第9話 「やまと」初陣

西暦2031(令和13)年8月23日 ダキア王国北東部 モルド沖合


 広域打撃防衛艦「やまと」を先頭に立て、5隻の護衛艦は単縦陣で敵艦隊に迫っていた。


「全艦、対水上戦闘用意」


 「やまと」の戦闘指揮所CICにて高柳は命じ、総員は気を引き締める。何せ目視で相手船舶を捕捉出来る程の距離にまで近づいている上に、上空には報道陣を乗せたヘリ。『絵になる戦い』を演じる必要性があった。


「レーダー、捕捉。攻撃準備完了」


「よし…SSM、発射始め」


「了解。SSM、発射サルヴォ!」


 コンソール上のスイッチが押され、直後に艦中央部のミサイル垂直発射装置VLSより26式艦対艦誘導弾が発射される。12式地対艦誘導弾をベースに、形状のステルス化を計った上で、VLSからの発射に対応させたそれらは、発射直後に翼を動かして海面と並行になる様に飛び、マッハ1の音速で敵艦隊へ突き進む。その様子は「マグヌス・カザン」からも見えていた。


「て、敵艦より何かが射出されました!」


「何…?」


 相手の行動を理解する間もなく、2発が急上昇。そして後続の2番艦「セント・イストビウス」に直撃する。爆発は複数の砲郭を吹き飛ばし、煙突も引き裂かれる。それを目の当たりにしたデイダー達は唖然となった。


「せ…「セント・イストビウス」、被弾!被害甚大!」


「な…」


 いきなり必中の攻撃が飛んできた事に、多くが唖然となる。だが思考停止に陥っている余裕はなかった。「やまと」は矢継ぎ早に26式艦対艦誘導弾を発射し、戦艦と装甲巡洋艦を優先的に攻撃していく。後続の護衛艦は巡洋艦に対してミサイルを発射し、アーレンティア艦は次々と一方的に撃破されていく。


 これに対して数隻の駆逐艦が対応に赴くが、直後に艦首に装備された砲塔が稼働。轟音とともに強力な一撃が叩き込まれる。それは新開発の28式57ミリ単装レールガンであり、被弾した駆逐艦は一撃で大破。それが毎分30発の発射速度で飛んでくるのだから、瞬く間に数隻が航行不能となる。


 斯くして、「やまと」は戦艦4隻、装甲巡洋艦4隻、駆逐艦8隻を撃破し、その強さを内外に知らしめたのである。

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