第33話

 さて、今は森に送っていた探索隊が持ち帰って来た天然資源をアサギと共に調べている。

 ここから何か特産物でも出来ればファーブルの名産物になるし、加工できるのであれば特産品として売り出せる。


 未開の森だし、何かあればいいんだけど、今の所は目玉になるようなものは見つからない。


 「これなんかはどうですか?

  結構食いでのありそうな幼虫が中に居ますよ」


 そう言ってアサギが見せて来たのは大きなまゆ

 蚕のまゆと比べるとザラザラして固いけど、丈夫な糸になれば悪くないかもしれない。


 外に出て焚き火を起こし、沢山の水を用意して、まゆが入るくらいの大きな鍋も用意した。

 鍋の中にまゆを入れて、沢山の水と一緒にお湯を沸かせる。

 沸騰寸前くらいの温度を保てる様に水をつぎ足しながらまゆをふやかしていく。


 木の枝で突っつきながら10分くらい茹でると、良い感じに糸がほぐれて来ているのが分かる。

 水をいれて冷ましてからまゆを取り出し、邪魔な糸を取り除いてから一本の糸を手に取った。


 予め作って用意した糸車で、このまゆの糸をつむいでいく。

 かなり丈夫な糸だし中にある糸は表面にあった糸と違ってツルツルしている。

 防具にも使えそうだし、染色すれば綺麗な生地にもなりそうだ。


 糸を紡ぎ終わって中の居た幼虫が残る。

 まだまゆを作ったばかりだったのか、幼虫の姿のままだ。

 ホクホクに茹で上がってるし、切り分けて食べてみよう。

 大きなお皿の上に幼虫を置き、ナイフを入れると意外な事に身はプリプリしている。

 

 白い汁がお皿から溢れ出す程出て来たけど、外なので気にしない。

 匂いはトウモロコシみたいな香ばしい感じ。

 汁をすすると、豆乳で作ったコーンポタージュの様な味わいで苦みなどは無い。

 次にプリプリの身を食べてみる。

 食感は茹でた海老みたいで、味も香りもナッツに近いかな?

 幼虫がいるなら刺身でもいけるかもしれない。


 皮も分厚くてより強い食感を味わえる。

 焼いたり揚げたりしても良さそうだな。

 アサギの分も取り分けた後、残った部分を近くを通りかかった国民に渡した。


 アサギも美味しいと言ってくれたし、この子を蚕みたいに家畜化出来ればいい名産品になりそうだ。

 他には色々な実やキノコがあるけど……こっちを試す勇気はないな。


 アサギにアゲハを読んで来て貰い、毒の有無をチェックしてもらう。

 案の定半分くらいは毒があり、ちゃんとリスト化して保存する。


 毒の無い実を皮と実で分けてテイスティングしていく。

 香辛料として使えそうなのは5種類あった。

 

 他にもデンプンが豊富に含まれている木の実なんかもあったので、アゲハが使い道を教えてくれた。

 ビール、餅、焼き菓子、麺、などが作れるらしいので、地下施設を拡張して工場を作って貰う事にした。


 後は、森でリスト化した名産物を取って来て、養蚕ようさんしたり木の実を栽培して育てれば農業も営めるようになりそうだ。


 「何してるの?」


 通りかかったマリルゥが話しかけて来たので、今の状況を説明すると「そんな事が出来るんだ」と驚いていた。

 幼虫はもう無いし、香辛料はこれだけで味わっても仕方ないので、残っていた糸を見せて上げた。


 「この糸、丈夫ね。

  それに、エンチャントも出来そう」

 「エンチャント?

  魔法の効果を付与出来たりするの?」


 「その認識で合ってるけど、炎を出したりは出来ないわよ。

  基本的には丈夫にしたり、魔力に対する耐性を付与したりって感じね。

  私なら少し丈夫にするくらいの事が出来るけど、専門の職人がいればもっと効果的なエンチャントが出来るわ」

 「それなら職人も募集した方がいいね」

 「この糸ってぇ! もしかして魔力を通したりできるのぉ?」


 「ええ、通せるわよ?」

 「それってぇ! この糸を伸ばしたらどれくらいの距離まで可能なのかなぁ!?」


 「たぶん、伸ばしたら伸ばしただけ出来るはずよ。

  でも、あんまり強い魔力は流せないと思う」

 「束ねたら強い魔力も流せる様になるぅ?」


 「一本の糸よりは強い魔力を流せる様になるわ」

 「それじゃあ! 糸を伸ばしたと仮定して、1キロメートル先まで魔力を伝えるのにどれくだいの時間がかかるのぉ?」


 「流石にそれは知らないわね。

  実際にやって見たらいいんじゃない?」

 「じゃあ実験!」


 アゲハが糸の先にキシン族達の作った魔力で光るランプを設置する。

 そこからピッタリ100メートルの所まで糸を伸ばし、マリルゥに魔力を流してランプを着けてもらう。


 結果としては100メートルならほぼ一瞬でランプが着いた。


 「マスター! この糸でケーブルとかワイヤーを作ったら色々な事が出来そうだよぉ!」

 「それじゃあ研究を許可するけど、表には出さないでね」


 「わかったぁ!」


 最初は何もなかったらどうしようかと思ったけど、色々な名産品が出来そうだし、楽しくなってきたな。

 アゲハの言っていたケーブルが完成したらすごい事が出来そうだけど、使いどころには気を付けないといけないし、有効な活用方法は考えて置こう。


 

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