橙色の道、冷たい関係

 伽藍堂は学校から徒歩十分ほどの入り組んだ住宅街の中にある。

 過去に何回かこの住宅街で迷ったこともあったが、最近ではそれもなくなっていた。

 それほど通い詰めたというわけではないのだが、足が道を覚えたかのように自然とそちらを向く。

 そんなわけで、俺は校門を出ると右手に曲がって目的地のある住宅街を目指した。

 道は車通りの少ない田んぼ道。

 道路脇の電柱に取り付けられた街灯はオレンジ色に薄く光り、夕日に溶け込んでいた。

 住宅街の中に入ると、次第に人通りが増え、生活感が溢れてきた。

 脇道の先を覗くと小学生くらいの子供が二人、ボールを投げあって遊んでいる。

 俺と秋帆にもあんな頃があったのかな、とそんな疑問が頭をよぎり、俺は空を見上げた。

 巻積雲けんせきうんはまるで剥がれ落ちるかのように秋空いっぱいに広がり、冷え切った兄妹の仲を押し固めてしまうかのように感じられた。

 ズキリと目の奥が痛む。ここ最近睡眠不足気味だったせいだろう。

 俺は目頭をつまみ上げた。

 ―—帰ったら母さんのアイマスクを一枚貰って今日は早めに寝るようにしよう。

 秋帆には申し訳ないが、誕生日だからと言って遅くまで付き合うことはできなさそうだ。

 それに、半年間顔も見ていない兄がいきなり態度を変えて近づいては秋帆の方も困るだろう。


 そうして秋帆との思い出に浸ることを切り上げた俺は伽藍堂へと向かった。 

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