第5話 実践へ
とりあえず、最初の関門である<クイック>は習得したので休める....なんて思っていたのだが、そんなものはなかった。
「とりあえず、スライムを倒してみましょうか」
「え?」
ということで俺は習得して早々、実践することになったのだった。
そうして、着いた場所は何かの森だった。
「あれよ」
そうリンが指差す方向にはプルプルとした液体状?のようなものがいた。
「あれがスライムね...」
そう俺が言うと、リンは頷いた。
「てかちょっと待て。俺ってなんの攻撃魔法も覚えてないんだが」
俺はそう言った。正直怖い。いやだってスライムとか得体の知れないモノと戦うって相当怖いだろ。
「まぁまぁ大丈夫よ。もし負けたら助けてあげるから」
「負けたらって俺死ぬんだが?負けそうなら助けてくれるんだよな?」
そう俺が問いかけると、
「まぁ、死んだらそこまでよ」
「いや軽くないか⁉︎もう少し俺のことを考えて⁉︎心配してくれ⁉︎」
ほんまになんなんだこのサキュバスは....。
「まぁ、でもやるしかないのか」
はぁ.....なんでこんなに無慈悲なんだろうか...。
俺は構えて、「"クイック"」と唱えた。
そして、スライムに向かって走り出した。
最初の頃はこのスピードになれなくて全くもって移動距離を調整できなかったけど....今ならいける!
「くらえ!」
俺はスライムを勢いのまま蹴った。スライムは10メートルぐらいまで吹っ飛び、木に激突した。しかし.....。
「は?」
なんとスライムはピンピンしていた。思いっきり蹴ったのに、ノーダメのようだ。少し離れたところで見ていたリンがくすくす笑っている。
「まさかとは思っていたけど......物理無効なのか.....」
と俺が言うと、
「まぁ、物理だけじゃ倒せない敵がいるってことを知ってほしくてね」
とリンは言った。しかしそうは言ったものの、リンはそこから動く気配はない。
「........まさか、それを知った上でスライムと戦えと⁉︎」
「物は試しっていうでしょ」
「いや異世界にもその言葉あるんかい!」
とツッコんだものの、状況は一変しない。
ここで逃げることもできるのかも知れない。しかし、ここで逃げたら世界最強への道は永遠に叶わなくなってしまう。それだけは絶対に嫌だ。
「さてどう倒す?」
とリンは俺に言ってきた。どうやら俺は倒す以外ないと、察しているようだ。その上で<どう倒すか>と聞いてきたのだろう。
俺は考えた。
俺の持っている魔法は現状"クイック"のみ。それ以外はまだ習得をしていない。つまり今の自分にできるのは物理のみ......。
そして目の前にいるのは物理完全無効のスライムのみ。
.......どう考えても詰みだろ!..........いや、リンが<どう倒すか>聞いてきたってことは俺には倒せる条件が整っているってことだ。
......考えろ......あ!
リンは物理耐性がスライムにはあると言った。しかし...魔法の耐性はないんだと思う。しかし俺には攻撃魔法を覚えていない。けど.....魔法は魔力を使うってリンが教えてくれた。
やってみる価値はあるか.....。
俺は右手に魔力を込めた。そして、魔力のこもった拳をスライムに思いっきりぶつけた。すると、スライムは弾け飛んだ。
「よくやったわね!」
リンが声をかけてきた。しかし、俺は憤っていた。
「はぁ⁉︎何がよくやっただこの悪魔‼︎今回はスライムが攻撃しなかったが、してたらどうするつもりなんだよ‼︎いくら柔らかいスライムとはいえ....」
と言ったところで、リンが「はぁ...」とため息をついているのが分かった。そして、
「なんのために"クイック"を覚えたのかしら」
「そりゃあ、相手の攻撃避ける....................すいませんでした」
「よろしい」
てか、スライムでこのザマとか.....ほんとに世界滅ぼせるのか?
「——と思ってそうね」
「人の心を読むなよ」
「それよりも言ったでしょ?アルミストの魔法は世界を滅ぼせるって」
「それは何回も聞いたんだが」
「魔法を全部覚えなきゃ世界を滅ぼすなんてのは無理よ。この前に言ったように、生き物には必ず苦手な属性がある。そして知っているだろうけど、水属性は火属性に強い。という風に属性にはじゃんけんのような性質があるの。属性というか、火や水の性質だけどね」
俺はそこまで聞いてなんとなく、リンが何を言いたいのか分かってきた。
「生き物は苦手な魔法を覚えようとしない。理由は魔力が操りづらいというかね......属性には属性特有の魔力の操り方があって、風魔法には風属性特有の魔力の操り方がある。"クイック"がいい例ね。風魔法は、体に風を溶け込ませるような感じでイメージしながら、風のように操るものが多いの。けど、風属性が苦手な属性の人だとイメージはできても風のように操ることができないのよ」
「そして、魔力が操りづらくて、威力があんまり出ないんだろ?」
「よく分かってるじゃない。そうよ。威力が出ないの。例えば、"クイック"は風魔法の一種だから、風魔法が苦手な人がもし習得したとしても、2倍では1.2倍程度しか変化しないの」
一体どうやって2倍とか1.2倍だとか測ってんだ....とかのツッコミは置いておこう。
まぁ、使ってる時と使ってない時にりんごの運べる量の比率なんかを測ったんだろう。そんなことは本当に置いておいて....。
「じゃあ、その全魔法を覚えられる俺は、相手の弱点を責められるってわけね。相手がグーならば、俺はパーを出せばいいしね」
「まぁ、そういうこと」
しょうがない....頑張るか....。
"クイック"を覚えた俺は、念願の攻撃魔法を習い始めるのだった。
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