第6話チューニング

怒られた。いや、久しぶりに怒られた。

それも年下……いやまあほとんどのやつが私より下なのだが。


まぁでも少しやりすぎたかな?とは私だって思っている。

しかし今回のあれで収穫があった。


まず、この世界にはに対して反応した輩が多数いた。

そしてあれに反応できるということはすなわち私の今後の平穏な生活を脅かす存在だと言える。


ふむ、逆探知に引っ掛からないとはかなりの能力者と見える。

ならばやるべきはひとつずつ国を潰して行く感じか?


「まだ起きているのですか?」


その時扉をノックして騎士団長が入ってきた。

彼女の名はヴァイン。若いながらにしてアルメリア王国騎士団の団長になった方。

確かに彼女の剣術は優れていると私の目から見ても思う。


「私は少しやる事がございますゆえ、お気になさらず」


私のその言葉に


「かしこまりました。では……風邪をひかぬようお気をつけください」


そう言ってヴァインは立ち去る。なるほど彼女は人としてもしっかりとしているようだ。


私は亜空間から杖を取り出す。

進化エボルヴスタッフ

と言う物だ。

まずは自分をこの世界のルールに順応させる。

「成功」


次に、この世界のありとあらゆる機構システムの解析を始める。

そもそも異世界とは一体何なのか。

何故肉体が世界をとびこえて別の世界へと送ることが可能なのか、それが知りたい。


解析サーチ」……?どうやらなにかの力で弾かれているようだ。

成程、余程この世界に隠したものを見られたくないらしい。


『──────全能アカシックなる記録レコードよ──────』


『その記憶を我に手渡せ』


……果たしてどうなるか、それはある意味分かりきっていた。


『解析完了』


……なるほど、つまるところこの世界は様々な異世界の綻びの集合地点、のようである。


記録によると


『大いなる創造主が数え切れぬほどの異世界を作ったが、その異世界の元になったものが全て同じであったため結果としてエラーがあまたの世界で発生し、その修正のためにこの世界、を作り出した。いわばゴミ箱である──────』


なるほど?


『──────しかし、そのうちこの世界にもある事件が起きた。それはこの世界が。そのため大いなる創造主はこの世界を取り返すために数多くの元いた世界の強きものたちを異世界転生者としてこの世界に送り出した──────』


『──────だが、異世界転生者達もまた大いなる創造主に従う気がなかった為、大いなる創造主は自らこの世界を取り返すためにこの地に降り立った。──────しかし悲しいことに大いなる創造主は既にかなりの力を使ってしまっていた。それ故に──────』


『──────大いなる創造主はなんとか自らの肉体と力を使い元いた世界に帰った。そしてこの世界をもうひとつの世界……異世界として定義した。……いつか異世界の支配権をもう一度手にし、完全な状態に戻る為に毎年、異世界転生者たちを送り続けている──────』


『最も、それがかえってこの異世界をより強いものにしてしまっていることから目を逸らして』


……「ん?余りにも浅はかで希望的観測過ぎないか?」


そもそも自分のミスでエラーが起きて、それの解決のための世界を造ったら自我が芽生えて乗っ取られた?

──────あほらしすぎる。そもそもそれはただの逃げに過ぎない。

自ら管理できないものを、臭いものに蓋をするかのように見なかったことにした結果痛い目を見ている。

ただ、それだけだ。



それでも……と微かな希望を胸に異世界転生者を送り続けているのはもはやなにかのギャグなのか?と私は切に思う。


……つまりこの世界を平和にするには……もっと言うと私自身が平和な世界を享受するには『大いなる創造主』と『異世界の自我』のふたつを潰す必要がある……と。


私はため息をついて杖をしまう。

どうやら根本的に私は戦火の中に巻き込まれてしまう運命らしい……。


──────そんな事を考えていると朝日が登り始める。


私は天を仰ぐ。やるべきことがかなり増えてしまったことから目をそらす訳には行かなそうだ。

……コーヒーでも片手に山にでも行くとするか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る