第30話 デビルロードから帰還せよ♡壮絶ぽっちゃり姉妹⭐️


「朱雀、寒くないか?」

「いえ、全然」

時間はもう明け方近くになっていた。

久しぶりのオールだ。

僕たちは何時間も肩を寄せ合って無言で海を眺めていた。


本当はめちゃくちゃ寒かったけれど、ここで寒いとは、口が裂けても言えない。

「いえ、寒くないです。むしろ暑いくらいです」

「朱雀は、感覚異常か?」

感覚異常なんてことはない。寒いも暑いも人並みに感じる。

ただちよっとした意地があるだけだ。


男としての意地。


「寒さを感じないと、何かに任務に支障ありますか?」

「任務には支障ない。寒くないなら、私がさっき貸したジャケットを

返してほしい。私はめちゃくちゃ寒い」

なんだ寒いのかよ!


僕は仕方なく、さっき借りたジャケットを脱いで、

ラムの肩にかけた。


「かたじけない」

彼女は眉ひとつ動かさないで、ジャケットを着た。

憎らしいくらいクールに。


「見てろ、今から風向きが変わるぞ」

ラムは人差し指を舐めて、高々と空にあげた。

「この季節、この地域は夜明け前に風向きが変わるんだ」

指に当たる風を感じながら、彼女は大きな瞳で僕をみた。


きゅん♡

きゅんしてる場合じゃない!


そのうち、西から吹いていた風が、東に変わった。

「朱雀、潮の流れをみろ」

「なんですか?」

「今から海が割れる」


ラムがいう通り、風向きが変わると同時に、少しずつ海面が下がっていき

20分ほどで、一本の白い砂の道ができた。


「あれは・・えんじぇるロード??」

「ばかいえ、渡ったものは一人として生きて帰ったもののいない、

デビルロードだ、しかし明け方のこの時間帯、人工知能、”阿津護李あつもり”の発電システムがわずか3分だけ停止する。昼に備蓄した電力が底をつきるんだ」

「電気ですか?」


「そうだ、高度に発達した巨大な叡智の結晶である人工知能、”阿津護李あつもり”の消費電力を100%まかなうには、魔監獄の発電システムは旧式すぎるのだ。我々が”阿津護李あつもり”を攻略できるとしたら、この3分間しかない」


「このデビルロードを僕に見せるために、ここに来たのですか?」

「あたりまえだ、なんだと思ったんだ」

やっぱりそうか、そうだよな。

そうに決まってるよな。変な期待した僕が愚かだった。


「よし朱雀、これから最後のテストだ。服を脱いで、今すぐ裸になれ」


なんだ、このドSな要求は?

何が”良し”だよ!

今から放置プレイか??

僕は130キロの巨体を晒したまま、裸で放置されるのか!?


「あっちむいててください」

僕は小さな声で行った。


「何を恥ずかしがっている!衣服一枚あるかないかで人を判断するほど

私は愚かではないぞ!」

そんなこと言ってないよ・・

これはいじめだよ・・・

「いやなら、君はここまでの男だったというこだな」

そう言われたら、僕にも意地があるぞ!

僕は、LLサイズのズボンを右足からゆっくりと脱いだ。


見ると、ラムは違う方向を向いている。

なんだ優しいじゃん。


「服を脱いだらこれをきろ!」

ラムが差し出したのは、真っ赤なドレスだった。

130キロのぽっちゃり童貞男子が、赤いドレスだなんて、異常をとおり越して

猟奇的でさえあるアルヨ!


「自分は今から、何をすればいいのですか?」

僕は半泣きだ、てか頬に涙が落ちていく。


「良い質問だ!」


なんだよ、良い質問て、スカートの下はノーパンだぜ。

股間がスースーするよ。

それを知ってか知らずか、ラムは振り返り、

真剣な表情で僕の肩に手を乗せた。


「今から最後のテストだ!ぽっちゃり好きの、ある重要人物から

情報を聞き出してもらう、いくぞ!」

いくぞって、この格好でどこにいくというのだ!

ラムはスクーターに跨った。


「御心のままに」


僕は仕方なく、赤いスカートを翻してスクーターの後部座席に跨り、

ラムの背中にピッタリ体をつけて、腰に手を回した。

「しっかり掴まっておけよ、妹よ!」

「妹!?」

どゆこと????

続く














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