白崎榛菜の通話履歴

「あ、じぃじ?」


「はるなちゃーん! ひさしぶりだねぇ、元気してた? じぃじはねぇ、もう寂しくて仕方ないよ! はるなちゃんに会いたーい!」


「じぃじ元気そうだねぇ。じゃあもう会わなくても心配いらないかな〜」


「あ! いま急にお腹痛くなってきた! 頭も痛くなってきた! もうボケてきたから、はるなちゃんの顔を見てないと忘れてしまうかもしれん! もう一月ひとつきも会ってないよ! 寂しいよ〜!」


「じぃじ大袈裟だよ! また今度会いに行くから! でもね、煙草吸ってたらちょっと考えちゃうな〜。じぃじいっつも隠れて吸ってるでしょ?」


「いやもう吸ってない! もうしばらく吸ってないよ! 安心していいからね!」


———電話の後ろ側から、ばぁばの声が聞こえる。


(さっきまで吸ってたとよ〜! もっと言ってやって〜!)


「ほら、やっぱり吸ってる! 最近、友達が煙草でボヤが出た話してたから、じぃじが今度は家を燃やしちゃわないか心配になってたんだよ」


「(君は黙ってなさい!)……はるなちゃーん、それは大丈夫だから! もう燃やさない! じぃじが燃やすのははるなちゃんへの愛情だけだから!」


「キモっ! パパと同じこと言ってる! とにかく、煙草は控えないとまた大学にも怒られるよ」


「はーい……はるなちゃん、今度はいつ来るの? じぃじはもう気が短いから、こっちから会いに行っちゃうよ! 待つの苦手だからねぇ! いつ来る?」


「うーん。わかんない。でも、近々行くと思う。実はね、じぃじにお願いしたいことがあるんだ……財布が薄いけどお偉いさんの、じぃじにさ」


「財布が薄い? お小遣いならたくさんあげるからおいで! すぐおいで!」


「……いっつも思うんだけど……じぃじって本当に西海大学の名誉教授なの……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る