第10話

 60代のシスターがラビックに声をかける。


 「あんた、こんな格安依頼を受けに来たのかい?」


 「はい!お掃除のお手伝いにこさせていただきました。それとここは聖ベリア孤児院でいいんでしょうか?」


 「あってるよ。ならさっそく働いてもらわないとね。ハッハッハッ。ミリア!スティーリー!お掃除の仕方を教えてあげなさい。ガキ共は私についてきな!」

 「はい」 「は~い」

「「「「「「「は~~〜い」」」」」」」


 60代のシスターが一斉に指示を出すとみんなが自分の持ち場に散らばっていった。

 最初に呼ばれた20代のシスターがミリア。

 次に呼ばれた30代のシスターがスティーリー。

 その2人は60代のシスターに言われた通り、ラビックに仕事の仕方について指導し始めようとしていた。

 初めに声をかけてきたのは、優しい雰囲気を持つスティーリーだった。


 「それじゃあラビックくん。ラビックくんは掃除で使えそうなスキル、魔法は持っていますか?」


 「いえ、この世界に来たのは今日が初めてなので。」


 「あの、もしかしてだけど。修練者、修行人、だったりする?」


 「えっ!………確かに自分のジョブはまだ修行人ですけど。」


 ラビックのカミングアウトに2人のシスターは慌てて60代のシスターのもとへ走っていった。


 

 ラビックが放置されてから1時間も経とうとしていた。その時、3人のシスターがラビックのもとに息をきらせながら戻ってきた。

 さすがに苦しそうだったので、ラビックが呼吸が楽になってからで良いですよ。と声をかけた。

 そして、少ししてからシスターたちが喋りだす。



 「まずは自己紹介からだな。2人は知っていると思うが、私はジェル。今回ラビックに話したいことは、記録があやふやな中でも伝えられてきた言葉なんじゃ。遠い昔修練者という者が何人か突然と現れた。この者たちは瞬く間に強くなり、いつの間にか姿が消えている。当人たちが言うことは決まってログイン出来なかったと。そんな状況が数年続いたあと、各国のお偉方と聖ベリアなどの神を崇める者たちの巫女という特別な存在に信託がくだされたこと。その信託の内容が【修練者や修行人は貴方達を強大な悪から守ってもらうために私達神が派遣したものです。ですが、信賞必罰は、この世界の、それぞれの国のルールで行ってください。】といったこと。だから、私達この世界の民は、ラビック達のことを他のところに行ったり来たりする変な隣人ってことだね。」


 シスターの言葉を聞いたラビックは、受け入れられて良かったと思ったし、こんなにゲームのスタート地点より前の部分の設定まであるなんてすごいと思った!


 

 その後、掃除を一段落したあとにシスターさんといろんな会話をさせていただいていた。というより、ラビックがわからない常識などを教えてもらっていた。

 意外だったのは、ここ数日のうちに自分の他にも修行人というジョブを持って急に現れた人たちがいたらしい。詳しくは知らないようだけど。


 掃除が終わったあとも子どもたちと遊んでぐたぐたになったときにシスターから依頼完了のサインがついた依頼票を渡された。


 そして最後にせっかく来たので聖ベリア孤児院にある小さな礼拝堂でお祈りをした。すると、礼拝堂に飾られていた聖ベリア像が淡く黄色に光り、少しだけ残った光がラビックの白天に入っていった。



 この光景を見た皆はびっくりしていたが、特に大騒ぎにならず、ラビックは聖ベリア孤児院をあとにした。


 聖ベリア孤児院から出たラビックは冒険者連盟ギルドについていた。

 まずラビックが行ったのは受付で依頼の完了を報告すること。たまたまだが報告を受けた受付嬢はいつもの女性だった。


 「依頼の完了を確認しました。報酬の銀貨1枚です。」


 「ありがとうございます。それと、お名前を聞いてもいいですか?毎回お世話になるのに名前がわからないと不便なので。」


 「あれ?初めに言ってなかったですか?すみません。いつもなら名前を最初の方にお伝えするでしたが。では、気を取り直して私はエリーアと言います。今後ともよろしくお願いします。」

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世界は世界を救いたい。~ここで生きるより、ここでみんなと生きたい @shirogane-ryuku

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