引き寄せ能力を得たので異世界生活を楽しもうと思います。

月城 夕実

第1話 事故?

俺は目つきが悪い。

特に怒っているわけでもないのだが、他人が見ると怒っているように見えるらしい。

加えて、ガタイも大きく怖かったのだろう。

学校では友達がいなかった。

クラスで独りぼっちだった。

鏡に向かって笑顔の練習をしてみたことがあったが、変な顔にしかならなかった。


「独り好きだからいいけどさ。」


誰もいない部屋で呟いた。

時間はもうすぐ0時だ。

寝た方がいいかな。

明日は中学最後の卒業式だ。


急にぐらっと体が傾いた。

倒れる‥‥と思った瞬間。

部屋ではない何処かの場所にいた。


「何だここ。」

白い空間…何もない。

夢かな?

もしかしてあのまま寝てしまったのでは‥いや気を失ったのかも‥。

などと考えていると…。


「申し訳ありません!事故に巻き込んでしまいました。」


女の人が現れて詫びてきた。

何言ってんの?この人。

金髪碧眼の美人さんが目の前にいる。

髪はさらさらしていて、やたらと長い。


「私はこの地区の神をしている、ラシーネと申します。今回、貴方様を時空の歪みに巻き込んでしまい申し訳ありません。」


深々とお辞儀をしてきた。

神様?

お辞儀って日本流だなぁ。

良く出来た夢だ。


「夢じゃありません!現実を見てください。荒滝あらたき 末来みらいさん!」


「神様?よくわかんないけど、死んじゃったってやつ?」

ラノベやアニメでよくある展開か?


「死んではいないのですが‥元の世界に戻すことが出来なくなってしまいました‥。なので、他の世界に転移して生活してもらう事になります‥。」

終始しゅうしうつむき加減で話す女神。


「済んだことはいいです。なので、生活に困らないように能力?とか付けてくれれば。」


「なんてお優しい方なのでしょう。では転移先の知識と多少の力を与えておきますね。」

女神は辛うじて微笑んだ。


「では幸せな人生を!」


俺はまぶしい光に包まれ、次の瞬間 草原にいた。


「あ、顔とか変えてもらえばよかった!」

この目つきで今まで苦労してたんだ‥。

忘れてたよ…。


っていうかこれ異世界転移ってやつなのでは。

今更、事の重大さに気が付く。

まあ、俺が居なくなったからといって多分悲しむ人いないだろうしな。

父と母は喧嘩ばかりしてるし、俺の事は無関心だし。

一人いなくなったところで大したことないだろ。


「逆に食いぶちが一人減ったから喜んでるかも‥。」

俺結構食べるからなぁ。


ちょっと自分で言ってて悲しくなってきた。


そういえば卒業式だったな。

もう関係ないけど。

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