第2話 プロローグ

 薄暗い四角錘の石造りの部屋。一面に木の根が這い、模様のようになっている。

 中央天井から直径1メートル50ほどのぼんやりと光る球体が、宙に浮いている。天井から垂れ下がった木の根は、光る球体を傷付けぬよう籠のように覆い、浮かばせているかのように見える。

 中には、全裸のとても美しい女性が自ら光を放ち、その光の羊水のなかで、まるで胎児のように膝を抱え、目を閉じ浮かんでいる。

 傍らに半透明の老婆、手を伸ばすが触れはしない。

光の球体、かすかに振動し、中の女性の閉じた目から、一筋の涙らしき光が散る。

半透明の老婆、それを見て

「おっかさま。こんな姿におなりでも、まだ悲しみは、言えぬのか。

いや、違うの、吾にも蟲がざわざわと教えやる。

また、動き出してしもうたの」

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