第27話 聖職者の道は厳しいのだ
「あとは冒険者がなんか違う、と言って治療院務めになっちまうやつとかな。それこそフィリア、お前みたいな奴がさ」
「私みたいなのってどういう事よ」
「ダンジョンでトラウマ作っちまう奴とか、自分の失敗で仲間が死んじまったとか、な」
「あう……」
私以外にもそういう人、いるんだ。
なんか少しだけ安心した。
だからお肉のおかわりを頼もう。
今は食べ続けて失言をしないように気をつけねばならないのだから。
お腹周りのお肉が気になるけど、それどころでは無い。
「治療院の方が安全だし、給料もいいからねぇ」
「そうなの?」
「私はヒーラーになっても冒険者はやめないよ!」
リーシャが胸をばいん、と揺らして胸を張る。
いいなぁ、揺れるほどあったら私ももっと自信つくのかなぁ。
フォークを口に咥え、リーシャのたゆんたゆんをじっと目で追う。
「そん時は頼むぜ?」
「まっかせてよ!」
「頼もしいなぁ」
テーブルに置かれたおかわりのお肉を切り分け、少しずつ口に運びながら考える。
治療院が高くて頻繁に行けないから、冒険者達は薬草や回復薬を買って自分で何とかしようとする。
後衛はあまりダメージを喰らわないから、かかるとしても魔力薬あたり。
でも前衛の人は直接モンスターとぶつかり合うのだからその分傷も増える。
傷付いた分だけ薬草や回復薬を使う。
出費が嵩み、食料も高い。
低級の冒険者は報酬も低いものが多いので出費と収入がトントンだったりもする。
となってくるとやはり貧乏からは抜け出せない。
だからこそみんな必死に昇級を目指す。
『私、あまり昇級に興味ないので--』
過去、バルトと出会ったばかりの頃の自分の発言を思い出す。
バルトは驚いた顔をしていたが、そういった裏事情があるのだから、そりゃあ驚いて当然だ。
今思えば私はかなり能天気だった気がする。
いや、今でも能天気なのは変わらないかもしれないけど!
これでも幼い頃は『花畑のフィリア』とまで呼ばれていた女だ。
そこは自信を持っている。
私はスタート時点でA級という高報酬を約束された身だ。
当時B級だったバルトからすれば、こいつ舐めた事言ってんなって思っただろうに、バルトは否定もせず、そういう考えがあってもいいんじゃないかと言った。
いい人だ。
天性の女たらしだから、私が惚れるなんて絶対にないけどね。
いい人なのは違いないのだ。
--話が逸れた。
低級でお金もままならない状態で、パーティーにヒーラーがいたらそりゃ頼るよ。
自分の回復薬だってケチりたいさね。
私は回復薬のかわりじゃありません! てか? そんな事を言う子がいるとは思えないけど実際にそういう子はいるようだ。
私だったらずばりこう言ってやる。
「貴女は回復薬の代わりだよ」
ってね。
自分の魔力が減ろうが知ったこっちゃない。
使うのは魔力薬だけじゃないか。
前衛だって魔力は使う。
まったく、最近の若いモンはなっちゃいないね。
心構えってもんがないよ。
聖職者は修羅の道なのだ。
たぶん。
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