道のり

 こんにちは、たてごと♪ です。

 「ヴェルサイユ宮殿」と「うるさいよキュゥべえ」って似てませんか。


 ……はい(

 よく聴く〝あやしい者ではありません〟ってセリフ。


 なんか微妙な感じがしてたんですよ、これ。

 だって、怪しいかどうかなんて受け手側が判断する事なのに、なんで怪しまれてる側がエラソーに言うんだって、思うじゃないですか。


 違うんだそうです。

 これ、〈出自がよろしくない〉って意味の「あやしい」なんだそうで。

 知らなきゃわからんて。


 まあこんな感じで、日本語って同音異義語があんまり多すぎるんですよね。

 これは、元になってる「やまとことば」が〝ボキャびん語彙ボキャブラリーひんじゃく)〟なせいで、そんな事になってるんですけども。

 具体的に言うなら、異なる概念があったとき、それらが関連性の有るものだったら同じことばを割り当てる、って感じで形成されてっちゃった言語なんですね。



     †



 だから例えば、「道のり」。

 この{のり}は「のり」って書きまして、〝他に〔程〕を{のり}と読むことばは無い〟ってことで有名なやつなんですけれども。

 だからと言って別に、無理やり当てつけたわけじゃなくて、いろいろ派生をてここに行き当ってるんですね。


 ます原初の「のり」は、「のり」。

 これは〈宣言を立てること〉って意味ですね。

 しんとうに出てくる「祝詞のりと」は熟字訓で、元は「のり」。

 〈ありがたいのりを与えること〉転じて〈エラそうな宣言をすること〉が「たまう」ですね。


 それが派生すると、〈告知をする〉って意味の「のり」になります。

 つまり〈名を告知すること〉は、「り」じゃなくて「り」なんですね。

 っていうか「名乗り」って……これ英訳したら「nameネーム riderライダー」だよね、中堅のやられ役キャラとして出てきそうだよね(


 さらなる派生として、何らかの決め事も、ったりったりするわけです。

 そうやって〈周知される決め事〉が、「のり」。

 だから〈決め事を採用すること〉が、「のりり」→「のっとり」になるわけですね。


 で、そんでもって。

 〈手本を定めたのり〉が「のり」。

 〈具体的なことを厳密に定めたのり〉が「のり」。

 〈のりに基づいて物を測るためのもの〉が「のり」。

 ちなみに〔矩〕には、〈金属製の定規〉という意味で「さしがね」の読みも有るんですがね。

 こここまでこう派生しまくって、やっと〈定規で測られた程度〉の意として、「のり」に辿たどりつくわけですわ。

 いや、どんだけ長い辿たどらせるねん。



     †



 ほか、別の枝。

 〈手順を定めるのり〉が「のり」。

 〈のりを記したもの〉が「のり」。

 〈人の従うべきのり〉が「のり」。

 〈のりで人を制御すること〉が「のり」。

 〈のりで事柄を制御すること〉が「のり」。

 〈のりで制御される事柄〉が「のり」。

 〈他者ののりに身を預ける〉が「のり」。

 〈物をのり物に乗せる〉が「のり」。

 〈乗っかられて伸びる〉が「のり」。

 〈伸びて広がる〉が「のり」。

 〈乗っかって取り付く〉が「のり」。

 〈付着するもの〉が「のり」。

 ついでに〈岩に付着するかいそう〉が「海苔のり」。

 まだ他にもあるかなあ。


 と、こんな感じで似たようなくくりにできそうなら、何でもかんでも同じことばに集約してしまっているのが「やまとことば」でして。

 どうでしょう、ちょっとあきれたものではございませんこと?

 いやもうご先祖さんどもよ、あんたら全員グーで殴っていいすか(

 だって「のり」と「のり」と「のり」って、もう全然関係ないじゃん!

 可愛いことばには旅をさせるな‼(



     †



 まあ物理で殴るはタイホだからアカン()ので、そんな感じのり分けを書き殴って()るやつがありまして。

 宣伝……というか布教になりますが。


 ◦『哲学魔王の【辞書】』

  https://kakuyomu.jp/works/16816927860319585661


 これは、せっさく『哲学魔王と迷える天使』でかなり特殊な語選びや字選びをしているので、それを解説する、というか備忘録みたいなのあったほうがいいな、という事で用意しているものです。

 遣われてるけどこっちで拾えてない語もまだ結構あるんですが、もしご興味ありましたらどうぞ。

 正直PVもほとんど付いてないアレなんですが、基本自分のために作ってるものなのでキニシナイ(


 とは言ってもまあ、そもそもぼくの思考回路のほうがいろいろと「あやしい」ので、信頼性のほどはどうだかよくわからんのですがね。

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