第19話 やっつけてしまいます
エドワードが王太子、そして、王位についたのは、ソフィアとのペア魔法で人類最強となったのが大きかった。
威力のある魔法が戦況を左右するため、魔法を得意とする国王が自ら出陣することは、王国側も魔国側もよくあることで、最大戦力が国王夫妻というのは、兵士の士気高揚にもつながっていた。
今回もエドワードとソフィアは出陣していた。ただ、最前線ではなく、後方の魔法部隊内で全体の指揮をとっていた。
戦地に到着し、敵の布陣を見て、エドワードは自分の目を疑った。
「エルザ?」
魔族は何を思ったのか、丘の上の目立つところに魔法部隊を布陣させ、王国軍を見下ろすようにしている。森の中に散開している王国軍から狙ってくださいと言わんばかりだ。
丘の頂上にいる女性はエルザに間違いない。エルザの前にはシエルがいて、シエルの横にはアナスタシアがいる。シエルの前には魔族軍の指揮官二人だろうか。黒髪であるから、高位の魔法使いなのであろう。
さらに指揮官の前に四人の黒髪の指揮官がいて、その前に八人の指揮官がいて、エルザを中心に扇形の隊形を組んでいた。その扇形の隊形の後ろに魔族の魔法部隊が整列している。
「何だあれは?」
「エルザお姉様っ、復活されていたのですね……」
エドワードと同じように、ソフィアも望遠魔法でエルザを確認した。
「どういうことだ? しかも、歳を取っていないぞ」
「亡くなってはおられなかったのでしょう」
「なぜ魔国軍にいる!?」
「それは私にはわかりません。陛下、どうされますか?」
「まずは小手調べだ。第一軍に攻撃させる」
「お姉様とお話はされないのですか?」
「敵と会話してどうする。魔法と剣で話せばよい」
エドワードの命令に従って、第一軍が進軍を開始した。すると、動きを察知したのか、エルザが黄金色に輝き出した。その後、扇を構成する魔法使いたちに閃光が走り、扇の先頭の八名から魔法が放たれた。
多分魔法なのだろう。物凄い轟音と共に天から数えきれない数の稲妻が、雨のように第一軍に降りかかった。
一瞬の出来事だった。第一軍を構成する一万の兵が声も出さずにバタバタと倒れていった。
「な、何だ、あれは……!?」
エドワードは何が起きているのか理解できなかった。
エルザの魔力と魔圧は巨大すぎるため、シエルは魔力抵抗のみに専念して、さらにアナスタシアがシエルに防御魔法を施す役割を担っていた。
そのシエルから、シエルの前にいるゼクウと首席魔法使いとその前の四人、そして、さらにその前の八人の合計十四人に魔力が渡るが、魔法構文は全員で構築し、先頭の八名から魔法を放出する。
「集団魔法」が歴史上初めて発動された瞬間であった。まるで神々の魔法のようであったため、「神雷」と後世で呼ばれる魔法だった。
実はエルザはこれでも出力を抑えていた。全力を出してしまうと、全員死んでしまうため、間違っても気絶で済むレベルに抑えていたのだ。
「お姉様、凄い……」
ソフィアは感嘆していたが、ふと気づいた。これほどの力を持っているのであれば、エルザはきっと自分を救ってくれるはずだ。
そこでソフィアは、エドワードに気づかれないように、自分の位置を光の魔法でエルザに知らせた。エドワードは軍の隊形を立て直すのに必死で、こちらには気づいていない。
エルザの視線がソフィアを捉えた。
次の瞬間、再びエルザの体が金色に光り、目の前にいたエドワードに稲妻が直撃し、エドワードがゆっくりと倒れた。
ソフィアは倒れたエドワードを凝視し、目を見開いて、両手で口を塞いだ。
(し、死んでる!? あ、生きてるわ。……、殺しちゃおうかしら)
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