第47話 兄妹

「Uとやらのとこへ行くのよね?」

家を出て少しした時、後ろから声をかけられた。

「なんだよ。つけてきてたのかよリン」

リンである。こいつって鋭いのがめんどくさいんだよなぁ......。

「で?行くんでしょう?」

「そりゃな。もう引き摺らないと決めたが、これはこれ、それはそれだ。やられたままなんていられるかよ」

「そう。私もついて行くわ」

「はぁ?」

普通についてこられるの煩雑なだけなんですが。

「タコのようについて行くわ」

「....タコ?」

少し俺は困惑してしまった。

「はぁ...わかった。ただ邪魔すんなよ」

「ええ」

俺と、リンは指定された場所に向かった。


「そういえば、Uについてわかったんだよ」

俺は向かっている途中にリンと話す。

「Uについて?」

「ああ。4ヶ月前の新聞に載ってたんだよ。Uが」

「??」

「それがな———」


俺はリンに先ほど分かったことを話す。


「えっ?それって.....」

「ああ。不思議でならないんだが...」

「そうなのよね」

「まぁ、本人に聞けばわかるだろ」

「....って着いたわね」

「ああ」

そこは、何かひらけた場所だった。まぁ、魔法を打つ上でこれ以上ない場所だが。


そこで待っていると....

「..........っ!」

リンが振り返る。背後にUがいた。

「おい」

「んだよ。呼び出しておいて遅刻か?」

俺は遅れて振り返る。というのも、Uが背後にいたことぐらい気付いていた。奴の魔力はもう覚えた。

「ちげぇよ。どうせ調べてんだろ」

「もちろん。受験でもろくに準備も復習もしない馬鹿はいないだろう」

「....やっぱり勉強バカなのな」

に勉強バカなんて言われたかないな」

「そんなこと言うなよ。一度殺し合ったじゃねぇか」

Uがフッと笑ってそんなことを言ってくる。

「あれを殺し合ったと言えるのなら、相当なアホだなお前。あんなのお前の一方的な....虐殺に近いじゃねぇか」

俺はただ単に、話をしているだけではない。

相手がどう出てくるのか、様子を伺いながら喋っている。それは相手も同じだろう。その証拠に先ほどの笑いも目だけ笑っていなかった。瞬きもしていない。

「しょうがねぇだろ。お前があんなに弱いと思ってなかったんだ。......今日は万全なんだろ?」

「そりゃ当たり前だろ。前回は40%の力しか出せなかったけどな」

「やっぱりか......あれぐらいの力じゃ、Bが負けるとは思えなかったしな」


「ねぇ、康輔」

その時、リンが話しかけてきた。先ほど、邪魔をするなよ....と釘を刺したばかりであるのにも関わらずだ。まぁ、何を言いたいかはなんとなく分かっているけど....。

「どうした。どうせ、魔性の支配者ファタール・ドミネーターが効かないんだろ」

「.....ええ。その口ぶりだとなんでなのかわかっているらしいわね」

「もちろんだ。Uはどうやら誠実な男らしくてな。彼女さんが大好きなんだよこいつは」

「ああ......なるほどね」


サキュバス.......と言うのは魔性の支配者ファタール・ドミネーターを持っているため、基本男、中には女にとっても大の天敵であり、最強と言っても相応しい種族だ。

しかし、中には....と言っているように、基本女性には効かない。理由は、基本的に女性は女性に対して煩悩的なものは持たないからだ。

つまり、精神的な女と分かったならば、サキュバスは安易に近づこうとしない。

言っておくと、普通に捕まる=煩悩を持ったら、男は補給源になるだけだし、女性は眷属になるのがオチである。

なら、それ以外に対処法がないのか?

そんなわけはない。しっかり対処法がある。

その理由は単純で、煩悩を抱かなければいいのである。

無理だろって?いやいやいや。意外とあるだろう。

例えば......彼女。つまり伴侶を見つけて伴侶をたくさん愛し、他の女や男に目移りしない心にすればいいし。

他にはお坊さんのように、修行をすれば抱かないようになるだろう。あくまでも一般人よりは耐えられると言うだけで、三大欲求の一つ。性欲がなくなるわけじゃない。

これは自論だが、家族愛というものを磨き上げたりすればいいのではないかと思っている。


例に挙げたように、伴侶がいる...伴侶じゃなくてもいい。すごく好きな人でもいれば基本的には効かない。奴がいい例だ。実際あいつには彼女がいた。だから効かない。


リンも人の一緒よりも生きている。その中で、そういう対処法というのはサキュバスは知っている。だから、独身者が狙われる。


「まぁ......正直疑問だったんだ。俺の実力は殴った瞬間、分かっていたはずなんだ。それなのにお前は鏡花の屋敷まで俺を吹っ飛ばした」

「ああ。鏡花とやらを殺すつもりはなかったんだがな」

「じゃあ、なぜ殺せるはずの俺をわざわざ鏡花のところ———もっと言えば、

「....っ!」

相手の言葉が詰まった。やはり俺の考えと見つけたことは正しかったみたいだな。

「......?そんなに不自然なところはあるかしら?能力祭会場には私たちがいるのよ?駆けつけられたら面倒でしょう?」

「確かにそれもそうだが。しかし、そこには奴の仲間だっていた。俺はあのザマだし、2人で相手すれば俺らはやられていただろう」

「.........っ」

「じゃあ、どうして俺を吹っ飛ばし、会場から遠ざけたのか......単純な理由だ」


「単純?」

リンが首を傾げる。

「俺にも妹がいるからわかるよ。傷つけたくなかったんだよな氷の女王を」

張り詰めた空気の中、俺はその名を口に出す。


「なぁそうだろ?—————さんよぉ?」



ー4ヶ月前の国報新聞ー


——とのこともあり、坂井祐希少年がやったという方針で、警察は証拠を集めています。坂井祐希さかいゆうき少年は全身体強化という強化系の中で最も強い能力者であることが容疑者の一番の理由だと言われています———。

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