それはまばゆい閃光のような

 それから車は少しして高速を降りると、雄大さんの言ったとおり、乗り込んでから約1時間ほど後に裏通りにある雑居ビルの地下駐車場に入った。

「お待たせ。やっと着いたよ」

「有り難う」

私は車から降りて周囲を見回した。

どこでもよく見る殺風景な景色。

コストの問題なんだろうけど、どうして駐車場って雑居ビルも高級ビルも総じてこんな風に配管むき出しの殺風景な作りなんだろう・・・

私はそんな事を考えながら雄大さんの後について歩き出した。

「僕の事務所はこのビルの3階にあるんだ。そこまで行けばひとまずは安心だ」

私は笑顔で頷いた。

やっと落ち着ける、

今後の事はまた追々考えれば良い。

雄大さんを信じよう。

だって、あんなに早く助けに来てくれたくらい有能な人なんだ。

そう。

あんなに早く。

その時。

私の脳裏に浮かんでいた違和感が閃光のように激しく、形を取って浮かんだ。

そうだ。

なんで・・・この人はあんなに早く来れたんだ?

私はあの探知機を起動させてから30分で高速に乗って、そこから5分でサービスエリアに着いた。

そしてそこにはすでに雄大さんが。

逃げるときはここまで約50分。

確かにこの人は「ここから一番近い所に」と言っていた。

そこがサービスエリアから50分かかる場所。高速だから渋滞なんか無い。

え・・・

何で?

まるで、私たちがあのサービスエリアに行くのを知ってたように・・・

その途端、全身の毛が逆立つような気がした。

雄大さんが・・・そんな。

でも、確信は無いがこのまま事務所に入ったら、もう二度と出られない。

そんな予感で一杯になった。

迷っている時間は無い。

「あの・・・雄大さん?」

私は前を歩く雄大さんにおずおずと言った。

「ん?どうしたの?」

雄大さんは相変わらずの爽やかな笑顔で言った。

その顔を見ると、私は自分の恐ろしい考えへの確信が揺らいでくるのを感じる。

でも間違いない。

この人は・・・九国さんと繋がっている。

思い返すと、雄大さんはお父さんの会社の経営コンサルタントをしている関係で屋敷には家族同様に出入りしていて、九国さんは家の事を一手に担っているメイドさん。

接点なんていくらでも持てる。

私は勇気を振り絞って自分に暗示をかけた。

私は・・・お腹が痛い!!

「あ・・・あの。私、お腹が痛くて・・・何か・・・倒れそう」

実際はお腹なんて何の問題も無い。

でも変則的だが「病は気から」だろうか。

私は脂汗が顔から滲んできていた。

その勢いに任せて、その場にうずくまる。

その時。

雄大さんの表情が一瞬。ほんの一瞬感情を無くした。

そう。まるで九国さんのように。

「お願い・・・少しでいいからお手洗いに」

「もうちょっと我慢できないかな?事務所に行けば・・・」

「もう・・・無理・・・病院に行きたい」

「それは無理だ・・・分かった。駐車場を出たところにコンビニがある。そこに行こう」

「・・・あり・・・がと」

そう言いながら、朧気な予想が確信に変わった。

なんで病院を嫌がるの?

あなたは「警察は手が回ってるかも」と言ったけどまさか、病院まで支配されてるとでも言うの?

私はバッグを強く抱きしめた。

それから、雑居ビルを出て少し歩くと言った通りコンビニが見えてきた。

「もうちょっとだよ、大丈夫?」

「うん・・・」

そう言いながら、私はバッグの中に手を伸ばした。

もう少し。

コンビニに近づき、周囲には人が多い。

そして・・・裏通りもある。

私は握っていた物を起動させた・・・防犯ブザーを。

その途端、大音量の機械音が周囲に響き渡った。

「わ!何これ!」

「うるせっ!」

周りの人たちは、一斉にこっちを見る。

雄大さんも呆然としている。

私はその途端、弾かれたように裏通りに向かって走り出した。

一体・・・どうなるんだろう。

でも、もう何も考えられない。

とにかく逃げたい。全てのことから。

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