第16話 1000年早い
「勝てたか......」
"ライト"覚えておいて良かった......。
「で?ほんとに何が目的で活動してんだよお前ら」
地に伏せている男に問う。
しかし、帰ってきたのは驚くべき回答でもなく、子供っぽい回答でもなく、黙秘でもなかった。
「.........」
「黙秘するならなんか言え........あ」
男は気絶してしまっていた。
「.........はぁ」
俺は男を引きずるようにして交番に連れて行った。
そして男を引き渡すと、少しの事情聴取の後、帰路についた。
「.....あの野郎。爪痕残していきやがって....」
俺の横腹には抉られた傷が残っていた。
魔力がないため、"ヒール"が使えない。
やたら広いグラウンドで俺らの周りを覆い、さらに影が生まれないようにするために"ライト"を使いすぎた。さらに、今日はリンが"オブスタ"を無限に使ってきていたのもあって魔力量が戦う前から減っていた。
常時魔法の魔力消費もバカにならないし.....。
1番の原因は.....まぁしょうがないか。
「相手に分が良すぎたのが問題かもなぁ」
今の俺は丸腰と同じだ。常時魔法も切れてしまった。
ここで襲われたらやばいが.........まぁ平気だろう。
俺は歩くたびに重くなっていく足を引きずりながら家に向かう。
帰った時には日を跨いでいた。
「たでーま」
「おかえ.....こうにぃ⁉︎」
「ヘマしたわね...."ヒール"」
傷が癒えた。
「しょうがねぇだろ。めんどい敵だったんだよ。おかげさまで魔力はもう空っぽだ」
「あんたの魔力がもう空っぽ⁉︎」
「まぁうん」
「そんなにおかしいことなの?」
「そうよ。こいつの魔力量は異常なのよ。私は結構魔力がある方だけど、私の6倍とかどうなってるのよ全く」
「それは俺も思う」
「で?どういうことなの?........って原因は分かりきってるけど」
「それは敵に魔法を使いすぎたから....だよね?」
萌音はきょとんとしている。それ以外、原因が思いつかないようだ。
「違うわ。あんた........私たちに強化魔法何重にもかけたでしょ」
「.....そりゃバレてるか」
「隠蔽魔法で私を欺こうなんて100年.....いや、1000年早いのよ」
「......魔力の半分以上がそれで削れてる」
「ほんとバカね」
「こればっかりは私もこうにぃを擁護できないなぁ」
2人から呆れられてしまった。
心配だったからしょうがないだろ、と言いたかったが、さらに怒られそうなのでやめておいた。
「まぁ大事に至らなくて良かったわ」
「終わりよければすべてよし、だもんね」
「ああ。良かったわ。2人が無事で」
「とりあえず、もう遅いし寝ましょ」
「そうするわ」
俺は自室に向かうと倒れ込むようにベッドに沈み込む。
対人戦は久しぶりだったからだろうか。疲れがすごい。
「殺さないって久しぶりすぎて調整がめんどかったなぁ.....」
そう呟きながら、俺は意識を手放す。
しかし、完全に意識がなくなる直前、ある疑問が生まれた。
——なぜ、リンは100年から1000年に言い直したのだろうか。
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