第10話

 私が結人を好きになったのは、私が蹴落としてきた女達のように何か劇的なことがあって好きになったなんてことはない。


 結人と接していくうちに自然に好きになった。彼と時間を共有すればするほど私は結人の事しか見えなくなっていった。恋愛を馬鹿にしていたと言っても過言ではなかった私はいつの間にか結人に対して独占欲を強めていったのだから人というものは不思議なものだ。


 別に結束咲のように苛めから助けてもらって、それで結人の事を好きになるのも分からなくはないのだ。だが、それは熱しやすくて冷めやすい。どうせまた何か劇的なことがあればお前たちのような結人の事を知らない浅い人間は流されていくだろう。


 恋愛に接してきた時間なんて関係ない、愛さえあればなんていう人間もいるが私はその考えには賛同できない。


 接する時間が多ければ多い程、愛している人間の良いところ、悪いところも見えてくる。それすらも愛おしいなんて思うことができる且つ、それをずっと愛おしいと思い続けることができるのならそれでもいいのだろう。だが、たいていの人間はそうじゃない。結婚した後に今まで見えなかった、その者達が積み上げてきて来なかったその人の悪いところが見えてきて離婚する、又は別れる。そんな人間がどれほどいることか。


 .............まぁ、ここまで長々と語ったが、つまるところ、私がただ結人の事が大好きで、愛していて、誰にもとられたくはないということだ。私が一番結人と長い時間を積み重ねて、結人の事を一番に思っている。ただ、それだけ。


 私の結人に触れるなよ、この阿婆擦れ共と言いたいだけ。


 だから、私は徹底的に結人を私に依存させた。何もかもを奪って私だけにした。結人の主柱であった母親さえも無くして、言い寄ってくるメス豚共も全部蹴散らして私だけにした。


「結人」


 私の膝の上ですやすやと寝息を立てている結人の頭を撫でる。穏やかな顔をしている彼は、いったい何の夢を見ているのだろう。


 願わくば、私と結人だけの夢を見ていて欲しい。結人の目には私だけをずっと映していて欲しい。私以外を考えてほしくなんてない。

 

 歪んでいる、そう思い私を否定する人は世の中には沢山いるだろう。普通じゃない、頭がおかしいと蔑む者もいるだろう。それでも、私は別にいいのだ。そいつらは、私の事を理解しようとしないしない。私もそいつらのことを理解しようとしないように。端から分かり合えないのだろう。


「結人、ずっと一緒だよ」

「.............」


 勿論、眠っているため返事なんて期待していない。ただ、言いたかっただけ。


 ずっと一緒。


 だが、結人は優しすぎるが故にあれだけの事をされた今でも誰かを助けようとするだろう。でも、そんなことしなくていい。世の中結人のように優しい人間なんてほとんどいないのだから。大抵、無視して知らないふり。上っ面な行動、自己正当化。そんな人間ばかりなのだから。


 結人だけ頑張りすぎなくてもいいんだよ。


 それでも、結人が頑張るというのなら何度でも折ってあげる。砕いてグチャグチャにしてあげる。私により依存して、すべて私が結人の事を支配できるようになるまで。







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僕が皆から嫌われすぎても、彼女だけは隣にいた かにくい @kanikui

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