第2話 反旗②

皇帝もさすがに間髪入れずのストレートな拒否は想定していなかったようで、返答から少しの間固まるともう一度俺に問いかけてくる。


「すまない。良く聞こえなかったようだ。もう一度回答を聞かせてくれるか?」


「えーーと、、、、お断りさせていただきました」


「…」


俺は覚悟を決めて皇帝に対してそう伝える。本当ならこんなことはしたくなかったがここまで来たらもう戻れない。


「なぜだ!私の娘は容姿だって優れている。そして何よりこの国の王族の一員になれるのだぞ!」


皇帝は俺の回答を聞いてから少し固まると今度は顔を真っ赤にして怒鳴りだす。


「えーーと、俺には婚約者がいますし、それにあまり好きなタイプではないので」


「なっ!」


俺がためらいながらもしっかりとそういうと皇帝はプルプルと震える。


「不敬罪だ!衛兵!こいつを捕まえろ!そして殺せ!」


皇帝の命令に反応した王宮直属の部隊の兵士たちが俺を囲むように展開すると、俺に銃を向ける。


しかし衛兵たちが俺のことを取り囲むと王宮に一緒に来ていた部下たちも俺を守ろうと動き出す。結果的に俺のことを衛兵たちが取り囲み、さらにそれを部下たちが取り囲むような形になる。


「銃を下ろせ、衛兵ども」


俺の部下でありそして、海軍総司令官であるピョートルが衛兵にそう命じる。


「これは明確な反乱行為だ!そちらこそ今すぐに銃を下ろせ!」


衛兵の隊長は興奮した様子で逆にピョートルたちに銃を下すように怒鳴る。そう隊長が言った瞬間、ピョートルはピストルの引き金を引き、衛兵の隊長の頭を撃ち抜く。隊長は何が起きたのかわからないといった顔をしながら地面に崩れ落ち血の池を作り始める。


「ヒッ、」


血の池に沈んだ隊長の一番近くにいた衛兵は腰が抜けたようにその場に座り込む。周辺の衛兵たちもあっけにとられた様子で隊長を見つめ、皇帝も何かわめきながら必死に近くにある柱に隠れようとする。


「全員動くな!動いたものから撃つ」


ピョートルはそう宣言すると見せしめのように逃げようとしていた衛兵の頭を吹き飛ばす。その瞬間その場にいた全員の動きが固まった。


「ピョートル…さすがに、やりすぎじゃないかな?うん、」


「失礼しました。しかし必要なことだったと考えます」


「それはそうかもしれないけど…とりあえず帰るよ」」


「了解です。全員撤収だ!」


俺はピョートルたちを引き連れて王宮から出ていく。


王宮から出てから少したって皇帝派トップのグライット公爵が俺たちのことを追いかけてくる。


「お前たち、こんなことをしてただで済むと思っているのか!」


「あぁ、当たり前だろう」


間違いなく俺に問いかけているにも関わらずなぜか勝手にピョートルがそう答える。そして俺としてはただで済まないと心の中では思ってしまっている。


王宮から勢いで出てきてしまったがこれからどこに向かうのかというのが重要になる。少なくとも帝都、そして皇帝派の貴族が治めている街ではすぐに取り締まりが強化されてしまうので適さない。そうなると俺の地元であるイズミルに行くしかなくなる。幸いも俺は最高司令官なので、帝都にある海軍基地から船であそこまで運んでもらうことができるだろう。


一応あまり人が通らないような道を使いながら帝都オデッサの海軍基地を目指す。


基地内部に入ると事務員と思わしき隊員が基地司令のもとに案内する。


「エミルか。久しいな」


「タイガ司令。お久しぶりです」


「それで今日は何の要件だ?」


「私たちをイズミルまで運んでいただけませんか?」


「いいが、どうしてだ?」


「王宮でやらかしてしまったのでとりあえず、帝都から脱出して隠居しようかなと」


「何!隠居だと!王宮で何をやらかしたんだ!」


「いや、あのですね。ちょっと皇帝の要求を断ってしまったらそこで軽い戦闘になってしまって、、、」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る