第9話

 めあに手を引かれるまま歩いていると、いつのまにか我が家のすぐ前に着いていた。


「ちょっ、あれどういうこと!? ほんとに全部ほんとってどゆこと!?」

「お、落ち着けって。別にあらかじめ言ったとおりだったろ」

「だって……まったく信じてなかったんだもん。万が一金髪碧眼の女の子は実在したとしても、まさか向こうもけいちゃんのこと『仲良くさせてもらっているわぁん♡』とか言うとは思わないじゃん!」

「別にそんな悩ましい言い方ではなかったろ」

「わたしにはそう聞こえたの!」


 めあの焦りように、正直俺はかなり驚いていた。

 ボーイスカウトに参加したはいいが、駅で乗り込むバスを間違えて怪しい宗教団体の合宿に連れていかれかけたとき。

 学芸会本番で、めあは主役なのに台詞が飛んで、背景の木の役をしていた俺が裏声でその台詞を読み上げてなんとかごまかしたとき。

 模試で全教科名前を書き忘れて0点を取り、偏差値が-15になったとき。

 どんな状況でも、めあは割と冷静で、余裕そうな顔をしていた。


 そんな奴が今、俺に先をいかれてこのありさまである。


「……フハハ。どうだ、悔しいか? 悪いがもう俺の不幸を笑うことはできないな!」


俺は煽る。


「いや……まあ、うん。悔しいよ」


 めあは急にスンといつもの落ち着きを取り戻したようで、ここで感情的な言葉を返されることを予想して脳内にさらなる煽りワードを用意していた俺はたじろいだ。


「お、おうおう。そうだろう?」

「……でも、最終的にどうなるかはこれからの自分次第でしょ?」

「まあ、それはそうだが……」


 前の佐藤さんのときみたいに、ヘマして最悪なフラれ方をするパターンだってあるわけだし……。


「だからさ。ちょっとがんばらないとね、わたし!」


 めあはいつもの意地悪な笑顔で言った。


「……え? わたし? がんばるのは俺だと思うが……?」

「うっさい! ほら、用事あるって言ったでしょ。それ済ませなきゃ!」

「ああそういえば。用事って結局なんのことだ? まったく身に覚えがないんだけど」

「テスト勉強! もう来週だよ?」

「あ……」


 当然ながら俺は教材と筆記具のいっさいを教室に置き勉状態にしてあるので、その後はめあの家に赴き、めあの教科書を半分見せてもらいながらめあの文具で勉強会をした。

 なお、翌日には何もかも忘れていた。勉強はするだけ無駄という勉強になったのでよかった。





 ☆☆☆あとがき‪☆‪☆‪☆

 読んでくださって本当にありがとうございます。これにて第1章は終わりです。作者のリアルでも明日から中間テストなので、少し更新が途絶えます。お許しください。

 第2章からはちょっとずつ本気を見せ始める幼馴染、アルトアイゼンさんの秘密、恋愛指南書の謎などが描かれたり解明されたりしていきますので、どうぞブクマや‪☆‪☆‪☆のレビューなどを済ませてお楽しみに。

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顔だけはかわいい幼馴染が、俺がフラれるたびにとびっきりの笑顔を見せてくる 𓀤 ▧ 𓀥 @kiokio45

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