第37話
ファーブル国内で野球チームを募り12球団集める事が出来た。
なので、二つのリーグに分けて、元の世界のプロ野球と殆ど同じ形を取った。
ルールに関してはキシン族が完璧に理解しているので、各チームのコーチとしてキシン族達を送った。
選手達が主役なので、キシン族からの助言やコーチングなどにはある程度制限を掛けている。
そのうちの1チームの監督をレンが行う。
放送局を使って宣伝もしているし、アイドル達で応援などもしていく予定だ。
ついでに、ショーンと話してアイドルの時同様に、チケットやグッズの販売を任せた。
もう一つ、この国では賭博は法的に禁止しているけど、どうせ誰かが野球賭博を始めてしまうので、その元締めとしても働いて貰う。
一応、宝くじの様な形式を取り、合法化しているので大々的にやってもらう手筈を整えている。
レンはあまり興味ないみたいだけど、それなりに拘りがあって、チームの全員が人族であり、特別身体能力の高い選手をチームには入れていない。
どうせやるならアートが良いとか言ってたけど、基本的に僕は関与するつもりはないし、好きにやってもらおう。
球場に関してだけど、レンの能力で作る事が出来るので、空いている土地に作った。
記念すべき第一回目のリーグ戦。
アイドル達のライブでオープニングを飾り、始める。
元々宣伝もしていたし、注目度は高く、会場はかなり盛り上がっていた。
ちなみに、レンのチームはボロ負けしていた。
レンは悔しがる様子もなく、淡々とスコアを見て改善の為の練習内容などを考えていた。
そして、アサギ、アイリス、ジュラの三人は野球談議に花を咲かせてる。
特に、ジュラは自分が選手になれば勝てると言っていたりと結構熱が入っている様子だった。
それから時が経ち。
野球の話題は他国にも広まり、人気も高まっていく。
更に他の国でも草野球が流行ったり、リーグ戦に参加したいと言う他国のチームも出て来た。
そこで、参加したい国を募り、国につき1チームが来シーズンからリーグ戦に参戦出来るようにしてみた。
ここまでは予定通りだけど、問題はレンのチームが予想外に弱い事か。
今季のシーズンで優勝しないと、来シーズンは参加出来ないかもしれないし、レンが監督出来ないなんて事になると本末転倒だ……。
まあ、僕の方は利益も出てるし、アイドル活動も捗っていい事ばかりだから構わないんだけど。
それじゃあレンの実力も見せて貰おう。
野球の監督じゃなく、アイドルとしての。
ファーブルの中央にある広場でアサギのグループでステージ召喚を行う。
現れたのは巨大な……パイプオルガン?
レンが軽い自己紹介をした後、演奏が始まる。
演奏が始まった瞬間、パイプオルガンの圧倒的な個性が響き渡る。
神秘的で美しい音を奏でるパイプオルガンはファン達にとって新鮮でもあり、その壮大なスケール感は衝撃的だろう。
有名だから僕でも知っている曲だけど、最初の部分以外はこんな感じだったのか。
確かトッカータとフーガだったかな?
演奏を聞いていると、いつの間にか引き込まれている。
これをレンは一人で演奏しているのか……。
まるで音の波の暴力だ。
そう表現するくらいに力強い旋律。
それなのに、緻密で繊細なメロディー。
胸が揺さぶられる。
トキメキでも期待でも無い。
ただ、圧倒的な音楽の存在感。
それが僕の心を揺さぶっているんだ。
今、目の前に神様が降臨しても驚きはしない。
そんな風に思ってしまうくらいに神秘的で壮大な曲だった。
曲を終えると、場内はシーンと静まり返っている。
僕が拍手を送ると、他のファン達も一斉につられて手を叩き始めた。
反応する事すら忘れてしまう程に魅せられてしまったと言う事か。
引き続きパイプオルガンの曲を2つやった後、ステージにアサギとアゲハとリリィも登場する。
アサギはいつもの弦楽器では無く、エレキギターを持っている。
アゲハは召喚されたドラムを演奏する様だ。
リリィはボーカルで、レンはキーボード。
演奏が始まると、バイオリンが主旋律を奏で、アサギ、レン、アゲハはそれに音を合わせている感じだけど、クラシック調でも無く、ロックなんかのバンド色の強いメロディーでも無く、リリィがアイドルとして歌っても全く違和感のないポップでキャッチ―な雰囲気だ。
僕はただただ凄いと思いつつ、曲に合わせて手拍子を叩いていた……。
けど、所々で手拍子がずれる。
ボーカルのリリィは普通に歌ってる様に感じるけど、変拍子の曲なのか。
アサギの動きが全くなく、一点だけを見つめ、一生懸命ギターを弾いているのは、きっとエレキギターに慣れていないのもあるけど、この曲に合わせるのが難しいのだろう。
そして演奏が終わり、リリィがメンバー紹介を行うと、楽器隊の三人がこれでもかと張り合う様に、技術を駆使してバトルを行う。
場内は大いに盛り上がるけど、ほとんど楽器を触った事の無い僕にとっては凄い事をしている程度の認識だ。
プロデューサーとして力不足だと感じたし、忙しいけど今後は空いた時間にでも楽器を触って行こうと思う。
三人がバトルしたまま、最後の曲へと移行する。
それが凄く格好良くて、少し鳥肌が立った。
アサギのギターが伴奏を弾き始め、いつの間にかベースギターを持っているレンの演奏に合わせている。
そして、まさかのレンが唄い始めた。
ハイトーンでどこまでも遠く響きそうな声はか弱く聞こえるのに、しっかりと耳に残って離れない力強さがある。
レンが唄っているかと思えば、リリィが似ているけど全く違うメロディーで合わせて唄っている。
ミュージカルなんかでよくある別のメロディーを同時に歌っているあの感じを一つの曲の中でやっている。
突き詰めれば、ただハモっていると言うだけなのかもしれないけど、二人の表具現力が高いから同時に2曲を聞いている様な気分になる。
演奏も絶妙にマッチしているし、ベースのレンはずっと
それでも激しいと感じないのは、アゲハが一定のリズムで力強くドラムを演奏しているのと、アサギも徹底してリズムをキープしているからか。
曲が盛り上がる所ではアゲハも、歌に加わる。
歌っていると言うより、曲に合わせてテンポよく格好いい感じにセリフを重ねている様な感じ。
掛け合いとか語りって言われるパートなのかな?
僕はこの表現の仕方の名称をしらないからそんな風にしか表現する事は出来ないけど、ちゃんと曲にマッチしているから凄いとしか言いようがない。
盛り上がりが終わると一気に静かになり、アサギのギターとリリィの声だけが響き渡る。
それもまた幻想的で、曲のイメージも崩れる事なく、一つの曲として成り立っていた。
最後にレンが挨拶をして、ステージの幕を下ろした。
レンの圧倒的な実力を目の当たりにして、ショックを受けたけど、僕には僕のやり方がある。
そして、成すべき事を成すのだと自分を慰める様に言い聞かせた。
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