第25話 ラブ・ガンNE0、キスはレモン味?

「郷田さん、私に5分ください、そのあとは煮るなり焼くなり、揚げるなり

どうにでもしてください」


「わかったぜ、じゃあ5分前」

郷田は、ロレックス オイスターパーペチュアルの秒針を睨んだ。

、きっと郷田の血液方はA型だ。悔しいけど、几帳面な男は好き♡


私は、タクシードライバーくんを膝枕した。

タクシードライバーくんは薄く目を開けた。

「ごめん、真衣華さん」

「いいの、話さないで」

私は、血でべっとり汚れた彼の髪を撫でた。

「あのね、初めてだったんだ、」

「何が?」

「女の人とちゅうするの」

こんな時なのに、私はクスリと笑った。

「初めてのちゅうが私ってわけ?」

「そう、ちゅうってレモンの味がするって漫画に書いてあって」

「それでレモンの味はしたの?」

男の子は首を振った。

「レモンの味はしなかった。でもマシュマロより、ロールケーキより

もっと甘くて柔らかくて心臓がドキドキした」

私は、男の子の唇にキスをした。

「これから毎日、何回でも何百回でもキスしてあげる、

だから死なないで」

「僕、たったさっきまで、今日で死のうと思ってたんだ」

「そう、私も今日死のうと思ってたんだ」

男の子は微笑んだ。

「マイナス✖️マイナスは、ほんとにプラスになるんだ、

死ぬほど嫌だった学校の勉強が初めて役にたった。・・」

「こんな時にバカね」


「はい、3分前・・」

郷田が時間を告げる。


「生きたい、生きて毎日真衣華さんとキスしたい、でも僕太ってるから・・」

「太ってても、素敵な人はいるわ、たとえば朝青龍みたいに」

「僕はあんなに運動神経良くないよ」

「あとは、F1ドライバーの角田祐毅も少しぽっちゃりで可愛いわ」

「彼は闘争心がすごい、勝つために生まれてきた男だよ」

「あとはラグビーしてる人」

「僕は心も体も打たれ弱いよ」

私は、彼の唇に指を当てた。

「もう自分の劣ってるところを探すの私やめるから、あなたもやめて」

「うん、」

「太ってても、痩せてても私は気にしない。だってあなたは世界でたった一人

、私にだけにオーダーメイドされた、何から何までぴったりの愛をくれたんだもの」

「そう、19年生きてきて、僕が誰かの役に立ったの初めてだ」

「君の名前を教えて」

「僕は朱雀健一郎130キロ」

「まあ、まるでドラマのタイトルみたい、『池中玄太80キロ』、けんくんは

130キロだから、主演の西田敏行さんよりキャラが立ってるわ」

「ありがとう、そんなの言われたの始めてだ」

私たちは、黙って唇を合わせた。


「はい、残り30秒・・・」


「15秒前・・・・・・・」


「ラスト10、9、8、・・・・」


私は、息を止めて、けんくんとキスしながら、自分が何者か思い出しつつあった。

咄嗟の時、なぜあれほど身のこなしが速いのか、私の左手はなぜ、義手なのか、

サンタちゃんがなぜ、私をミランダと呼んだのか。


「フイニッシュだ」

郷田の拳が彼の首を掴むより速く、

私は、宇宙で一番硬い物質、中性子星の物質でできた義手の、肘から先を取り外した。


あたいは、かつて、100000000万ドルの賞金がかけられた、

宇宙一残忍で冷酷なお尋ねものミランダ、

速撃ち0.03秒、愛をエネルギーとして、敵を殲滅する、

ラヴ・ガンを左手に持つ女。


「あばよ、マッチョ」


”ごおおおおおおおおん”


私のラヴ・ガンが火を吹いた。

郷田は、胸に私のラヴを受けて、もんどり打ってその場に倒れ込み

意識を失った。


「郷田安心しな、このガンでは誰も死なない、ただ、私のことが

大好きになっちゃうだけ、あんたが次に目覚めた時は、警察の留置場の

中だろうさ、警察呼んどいたから」


パトカーのサイレン音が近づいててきた。

続く



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