第10話 はやうち0.03秒、S &W M &P 9シールド拳銃。

どこから見ても、私と同じ顔をした”私”は、

耳まで裂けた口で、からからと笑い声を上げながら、

私にS&W642の銃口を向けた。


「あんたの脳みそをリボルブしてホイップしてやるわ!」


”私”が人差し指を、引き金にかけるのが、スロモーションで

目にうつった。


”やだ、なにこれ?やばすぎくん!”


脳は完全に思考停止しているのに、

しかし目は見開いたまま、

私と瓜二つの”私”から目を離すことができない。



耳障りなくらいどくどくと大きな音で動く心臓に、イラつきながら、

私は、両目を見開いたまま”私”を見つめた。


「死にやがれ!」


”私”は捨てゼリフを履いて、引き金を一気に引いた


”ばきゅーん!”


気がつくと、私の身体はまる自分の体でないかみたく、

床を一回転して、隣のテーブルの陰に滑り込んでいた。


その時間、わずか0.03秒。


”なに?私どうした?恐るべき運動神経!”


テーブルから顔を上げると、”私”が額から血を流しながら、

ばたんと、派手な音をたてながら、床に倒れ込むのが見えた。



私の右手には、母から譲り受けたS &W M &P 9シールド拳銃が握られていて、

微かな火薬の匂いをさせながら、

銃口からはうっすらと煙が立ち上っている。


”違う、違う、違う、違う!私じゃない!”


ふと、右肩に人の気配がしたので、横を向くと

サンタちゃんが、私の隣でしゃがんでいた。


「ちがわないよ」


サンタちゃんは、右手の中指と親指で、キツネさんを作って、

パチンと音を鳴らした。

「逃げるぞ」

そして暗転。

続く



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