第2話 スタートライン

「とりあえず.....」

そう言って、リンの手のひらから光が出た。

そしてそれは少し自分に向けられた後、少しずつ消えていった。

「何だ今の?」

俺は尋ねる。

「スズキの属性を見させてもらったわ」

そう言いながら、「ふぅ...」と息をリンはついた。

「属性?火とか、水とかそういうのか?」

ゲーム的なノリと同じだったら、理解しやすいんだけど....。

「まぁ、そういうのに近いわ」

それならば、気になることがある。

「俺って何属性だったんだ?」

と俺が言うと、手に光の玉みたいなものをリンは出し、

「ちょっと待ってて、今見るから」

そう言って、リンは光の玉を覗いた。

「どれどれ〜」とリンは言った矢先、「え⁉︎」と大声をあげた。

「何?どうしたんだ?」

と、俺が聞くと、

「ス、スズキ....あんた......全属性....しかも、アルミストだなんて....」

と震えながらリンは言った。俺は、

「アルミスト?なんだそれは」

リンが急に震え出したんだ。すごいことってのはわかるが、何なのかはわからない。

「アルミスト......正式名称は、アルミス・メルト。全属性、それでいて苦手な属性が何もない....。かつて、大魔女のエンリヒエ、マホム、イチゴの3大魔女がそうだった.......やばいわこれ」

そうリンは震えながら言った。しかし、何度もいじめられている俺は、何だかそれが恐ろしい、驚愕というような理由でリンが震えているように思えなかった。

しかし、今はそんなことはどうでもいい。

「そんなにやばいのか?」

と、何も考えずに言うと、

「当たり前でしょ‼︎」

とリンが怒鳴る。........やはり、俺に対して起こっているような怒鳴り方ではない気がする。まるで、何かに喜んでいる.....そして興奮しているような.....。

「聞いてるの⁉︎」

と、考え込んでいるときにリンが怒鳴る。

「ごめん。ちょっと考え事してた」

「はぁ...全く。あなたはま....っ!」

と、何かやらかしたのか、さっきまで喋っていたリンが黙った。まるで俺が気付いているかどうか確かめているかのように俺の顔を見てきた。

「ん?どうした?ま...って?」

すると、リンはビクッとした。やはり何かやらかしたようだ...。

「ま...って何言おうと思ったんだ?」

俺はリンを問い詰める。すると、

「えっと.....真面目に話を聞かないタイプの男ね...って言おうとしたのよ」

「何でそれで、言葉が詰まるんだ?」

俺はさらにリンを問い詰める。しかし返ってきたのは予想していたのよりなんてことのないものだった。

「えっと.....私男の人と話したこと全くなくて....。さっきのこと言おうとしたらあなたが男だって、気づいて...」

「そんな理由?そんなのあった時からなるんじゃないのか?」

「ワーリストなんて知識として知ってはいるけど、実際に見たことないのよ?それなのに、実際に巻き込まれた人と話しているのよ?興奮しないほうがおかしいでしょ」

確かに......自分だとしても興奮するかも....。

「じゃあ、何となくわかった。それで?アルミス・メルトはそんなにやばいのか?」

「そうよ!かつて3大魔女達は、世界を滅ぼそうとしたの。理由は......よくわかっていないらしいけど....。まぁ、とある男が彼女達を止めたんだけど....。何にせよ、私が言いたいのは、あんたは普通に世界を滅ぼせる力があるってこと!これの意味がわかる?」

なるほど....だから興奮してたのか........だけど...。

「世界を滅ぼせる?それがなんだ?」

と俺が言うと、リンは、

「え?」

と、困惑の顔をする。

「世界を滅ぼせるなら、尚更魔法を覚えないとな...」

「な、何を言っているの?」

「俺は今やっと、スタートラインに立てたんだよ」

そう。こっちの世界ではアルミストは最強なのだろう。しかし....。

「あのなリン。俺の世界には世界を滅ぼせるやつなんて腐るほどいる」

「え」

リンの表情が青ざめていく。

「それが......Aなんだよ」

「Aは......そこまで強いの...?」

「ああ、そうだよ。A、Bの差が激しいほどにAは化け物だ。事実、CからBに上がるやつなんざいくらでもいる。しかし、BからAに上がるやつは1年で1人いるかいないぐらい。じゃあ、何で世界が滅んでないかって?そりゃ、他のAたちがいるからだ。例え世界を滅ぼせる力を持っているといっても、他の世界を滅ぼせる奴らが束になってかかってきたら勝てない。だから世界は一応平和なんだ」

「.........」

「この世界の最強が俺の世界でどこまで通じるのかわからねぇ...」

「......詳しく聞かせて」

一応恐ろしいことを言ったつもりなのだが、彼女の性格なのだろうか。何でも知ろうとする好奇心は恐怖を上回ったみたいだ。


そこから一通りの説明を終えた。

「すごく驚いたけど異世界人は侮れないってことね...」

と、何だかライバル心を燃やしているみたいだ。

「それじゃ、教えてくれ!魔法を!」


ここから厳しい訓練が始まったのだった。

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