第3話 反旗③

俺がそういうとタイガ司令官は唖然とした様子でこちらを見てくる。


「あーーー、王宮で戦闘になったってのは俺の聞き間違いか?」


「いや、本当の、ことです」


「また…とんでもないことをやったな。それでイズミルに何かあてでもあるのか?」


「一応俺の実家がイズミルにあるのでそこまで行って、どうにかならないか考えてみるつもりです」


「そいつらも一緒なのか?」


タイガ司令官はそういうと顎でさっき俺のことを守ろうと動いた部隊を指す。


「えぇ、彼らもまた追われる立場になってしまいましたから」


「そうか…少し寂しくなるな。今ちょうどドックから出てイズミルに向かうはずの巡洋艦があるはずだ。それに乗って行け」


「ありがとうございます」


「達者でな」


そういうとタイガ司令官は書類作業に戻っていった。俺は敬礼をしてタイガ司令官の部屋から出るとそのまま言われた巡洋艦に向かう。


巡洋艦の名前はガーネット。現在の皇帝になってから建造され始めたガーネット級重巡洋艦の1番艦であり、数々の戦闘を戦ってきた歴戦の艦艇だ。装備としては主砲に203㎜連装砲5基、副砲に127㎜連装砲、そのほかにも対空戦闘用の機関砲が数問と魚雷が積まれている。


俺がハンディイエに近づくと中から懐かしい人物が出てきた。


「エミル最高司令官、イドラです。この艦の艦長をしております」


「久しぶりです。イドラ提督」


「覚えていたんですね」


「当たり前です。一番最初の上官を忘れるわけないですよ」


イドラ提督というのは俺が海軍に入隊した時に俺の直属の上官だった人だ。一度は提督まで上り詰めたが数年前の海戦で右足を失う大けがをして提督を辞任。今はこの艦の艦長をしているみたいだ。


「とりあえず乗ってください。すぐに出発しますよ」


そういい俺たちを引き連れてイドラ艦長は艦に入っていく。するとすぐにかかっていた橋が落とされ出港する。どうやら俺たちのことを待っていたようだ。なんだか申し訳ない気持ちになる。


もともとこの船は巡洋艦なのであまり船内は広くはないが俺たちは10人ほど。おそらくだがまだ空きはあるだろう。そもそも帝都からイズミルまで一日もかからないような気もするがどこかに寄り道する可能性もある。


「エミル様、イズミルに行ってからどうしましょう」


「ピョートル、それを考えて君はあぁいうことをしたんじゃないのかな?」


「いえ、特に何かこの先に当てがあってやったわけではありません。エミル様をただ守ろうとした、それだけです」


非常に返答に困る回答だ。ここで本当なら怒鳴りつけるぐらい叱りたいが、俺を守ろうとしたそういうことをしたといわれるとそうもしづらい。


「とりあえず、イズミルに行ったら父さんに会いに行こう。そこでこれからどうしていくのかを決める」


「了解です」

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