第25話 新たな仕事

「はぁ~」

俺は今日何度目かのため息をついた。

どうやらアンを好きになってしまったらしい。


仕事しなければ!

とにかく生活していくためにお金を稼がないと。

今日は冒険者ギルドにいた。

カモミールさんから家事依頼が引き続き来たのだが、他の依頼をやってみたくなったのだ。


「とは言っても…薬草採取かな。」

俺は相変わらずFランクなので仕事は選べない。

依頼書をいくつか眺めていたら、ギルド職員のリアさんから声をかけられる。

俺何かしたっけ?


「Eランクに昇格することになりました。本来ならもう少し時間がかかるのですが、特殊な薬草を取ってきたので今回は特別です。」


すっかり忘れてた。

マリー花の事だよな。

何処で採取したとかは聞かれなかったけど、まあ聞いても答えられないけどね。

あ、そうだ。


”ポーン”


俺は思い出してノートとシャーペンを取り寄せた。

こっちの世界って紙とペンって貴重らしくて無いんだよね。

募集している依頼を、ノートにまとめておくことにした。

メモって結構大事だと思うんだよね。


「それ、どうしたんだ?もしかしてアイテムボックス持ってるのか?」


俺の近くにいた冒険者に声をかけられる。

やべ、失念していた。

この世界はアイテムボックスを持ってる人はまれみたいで隠していたのだ。

今のは引き寄せ能力だけどね。


「Eランクか。少しは依頼が変わってくるのだろうか。」


引き続き依頼書を見ていく。

出来そうで簡単なのがいいな。

期待したけど内容はあまり変わったものは無かった。

掃除、薬草採取、店の手伝いなんてのもあった。

意外と討伐以外の依頼もあるんだなと思う。

ハローワーク的な?


そういえば、俺ってどんな仕事が得意なんだろう。

あまり考えたこと無かったけど。

こんなに早く働くつもりも無かったし。


「お前、運び屋が出来るんじゃないか?そのアイテムボックスで。」


先ほどの冒険者が親切に教えてくれた。

そんな仕事があるのか。

前の世界の宅配みたいなものかな?


「俺で良かったら紹介してやるよ。俺はバルザックだ。」

頭が禿げている中年の男性が声をかけてきた。


バルザックは仕事の斡旋あっせんをしてくれるらしい。

信用していいのだろうか?


「もちろん、紹介料はもらうけどな。」

ニヤリとバルザックは歯を見せた。



****



俺は初めてギルド以外の仕事に挑戦することにした。

バルザックとともにある屋敷へ向かう。

かなりのお金持ちの家らしかった。


「この町一番の商人からの依頼だ。商品が高価らしくてな。運ぶのに苦労しているらしい。」


「珍しいガラスの商品で割れ物も多い。傷つけずに運べば報酬がもらえる。」

だからアイテムボックスか。


「俺はアイテムボックス持ちを探していたんだよ。」

まあ、変な薬物とか違法なものじゃなければいいか。

俺はこの仕事を引き受けることにした。

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