第9話 薬草採取

俺はベッドで寝ていた。

ゆさゆさ体が揺さぶられている。


「ん?」


「昨日来ないんだもの、来ちゃった。」

アンさんや‥来ちゃったって‥まだ日が昇ってないよ‥。

ね、眠い…。


「今日は薬草を取りに行くからね。構ってあげられないけどごめんね。」


俺はアンの頭を撫でた。

あ、どうも子供相手にしてる感じするんだよな‥。

つい撫でてしまった。

アンはうつむいている。


「一緒に行く!教えてあげる。」


ま、まあ薬草取るだけだから、危険じゃないけど…。

俺はアンの勢いに押されてしまった。


俺たちはミカゲの森に来ていた。


「えっと、ユーリ草はと、丸っこい葉っぱかな?」


「あれ、こっちの方にあるよ。」


俺はアンに引っ張られて大きい岩の下に来た。

直径3メートルはあるだろうか、大分大きい。


「ちょっと取りずらいけど、ここにあるよ。」

確かに取りずらいな。

岩を退かせればいいんだけど、ショベルカーとかじゃないと。

人力じゃ無理そう。

何か無いかな…。


”ポーン”


あれ何か引き寄せたのかな?

金属の鉄パイプが転がっていた。

これパイプベッドの…あ、もしかして。

俺は、テコの原理で岩の下に鉄パイプを入れた。


「せーの!」


ゴゴゴ・・・・。


「動いた。」


「うわぁ。凄い!」


素早く、アンにユーリ草を採ってもらう。

そっと、岩を元の位置に戻した。

慌てて採ったから数は数えず‥ちょっと多めだけどまあいいか。


俺は鉄パイプを持ちながら歩いていた。

俺ってこんなに力あったっけ?


「随分遠くに来ちゃったね。」


「本当、早く帰らないと日が暮れちゃう。」


ザザ・・・


茂みで音がする。

「やば…何かいるかも…。」


キラリと光った。

シルバーウルフかもしれない。

大型の犬だが、狂暴だ。


ウウウ・・・

俺は鉄パイプを持って、抵抗する。

あまり動物を殴りたくないんだけど‥仕方ない。

意外にも、俺は身体能力が上がっているのか身軽だった。


「アン早く逃げて。」


襲ってくるシルバーウルフをかわす。

実は喧嘩なんてしたことない。

だが、大丈夫な気がする。


「ごめん、手加減できない。」


胴体を思いっきり殴る。


動けなくなったシルバーウルフを見て、俺も逃げ出した。



****



「そりゃ凄いな。5匹のシルバーウルフを倒すとは。」


ファーレンさんが驚いていた。

俺はよく分かっていなかったのだが。

どうやら冒険者でDランク位なのだそうだ。


俺はファーレンさんの家で、お茶を頂いていた。


「今度は剣や盾などを持っていくといいだろう。それで?薬草は全て集まったのか?」


「いえ、まだ一種類残ってます。マリー花が…。」


「‥‥。」


ファーレンが黙ってしまった。


「その依頼書見せてくれ。」


ファーレンは丹念たんねんにマリー花の依頼書を見つめていた。


「やはりな‥。この依頼はあきらめた方が良いな。」


「え?どうしてですか?」


「そうだな。はっきり言うと見つけるのが困難だからだ。多分この花はしばらく見つかっていないと思う。」


ファーレンは依頼書の端を指さした。

日付だ。

依頼をしてきた日付。


「2年はおそらく見つかっていないだろう。」




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