第50話 勇敢な少女

戦いの後、先輩は運ばれて行った。

もちろん、病院に。

まぁ、まぁ。手加減したし...... 大丈夫だろう。もっとも、刑務所へ連行されるのがオチだろうが.....。

てか、例の魔法使いたかったなぁ.......まぁまだできるかわからんかったけども....。


お嬢様キック。一年前、まだ俺が異世界に行っておらず、魔法を覚えていなかった頃、鏡花に急にやられて殺されかけた男殺しの最強キック。

ドレスだから足が見えにくいためキックが来るのが分かりずらいというのがこのキックの特徴。そしてドレスを捲ってからの、キックだから読むのさえ難しい。

俺の場合は、ドレスはないものの、ドレスを捲るポーズをした。それでも、先輩はキックが読めなかったようだ。まぁ、意味不明だから当然っちゃ当然だろうが。それにドレスによる足が見えずらい状態が加わったら、回避できない速さではないが、読むのは基本的に無理だろう。必然的に読むのが無理となれば、反応が遅れるということになる。そしてこのキックの条件は、相手がそんなに警戒していない且つ、相手の目の前であること。反応が遅れたら回避も遅れ.....それすなわちキーンということである。男からしたら殴られた痛みや蹴られた痛みなんていうものなんかに変えられない痛みが襲うことになる。もっとも男にしか効かない攻撃だけどな。

当然だが、俺のお嬢様キックは劣化版である。先ほども言ったが、本来のお嬢様キックはドレス装着でなくてはいけない。足が隠れるからキックが見えづらいという理由もそうだが、ドレスの中で蹴るために片足を蹴る方向とは反対方向に上げているのが見えないため、俺の時よりも断然威力が上がる。俺の場合は、ドレスを着ていないために立ったまま、垂直の状態で蹴っているため、遠心力による力が加わりにくい。

.............ドレスは流石に着れん。動きにくいし。


そして俺はどうやら気を失っていたらしい。

やはり身体的な傷などが癒えたとしても、心身の疲労は取れない。

お嬢様キックをきめた後、俺は倒れたらしい。...........天を仰ぎ、手を合わせながら.....。


※あくまで"自然治癒ヒール"は傷を回復するための魔法です。(魔法の代償による傷は"自然治癒ヒール"などによって癒えません。)


ーリン視点ー

私は今、康輔のいる病室の扉前にいる。なにを話せばいいのかわからないため、なかなか入れずにいた。しかし、このままいても埒があかない。

私は思い切って扉を開けようとした。

「こうす.....」

そう言って私は声を止めた。

扉の向こう......つまり病室からすすり泣く声が聞こえたから。

「泣かないって.....決めてたのにな....くそっ......」

そう扉の先から聞こえた。

康輔の声がこんなに震えているのなんて.......初めてだった。

祐希を倒して、肩の荷が降りたのだと思う。

肩の荷が降りた結果、感情の防波堤が壊れてしまったのではないのではないのだろうか。

私はそっと、扉前ですすり声が無くなるのを待っていた。

そもそも、目の前で大切な人が亡くなって耐えられる人間なんて..........きっといないと思う。受け入れられるかは人次第だけど。



「それはそうと、介護サンクス」

リンが見舞いに来てくれた。

........泣いてるとこ見られんでよかった......。

「当然のことをしたまでよ。なぜに手を合わせたまま気を失ったのかわからないけど」

「...........」

うん。俺にもわからない。

「アーメンってさぁ....」

「誰がアーメンじゃい」

人の名前、アーメンにすんのやめろ。不吉な名前にすんな。

「康輔って、この後どうするのかしら」

「どうするって.........俺の大事な妹的存在を殺しておいて、タダで済むわけないだろ。俺はあいつが俺を守ったことを誇りに思っているんだがら、俺のせいでとか、無かったことにしたい....だなんてそウジウジしないさ。そりゃ、無かったことにしたいと思わないかって....そんなの当然思う。けど、そんなの鏡花がどう思ってるかなんてわからないし、結果鏡花を傷つけてしまうかもしれない」

「そうね」

俺は続ける。

「だけど、それとこれとは別だ。鏡花を殺したって事実は変わらない。仇討ちとか絶対鏡花は望んでないからするつもりはないけど.....でも相手が狙ってくるのなら。これ以上俺の大切な人の命を奪うというのなら。仇討ちになるかもしれないが、俺はあいつらをぶっ飛ばす」

「そう....。私も全力でサポートするわね」

「ああ。そうしてもらえると助かる」


でも俺には少し引っかかっている事があった。

最後。俺が先輩に"放魔拳マジック・パンチ"を決めようとした時、先輩は少しだけ.......本当に少しだけ、笑みを浮かべた。

なぜ?そんなのは俺にはわからない。

まさか、"放魔拳マジック・パンチ"もわざとぶつかったってのか.....?

本当にわからない。だとしたらどうしてそんなことをしたのか。

先輩たちが俺を始末しようとする理由はわかる。Bも倒して、あいつらの目的を完全に邪魔したしな、模擬戦の日に。

だが、そんな俺にわざと負ける意味は.........どう考えてもわからない。先輩たちの立場で考えてみてもわからない。

........?そういえば、Bが言ってた


——「とりあえず、君は我々の計画に利用できる可能性が高い」


そう奴は言った。

確かに俺の.....というか魔法自体便利だし、何より能力と違い、苦手な属性の魔法以外だったら普通にみんな使える。(苦手な属性の魔法も使えんこともないが)

でも。本当に利用しようと思ったのなら。


———


そうだ。俺は今まであいつらが学園にあいつらの目的達成のものがあって、それを俺が邪魔したから狙われているのと思っていた。

だから、実際に先輩からは殺気が感じられた。

......いや、俺が殺気だと勝手に思っていただけなんじゃないか?

殺気だと俺は勘違いしていただけだとしたら.........?

もしそうだとしたら、なぜ.....?なぜそんな勘違いを.....?


....Bはどうして俺を殺そうとしたんだ......?

あいつの能力は影を操る能力だろう。

あいつは俺が"ヒール"を使う前に右胸.....つまり肺を刺した。俺はその時一瞬で"ヒール"をしていたから大丈夫だったわけだが。心臓が刺された時は一瞬、焦ったが。

なんにせよ、俺の力は何もわかっていない状況で俺に致命傷を負わせたことになる。

あいつが回復関連の能力者だったら別にわかるが、そうじゃない。

油断させるため.....?それとも聞き間違い......?

それとも................ボロを出した?

でもその考えでいくのなら。

本当に俺を利用しようとしていた.........?

あいつらが言う始祖のために?でもどうやって?

そして最終的になぜ俺を殺そうとしたのかということ.....振り出しに戻ってしまう。


...............もしかして俺が死なないと思っていた.......ってことか?



———なぜ。



.........この世界に来てから引っ掛かる事が多すぎる。

でもどうしてだろうか。その引っかかり全てが、何か重大なものへと繋がっている気がする。.......異世界で感じた引っかかりとこっちで感じたひっかかりが繋がっている気がするのはなぜ........?

色々なことで頭がこんがらがってきた。深く考えず、頭の片隅にでも入れておくことにするか......。



「でもまだ疲れは取れてないんだし、まだ寝た方がいいわよ」

「そうする」

俺は頭がどんどん痛くなっていくため、そして疲労困憊だったため、再度寝ることにした。

今まで精神だけで立っていた面があるのか、一瞬で意識が深い闇へ沈み始めた。

今は疲労をとることに集中するか。

そんなことを思いながら俺は闇へとI'll be backしたのだった。

親指を最後まで掲げながら、沈んでいったのだった。




「........んぁ」

眩しい。顔に日光が当たっている。顔に向けて直射日光はやめろ....って文句言いたいほど眩しい。

起きると、時刻は12時を少し過ぎたあたりだった。

「あ、こうにぃ起きた?」

萌音と廊下で出会った。

「ああ。久々に熟睡した気がする」

「あんな事があったんだから当然だよ。なんなら熟睡しなかったらこうにぃが人間なのか疑うレベルで怖いよ」

「......普通に人間なんだが」

なんだと思われてるんだ俺は。

「朝食できてるよ.....もちろん冷めてるけど」

「だろうな」

俺は萌音と一緒に一回のリビングへ向かった。


「そういえば、萌音って剣術習ってたよな?」

「ん?それがどうかした?」

「どんななのかなぁ...と思って」

単純に好奇心.....の他に、先輩が剣を使ってきたというのも関係している。

普通に剣を降っただけで空気の斬撃が出るし......あの威力なのも恐ろしい。

剣技、剣術なんかを覚えてしまえば、俺ですら対処が危うくなってしまう。実際に危なかったし....。

「空気の斬撃を飛ばすとかいう技ってあるのか?」

「ナニソレ」

「ごめん、なんでもないわ」

まぁ、知るわけないか.......。

「少し、散歩でもしてくるわ」

「行ってらっしゃい〜」

俺は準備をして家を出た。


ー萌音視点ー

「あら?康輔はどこに行ったのかしら」

リンさんだ。自分の部屋から出てきたみたい。

「散歩にいくって言ってこうにぃは家を出て行きましたよ」

「そう......」

私は気になっている事があったため、聞いてみることにした。こうにぃがいないのも絶好のチャンス.....。

「あの..........リンさん」

「どうかしたのかしら?」

「あの..........こうにぃに対してそういう.......ことしないのは........なぜ.....?」

「そういうこと.........?...............ぁ」

リンさんは私が言った言葉の意味を理解したようで、顔を赤らめた。

「そそそそそそそれれはあああののののわわわわわ」

「リンさんが壊れた」

それから、リンさんが落ち着くまで待つことにした。

私、なにか悪いことしちゃったのかなぁ.....。


ー数十分後ー

「ご、ごめんなさい。少し、取り乱してしまったわ」

「す...少し....?」

数十分も取り乱すのは....少しとは言えないのでは.....?

そんなツッコミは置いておくとして、

「どうしてあんなに取り乱したり......?」

私は気になったことを聞く。

「えっとその......笑わないで欲しいのだけれど......」

「はい」

笑うってどういうこと?

「あの.........その.......私.....」

リンさんの声が徐々に徐々に小さくなっていく。

「そういう.......ことが.......苦手で........」

「あ〜〜〜〜〜」

うん。あれだ。リンさんは清楚なんだ。

「一応聞いておくんですけど......リンさんってサキュバス....なんですよね?」

「............ええ」

サキュバスとしてうぶなのは、少しまずいのでは.........?


※一応そういうことをしなくても生きれるようにはなってはいますが、正直リンはサキュバスの中でも異端の存在です。サキュバスなのにサキュバスらしくないので。


「こ、こほん。私も私だけど、康輔も康輔だわ。あの鉄壁の構えはなに?」

あー。確かにこうにぃって三大欲求が睡眠、食欲、だからなぁ.....。

「生まれた時からあーでしたよ。正直びっくりしてるんですけど」

「私と風呂場でばったり出会した時も、「あ、ごめん」って感じで顔赤らめもせずに.......って私って裸見られ........」

そのまま、思い出したのか顔が急激に赤くなるリンさん。ちょっと可愛い。

「まぁ、こうにぃはそういうことに無頓着だから。プラスで鈍感とかいう特性を持ち合わせてるから」

「ええ........まさかの?」

「そ!」

....っていうかあっちの世界にも『鈍感』って言葉あるんだね........。

「とんでもない組み合わせね.......」

神はとんでもないものを生み出してくれたよ全く。

「ただいまー」

「あっ、こうにぃおかえり」

「なんだ、リンもいたのか」

「そりゃ、住まわせてもらってますから」

「そりゃそうか」

.......こうにぃとリンさんって不思議だなぁ...。

すごく仲がいいから、前世でも友達....とかだったのかなぁ.....。

一緒に2年間もいたらこれだけ仲良くなりもする.......よね?


ー康輔視点ー

「そういえば、組織のことはなにかわかったかしら」

「いや。先輩から聞き出そうとしたけど、なにも聞き出せなかった。なにも話さんって感じでなにも話してくれなかったんだ」

「もしかしたら、傷が完治したら逃げ出すつもりなのかもしれないわね」

「その可能性は俺の頭にもある。つい先日、Bが逃げ出したって報告を受けたしな」

「そうなの?.........それを踏まえると、やはり逃げ出す可能性が高そうね」

「逃げ出したところで俺はもう迷わんけどな」

「そうね。今のあんたの顔からはとてつもない信念を感じるわ」

「そうなのか?」

「以前に比べたらね」

自分からだと全くわからないんだけど.........。

「次に出会った時には手加減なしで、ぶっ飛ばしてあげますよ。先輩」

絶対に理解させてやりますよ。無慈悲な魔女に喧嘩をうったってのはどういうことかをね。慈悲じゃなくて、無慈悲をくれてやる......。


「あら?」

「ん?どうした?」

机の方を見ているリン。

「これって.......」

リンはとある紙を俺に見せる。

「ああ。俺が小4の時に作ったやつか。なぜかどこかの中学校の英語入試問題に使われたんだよな」

「ニュウシモンダイ?」

「あっちでいう総魔検定」

「あー、なるほど」

総魔検定。正式名称は、総合魔法知識一般検定試験。魔法での知識によるものを競うもの。入試みたいなものだ。


俺の作った問題用紙の内容は、


(本来は英語ですが、日本語表記で表示しています)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


<リスニング問題>

メアリーとケンが会話を放送しています。放送を聞いた上で後の問いに答えなさい。

K おはようメアリー。今日は何しているんだい?

M おはようケン。今は、税金について考えていたの

K 難しいこと考えてるね...。今の消費税って何%だっけ?

M 今の消費税は10%よ。税にも色々な種類があってね

K 所得税とか、法人税とかあるんだっけ?

M そうそう。面倒だと思う人がいるかもしれないけど、税は私たちの生活で大いに役立ってくれているものだからね。

K もっと、税について調べるために放課後に先生に聞きに行こう!

M 名案ね!


問1

メアリーは何について考えていましたか?


問2

ケンが問1について2つの例を挙げました。それを書きなさい。


問3

メアリーは問1が私たちの何にどうなっていると言っていますか?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「って感じだな」

「????????」


※もちろん康輔はネイティブ英語なので、リンにはわからない。あくまで魔法名が英語やドイツ語が使われているだけであって、あっちの世界には英語という概念があるにはあるが、古代の言語として扱われている。


「まぁ.........あの頃の俺は難易度なんて考えない大馬鹿者だったからなぁ......」

とことん難しくしようと考えてたから.......。

「あ、でも全問解いたって小学生がいるって聞いたことあったな.....名前は忘れたけど」

「.......これが解けるってのは相当すごいことなのはわかるわ」

あの頃はとにかく勉強が楽しかったなぁ........。

毎日学校では勉強しかしてなくて、友人も作らずに勉強勉強ってやってたなぁ.....いい思い出だ。先生に叱られても相変わらず勉強ばっかしてて......。

「.....正直それやばいわよ?」

「いや心読んでくる方がヤベェから」

読心術を会得している方がやばいだろ。圧倒的に。

「そういえば、リンってどこにいたんだ?俺と先輩が戦ってる最中。全く姿が見えんかったから帰ったかと思ったのに、救急呼んだのリンだったし」

念の為、持たせていたスマホを使って救急を呼んだからこそ、俺と、先輩は運ばれたんだしな。

「私は空飛べるし、空中から康輔たちの戦いを見物してたわよ」

「空中ねぇ.......どおりでいないわけだ」

「邪魔しちゃいけないと思っていたから」

リンなりに男心をわかってくれようとしたらしい。

流石に手を借りることだけはしたくなかったし...........。

「ありがとな」

「私はただ見物していただけよ。感謝を言われることはなにもしてないわ」

「.....そうか」


ーとある組織ではー

「......Uまでやられたの」

「............うん」

その場には暗い雰囲気が漂っていた。

Z、YはUがやられたことを冷静に、聞いていた。

「しょうがのないことだけど......」

「どうするよ........」

「あっ、I。帰って来てたの......」

部屋の入り口付近には1人の男が立っていた。

Zがそう言ったので、Iと呼ばれている人物のようだ。

「状況は聞いてる。Uが康輔とやらに負けたんだろ?」

「ええ」

「まぁ、 Bはムショから抜け出したらしいし、じきにUも抜け出すだろう」

「ええ....」

「しばらくは様子を見ようじゃないか」

「.......そうね」

しばらく黙っていたYが口を開く。

「........賛成」

「それにしても、魔女ねぇ.......」

Iがそう言う。

「Bがそう言っていたのだけど、本人も言っているそうなのよ」

「ふーん」

Iは男の康輔が魔女と言っている理由がわからないようだ。

普通であれば、『使』と名乗るのが一般ではないのだろうか。

「.......不思議」

「本当にね」

「UとBの帰りを待つとしよう.......ってリーダーは?」

「ちょっと出かけてる。始祖様に会いに行くって」

「なるほどな」


ー康輔視点ー

あれから、4日も経ったのか......はええな時の流れは。

「あっ、そういえば忘れてた........」


ー公園ー

「というわけで」

「.......お兄ちゃんのことでしょ」

「そうだよ」

俺は近くの公園にて氷華を呼び出していた。

理由はもちろん、先輩のことについて聞くためだ。

身内なら何か知っているかもしれないと思うのは当然だろう。

しかし俺だってそんなバカじゃない。俺の今している行為というのはデリカシーがない最低なやつのすることだってのはわかっている。

しかし、それを承知の上で聞いている。

俺は...........やらなくちゃいけない。

これ以上、俺の大切な人が狙われるのだというのなら.......。

もう...........失いたくないんだ。絶対に。

そして、絶対に止める。先輩を。

「私から知っていることは一つだけ」

「......聞かせてくれ」




「———、それだけ言って家を出て行った」

「やること......?」

それは始祖のことか?いや違う......きっとそのやることのために始祖を復活させようとしているんじゃないのか?

「何か....信念に満ちた............そんな顔してた」

彼女さん........なのか?もしかして。

始祖の力は........死んだ人を生き返らせることができる....能力...またはそれに近しい、それができる能力ということか.......?

なんにせよ、先輩は何か目的があって....それも単なる破壊衝動とかそういうものではなく、明確な誰かを救いたいとか、そういう目的があってあの組織に入ったということか.......?

「そういえば」

「?」

.....そんなことをいっつも言ってた」

「.............」

もしかして組織の名前だったりすんのか.....?

そうだとしたら随分と物騒な名前だこと。

すげぇ神に恨みがある......ってことか?

まぁでも確かに、先輩はやってもいない罪を着せられたし、なにも悪くはない彼女さんもどこぞのクソでアホの害悪なAランクよってころ.......この世から追い出されてしまった。そう考えると、組織にいる奴らってもしかして全員不幸な目にあってきた奴らだったりすんのか......?

そもそも組織.......なのか?幹部しかいない組織とか存在するのか.....?

もしかしてできたばっか組織.......だったりするのだろうか?それなら辻褄は合うが。

「ありがとな氷華。おかげさまで色々とわかりそうだ」

「そう.....よかった」

クールなのか違うのか本当にはっきりして欲しいぜ全く......。


俺は氷華と別れてからも組織のことを考えていた。

「.....考えるのは本当にやめにしねぇと、俺が死ぬ」

考えすぎで死ぬとか嫌すぎる。せめて勉強をしながら死にた.......それも考えながら死ぬと言えるのでは......って今はそんなのどうでもいい。

「神殺し.......ねぇ....」

俺は神殺しという名を頭の片隅に置いておくことにした。

「まだすること残ってるしな....」

俺はとある建物に向かった。とあるニュースを報道してもらうために。



ー次の日ー

「ここって.....」

リンと俺はとある場所に来ていた。

「そうだよ。鏡花の......墓さ」

「鏡花ちゃんの.....なるほどね」

あっちの世界にも墓参りというような文化はある。

それは人族だけではなく、魔族にもある。

「どこに作ろうかなぁ.....と思ってたんだけどここがいいかなって」

「いいんじゃないの?」

ここは..........鏡花の屋敷の庭だ。

「出会った公園でもいいかなと思ったんだけどな、やっぱり一緒に遊んでた時間が長いのは、ここだからここにしようかなって」

「そうなのね」


※もしかしたら、康輔と鏡花の日常的なスピンオフを出すかもしれないです。


「相変わらず、広い庭だよなぁ.......」

国枝さんは、誰もいなくなった子の水月邸で今もなお、いるのだとか。

いつ帰ってきてもいいように、綺麗にしておきたいんだそう。

窓から国枝さんが掃除しているのがわかる。

「康輔の家ぐらいの大きさあるわよねこれ」

「うっさいぞ。余計なことを抜かすな」

「ごめんなさいね。事実を言って.....」

う、うぜぇ......。

でもリンも俺のことを気遣ってくれてるんだよな。

鏡花の墓だから俺が重く感じないように少しでも和ませようとしてくれてるんだろうな。

「まずは、水をかけるか.....」

俺は持ってきた水を墓にかける。

濡れた墓石が日光を反射する。

「まぶしっ......」

俺はその場に座る。そしてを添える。

「いや〜2年かぁ......早かったよなぁ......意外とお前って度胸あってお嬢様らしくなかったんだよな.....」

俺は墓石に喋りかける。

「意気揚々と出かけるわ!って言った瞬間、雨が降ったのは最高におもろかったんだよな....」

リンは黙って俺の1人語りを聞いている。

それからも俺は思い出を語った。


ー数分後ー

「まぁ、思い出話はこれくらいにして。鏡花。俺は仇討ちはするつもりない。それは鏡花がきっと望んでないことだから」

鏡花が望んでいないのに俺がするのはお門違いってもんだ。

「でも......。奴らは俺をきっと狙ってくるだろう。そしてきっと鏡花のように俺の大切な人を狙ってくるだろう。そんな中で、俺はただ見ているだけだなんてできない。俺は主人公じゃないが.....」

この世界は小説みたいに......ご都合展開があるわけじゃない。けど......

「俺に力があるのなら.......戦えるのなら..........調子に乗ってもいいよな?」

逃げずに.......調子乗って戦ってみても.....いいよな。

「俺、もうそろそろ行くわ」

俺はその場を立つ。その瞬間、とある言葉が頭に浮かんだ。



———「褒め...てくだ...さいましっ...」



俺はそっと告げる。


「———お前はよく頑張ったよ。。ありがとな」


「行きましょうか」

リンが口を開いてそう言った。

「そうだな.....ってあ」

「どうしたの?」

「....いや、なんでもない」


ったく。なんだよ......。


「あ、そういえば」

俺は振り返らずに告げる。

「お前の喜ぶニュースが近頃出るから」

それだけ言って、俺らはその場をあとにした。


死んだ後だって、幸せを掴めるってどっかのアニメで聞いたからな。そっちでも幸せにな.....。




数日後の新聞の見出しはこう書かれていた。


1


——と。




ー萌音視点ー

「こうにぃが今お風呂入ってるから聞きたいんですけど」

「急だわね」

私はリンさんと話していた。

「この前聞きたかったんですけど....こうにぃが帰って来たから聞けなくて.....」

「なにを聞きたいの?」

「こうにぃってあっちの2年間でなにがあったんですか?何か前までのこうにぃとは雰囲気が違う気がして......」

「あ〜」

「こうにぃ本人はなんか聞きたくないような感じだったので、聞けなくて........でもなにがあったのか知りたいんです」

「そうねぇ.......確かに康輔は出会った時と違う.....雰囲気に変わったわね」

「なにがあったんですか?」

「.......深夜に話すことにしましょう。この話は長くなるから。康輔が自分の部屋に入ったら私の部屋に来てちょうだい」

「わかりました」

「なーにが来てちょうだいじゃ」

振り返ると、お風呂から上がったこうにぃがそこにいた。

「えっこうにぃ!?」

「康輔......この話はしてもいいのよね?」

「.........もういいか。俺から話すわ」

「康輔がわからない部分は私が話すわね」


一体、こうにぃはどんなことをしてきて、なにを感じてきたのだろう。

そんなことを思いながら、私は2人の話を聞いた。


それは......



———1にした...壮絶な話だった。




第1章 鏡花水月の命  完



第2章 無慈悲な魔女の誕生 へ続く.....

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