第5話 凄く……たくましい……

「そうなんですかって……変な人だな……本当に金は払わないでいいって言うのか?」

「はい。いりませんよ?」

「……じゃあ甘えてもいいか」

「お安い御用ですよっ! ついでにファストエイド!」


 話している隙に、バルトの怪我もちょちょいと治しておいた。


「お、おお……これがピショップの法力……しみるぜ……」

「えっ!? 染みちゃいましたか!? すみません不慣れで!」

「あっはは! ちげえちげぇ、比喩だよ比喩、比喩って使い方あってっか?」

「もう、びっくりさせないでくださいっ!」

「すまんすまん。なぁあんた。旅の途中か?」

「まぁそんな所です。王都で職探ししにいく途中で」

「そうか……なぁ、フィリアだったか。冒険者になるつもりはないか?」

「え。冒険者ですか?」

「そうだ。今冒険者はヒーラーの人材不足でな。引く手数多すぎて仕事には困んないぞ?」

「そう、なんですね……冒険者かぁ」


 自分としては全く考えていなかった選択肢に若干戸惑いを覚えながらも、どこか惹かれている私もいる。


「それに……」


 となにやら口籠るバルト。


「あんたは美人だし、話しやすいし、なんつーか聖女様みたいなオーラもあるし、人気出る、と思うぜ?」

「ふぁっ」


 ぼんっ! と顔が爆発したかと思うくらい一気に熱が込み上げた。

 ちょっと恥ずかしそうにチラ見する切れ長の瞳、照れ隠しのように頬をかく指先。

 んんああ。

 やばい恥ずかしい。


 面と向かって美人と言われてこんなに恥ずかしくて嬉しかった事があったろうか。

 いやない。

 断じてない。

 よし決めた。


 私は冒険者になろう。

 ちょろいと言うなかれ。

 きっとバルトのような人がたくさんいるんだ。

 うわーどきどきするな!


「バルトさん、私冒険者やってみようかと思います」

「お! 本当か!」

「はい! ですが」

「ですが?」

「最初は不安なので慣れるまではご一緒していただけると嬉しいです!」

「お、おう……」


 私は満面の笑みでバルトにそうお願いした。

 ここ一年近くは見せていないであろう、満面の笑みで。


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