第31話 依頼の話
ザックス、バルト、リーシャと共にダンジョンをクリアしてから一週間が経った。
あのダンジョンをクリアした事でトラウマも少しずつ改善されてきている。
バルトがいる時はバルトや他の冒険者と共に行動し、バルトがいない時は誘いを受けたパーティーに参加してダンジョンに潜ったりモンスターを討伐したりと日々を過ごしていた。
最初の頃はやはり慣れないのでバルトと行動を共にしていたけど、だんだん慣れてきたというのもあって結構積極的に色々なパーティーにお邪魔している。
そしてソロもやる。
ソロで受ける依頼はA級のものか、B級で割りのいいものを選んでいる。
もちろん自分の身の丈にあった依頼だし、失敗することもあったりなかったり。
そして実感した。
ヒーラーはモテる。
絶対的にモテまくる。
他のパーティーに参加した時は必ずと言っていいほどに口説かれる。
口説かれるといっても付き合ってよーとかではない。
俺達の専属にならないか? というような口説きだ。
私が感じた中での話だけど、冒険者が十人いて、ヒーラーは一人しかいない、そんな現状だ。
もちろん私以外のヒーラーさんもいるが、やはり引く手数多らしく、ギルドに来たと思えばすぐにパーティーを組んでどこかへ行ってしまう。
モテモテだ。
そしてヒーラーさんは皆美人だ。
スタイルもいい。
うらやましい。
私も早くすっとんとんから抜け出したいものだ。
……切実に。
美しいボディバランスを作るためには食事が大事だと聞いたことがある。
よし、今度ヒーラーさんを見つけたら聞いてみよう。
え? 何を聞くのかって?
そりゃもちろんアレですよ。
何を食べて何をどうしたら美ボディになれるんですか。
この一択しかない。
別に男性からモテたいとか、誰かを振り向かせたいとかそういうやましい気持ちは一切ない。
女性として美しくありたい、それだけだ。
断じてやましい気持ちなんてないのだ!
本当に!
バルトが他のヒーラーさんのおっぱいをチラチラ見てるのを知っていて、対抗心を燃やしてるとかそういうんじゃないから!
ちくしょう! 思い出したらムカついてきた!
乳以外も見んかい! あ、そういや尻も見てたわ……腹立つなぁ!
ふう。ひとまず落ち着こう。
今日はダンジョンや討伐ではなく、ソロでのちょっとした調査依頼だ。
調査対象はとある富豪が残したお屋敷で、アルスト王都から馬車で二十分ほど、停留所から徒歩二十分ほどの小高い丘の上にある。
がたごとと揺れる乗合馬車の中で依頼書を確認する。
屋敷の主人である富豪はとうに他界しているのだけど、後継者がいなかったために誰も相続していない。
国としてはお屋敷の作りが立派なために取り壊すこともせず、国景観の一部になっている。
間取りは相当広いのだけど、半日あれば終わるような調査内容だった。
--この時まではそう思っていた。
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