第4話 村の住人になる

「命の恩人に何て失礼なことを…。」

アンの父親が謝ってきた。


「勘違いしただけですし、いいですよ。」

大したことではない。


まったく早とちりなんだから…。」

ムスッと呟くアン。


「私はファーレン、この村の村長をしています。何かお礼をしたいのですが、何がいいでしょうか?」

赤髪の白髪交じりの壮年が言う。


『ぐう~』


俺の腹の虫が鳴った。

「では取り合えず食事にしましょうか。朝の分が残ってたかな?」


めっちゃ恥ずかしい。

言わなくて済んだけども。

俺はようやく食事にありつけることが出来た。


残り物を出した‥ということでまたアンが怒ってたけど‥気にしてないよ?


黒いパン

固いパンでよく噛まないと嚙み切れない。

スープに浸して食べるものとアンに教わった。


野菜スープ

味が薄くて、野菜も入ってるのか?ってくらい見当たらない。

毎日これ食べているのだろうか。

正直美味しくは無かったけど、お腹は満たされた。


「この村に住まわせてもらっていいですか?」


独りであの小屋に住むのは色々不便そうな気がした。

この村にいれば食料と水が手に入りそうだから。


「そんな事でいいなら。逆に助かります。」


村長の許可を得て、俺は隅っこの空き家を貰った。


「誰かが住んでくれると、傷まなくて済むしね。一石二鳥だよ。」


空き家は放っておくと色々と危ないらしい。

悪い奴の住処になるとか云々。

この世界も物騒ぶっそうなんだな。


俺は新しい住処に、昨日出した布団とストーブを移動できるかやってみることにした。

布団、ストーブ来い!と願ったが…。

何も起こらなかった。

元居た世界から自分の物だけ引き寄せられるって事か。


「直接取りに行かないとダメか。」


仕方ない。

歩くのは苦痛じゃないけど、知らないところだし迷ったらまずいな。

あ、そっか。

俺は地図を出した。

これ見ながら行けばいいんだ。


俺は地図を見ながら最初の小屋に着いた。


「アイテムボックス」

異空間にストーブと布団を収納した。


俺は村に戻る。

往復で結構時間かかったな。


「何処行ってたの?」


アンが心配そうな顔をしていてくる。


「荷物取りに行ってただけだけど?どうしたの?」


アンは落ち着きがない様子だ。

今にも泣きそうな顔をしている。

どうしたんだろ。


「ごめん、なんでもない。」




「…そうか、そんな事が‥。」

ファーレンにアンの様子を話した。


「幼い頃、急に母親が居なくなって‥災害に巻き込まれて亡くなったのだが‥多分それが原因だと思うが…。」


「悪いがしばらく見ててやってくれないか?」


アンはいくつくらいなんだろう。

後で聞いてみよう。

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