(3)

 ガンッ‼

 気絶しながら後ろ向きに走っていた女性が、壁に激突し……そして、壁にヒビが入った。

「ご……ごぶっ……」

 壁に激突した女性の鼻の穴と口からは血。

 だが……。

 めきっ……。

 めきっ……。

 めきっ……。

 壁に激突した女性の体が変形していく。

 壁に入ったヒビも大きくなっていく。

 まるで、見えない何かに押し潰されるように……。

 そして……。

 その女性は、壁にめりこんでいた。

 骨が何箇所も複雑骨折しているのが明らかなほど、体が変形していた。

 だが……。

 それでも……。

 生きていた。

 死んだ方が楽になるのが明らかな状態で……意識まで有るようだった。

「な……なんで……なんで……あたしが……」

 呆然としながら、その様子を見ていた人々が予想した言葉は……『なんで……あたしが……こんな目に?』だったであろう。

 しかし……その理不尽な目に遭った女性の口から出た最期の言葉は……。

「なんで……あたしが……?」

 その時になって、ようやく、国会議事堂の通路に、阿鼻叫喚の叫びが響き……。

 だが、衛視の笹塚は、この女性の死と同じ位、奇妙な事に気付いていた。

 死んだ女性が顔を向けている先にある別の壁……のだ。

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