真世界シリーズの裏話:その2

 時期も丁度いいということで。

 今回は〝ミストリアンエイジ〟の誕生の経緯をお話しいたします。


 この文書では算用数字と漢数字が混じっておりますが、意図的です。

 どうか、ご容赦願います。


 ◇ ◇ ◇


 さて、何度か近況ノートでお話しておりますとおり〝ミストリアンエイジ〟という作品は、元々はノベルゲームのシナリオとして書き下ろしていたものでした。


 シナリオの書き始めそのものは、約10年前ですね。



 ある年の12月31日のことです。当時、仲の良い友人たちと〝初日の出〟を見に行こうとしていた私は、31日の夜から友人二人と飲み会をしておりました。この二人とは高校の頃からの、親友と言ってもよい間柄です。


 彼らとは何度かコミケに出展したこともあり、私の処女作である、とある同人小説も世に出てしまっております。それは〝モンハン〟の二次創作小説でして、本当に酷いものでした。二次創作ですのでカクヨムには出せないのが残念です。とても。


 それでも褒められる点があるとすれば、この作中にて登場させた〝ヘヴィボウガン使いのニセル・マークスター〟というキャラが、ミストリアンクエストの主要人物として再利用されているといった程度ですね。ちなみに、ニセルは私の完全なオリジナルキャラクタです。名前の由来はナイスでニヒルな男ですね。



 そして、この〝飲み会〟の際にも、次回のコミケのネタについて色々と盛り上がっておりまして。基本的には二次創作になるのですが、なんとなしに〝ひぐらし〟の話題になり、「俺らもオリジナル作品で一発当ててぇな」という流れになりました。


 そこで私は、以前より温めていた〝ミストリアンクエスト〟および〝真世界シリーズ〟のネタを挙げ、それに親友二人も食いついてくれたことで、〝オリジナルのノベルゲームを製作する〟といった話になったのです。


 親友二人はイラストとプログラミングに長けており、一人はシステムエンジニアということで、それぞれが分担して作業をしようという話になりました。


 もちろん、私はシナリオ担当です。また、私も独学ながら、多少のプログラムは組めましたので「まずは私が原型を作り、それに二人がイラストを載せて見た目を整える」という流れで話が進みました。


 この日は大晦日ということもあり、一晩中顔を付き合わせていたということで、ずっとこの話題で盛り上がっておりました。


 創作の話で盛り上がることができる。

 ええ、それはもう楽しかったです。


 もしかすると、私が長年に渡って温めていたシナリオが、作品として世に出るかもしれない。そう考えるとワクワクが止まらず、早く作業に取り掛かりたくて仕方がありませんでしたね。


 ◇ ◇ ◇


 ――はい。結果はお察しです。


 年が明けて以降、私は何度も進捗を話したりもしたのですが、華麗にスルーされてしまいました。一度はノートPCを持参し、その場で現物を見せようともしたのですが、まるで相手にもされません。さらに、その時に変な衝撃を与えてしまったのか、貴重なノートPCは起動しなくなってしまう始末。



 どうやら、二人にとっては〝酒の席での冗談〟だったようなのです。


 私だけがノリノリで、一生懸命にプロットを練り、文章をプログラムに混ぜ込み、まだイラストは無いものの、一応はノベルゲームとして機能するまで仕上げたというのに。夏に出す予定ということだったので、それはもう時間を見つけてはコツコツと、半年以上必死に創り続けておりました。


 サンプルのデータを入れたディスクを渡したりもしたのですが、笑いながら「どこかにいった」と言われ、悪びれもなく紛失されてしまうという。


 本当に、この時の無念さといったら。

 正直、絶交を考えたほどです。最初から受け取るなよと。


 結局〝ミストリアンエイジ〟というノベルゲームは、世に出ることはありませんでした。もしかすると今ならば、AIイラストなどを駆使すれば、フリーゲームとして配布できるのかもしれませんが、当時はイラストを描いてくれる人は他におりませんでしたからね。頼みの綱であった二人がそっぽを向いた以上、お蔵入りにするしかありませんでした。



 この二人は〝良い奴〟であることは間違いないのですが、どうにも権威主義に染まっておりまして。私がカクヨムで創作活動をしていることは知っているのですが、それを時々笑いのネタにするばかりで、読んでくれるようなことはありません。KADOKAWAの会長が云々と取り沙汰された、あのような時ですね。


 一度こちらから真面目に話題を出した際には「1億PV達成したとかじゃないんなら興味ない」と、バッサリと切り捨てられてしまいました。


 ウェブ小説は読まずとも、なろう系やPVというワードは知っているといった認知度ですね。1億なんて数字も適当です。カクヨムでは書籍化作家さまでも、1億は厳しいというのに。


 要は〝箔〟が付いていなければ、彼らは相手にもしないのです。


 彼らが私の作品に目を通すのは、形に残る受賞をするか、書籍化・漫画化・アニメ化といった、目に見える形での成功を示すしかないんですよね。


 実は私がカクコンやコンテストにこだわっているのは、こうした理由が大きいです。遺作として作品を遺すだけならば、特に賞など必要ない。


 ただねぇ、あの野郎どもに読ませるには、何かしらの〝箔〟がねぇと意地でも読みやがらねぇんですわ。読みもせんと「拙い文章」と馬鹿にしてくる奴らなんすよ。おい、せめて読んでから言えや。まじで。これでも死ぬほど努力しとんねんぞ。


 ――ええ、仲は良いんですけどね。たぶん。

 会えばいつも、笑いが絶えませんし。



 時おり「友人から感想をもらったんですが」と仰られている書き手さまがおられますが、そうした方は本当に、そのご友人を大切になさってください。


 どれだけ仲が良かろうと、たとえ親友だろうと、誰もがみんな、自分の作品に目を通してくれるわけではありません。ましてや感想をくれるなど、本当に貴重な存在です。神さまです。丁重に崇め奉り、末永く大切に敬ってください。


 ◇ ◇ ◇


 そういった理由で長らくお蔵入りになっていた〝ミストリアンエイジ〟なのですが、第9回カクヨムコンテストを機に、ようやく世に出すことができました。


 とはいえ、プレイヤー自身が主人公となるノベルゲームと、一本道のシナリオを一方的に読み進める小説とでは全くの別物です。もしかするとできたのかもしれませんが、現在の私の力量では、多くの〝ルート〟を削るしかありませんでした。


 結果的に、それが功を奏した部分も大きいのですが――。

 それはまた、別の機会に語らせていただきます。


 皆さまはくれぐれも、ご友人を大切に。

 いつか私も、あの愛しきクソ野郎どもを見返してやりたいと思います。

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