を造り上げる事を望まれていた。


 そして航空軍は、東部方面航空軍団に属する第2空中師団が中心となる。本土に橋頭保を築き上げた後は戦闘機120機、中型爆撃機20機からなる第2空中師団が展開し、制空権の侵食と対地支援攻撃に専念する。さらに追加で、東部方面航空軍団隷下部隊である重爆撃機旅団も動員し、40機の重爆撃機で艦砲の届かぬ地点へ戦略爆撃を仕掛ける事となっている。


 総数50万人という人数を投じて行われる作戦は、現場の総指揮官が皇太子であるという点もあり、『御親征』の名の下に始められた。ゾルシア諸島西部の沿岸部に向けて展開した爆撃機の大編隊は、皇国最新鋭のジェット戦闘機〈アラガン〉とともに展開し、ゾルシア空軍の主力戦闘機と交戦を始める。


 これら一連の戦闘は、後に『落陽の1か月』と称される事になる攻勢の始まりに過ぎなかった。

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