第49話
あれから、数年経った。
僕は未だに死ねないでいるし、死にたいと思っていた。だが、彼女達はそれを分かっているため僕の事を離してはくれない。薄々、このまま寿命を迎えるまで彼女たちに縛られ続けるのだろうなと感じてはいるものの、この死にたいという感情はずっと残り続けると思う。
祥子、美鈴、可憐、鏡花は高校を卒業した。
美鈴と可憐、鏡花は大学へと進学し、祥子はVtuber活動に専念し更にお金を稼いでいる。祥子はどちらかと言えばVtuber活動を頑張るために大学に行かないというよりも僕の近くにいたいという思いが強かったみたいで、大学進学をしなかったようだ。
勿論、他の大学に進学した子達から反感をかったが「私は、悟を十分養えるほどお金を自分で稼げるけれどあなた達は稼げない。それがあなた達と私の差」と勝ち誇ったような笑みを浮かべてそう言い、更に反感を買っていた。
だが、実際に祥子は高校生には似つかわしくないほどのお金を稼いでおり、言い返す言葉がなかった他三人は、悔しそうにしていた。
唯一、祥子の言葉に傷を負っていなかったのは桜で「私もお兄ちゃんのことを養えるくらいにはお金稼げるし、高校卒業したら声優業に専念しようかなー、どうしよう」と言っていた。
僕はと言えば恥ずかしいことに戸籍も人権もないので彼女達に養われており、鏡花の家の力で地元から遠く離れたところに家を新しく買って貰ったためその家に住んでいる。
本当に鏡花のお義母さんには感謝しかない。
そんなわけで僕は彼女たちに養われながら家で、家事をしている。家にいても特にやることも無いのでそれぐらいしかやることがないのだ。
趣味でも探してみたらと言われたが、強いて言えばどれも僕の趣味には合わなかったし祥子が家でゲームをしているのを眺めるのが趣味と言えるだろうか。表情の変化が少ない祥子がゲームでは幾分か表情が変わるのが、微笑ましくてニコニコしてしまう。
だから、今日も今日とて祥子を膝にのせてゲームしているのを眺めているのだが、時間を見るともう午後三時になっていた。そろそろ彼女達も帰ってくるし夕飯の準備をするために、買い物に行かなきゃ。
「祥子、買い物行ってくるけれど一緒に行く?」
「うぅ........どうしよ。一緒に行きたいけれど今ちょうどいいところだから」
「じゃあ、待ってて。直ぐに帰ってくるから」
「ダメ、やっぱり私も行く。悟を一人にしたら何するか分からないから」
そう言った祥子は電源を切ってある程度身なりを整えると手を握ってくるので一緒に家を出た。
祥子は終始機嫌がよさそうに僕の手をにぎにぎとしていて、可愛い。
そのまま二人で晩御飯のメニューを考えながら買い物を済ませ、帰り道でも荷物を半分にして手を繋いで帰っていると、目の前の踏切で今にも死んでしまいそうな足取りでふらふらと歩いている女子高生を見つけた。
踏切の遮断機が下りていくがお構いなしにその中へと侵入していこうとする彼女に思わず僕は祥子の手を放して、走り出していた。
寸での所で彼女をどうにか助けて、踏切内から脱出する。
「だ、大丈夫?」
僕がそう声を掛けると、彼女は此方をキッと睨みつけてきた。
「どうして、助けたのっ!?私は死にたかったのに」
彼女の怒鳴るような声に僕は、何も答えずただそっと抱きしめた。そうすると、彼女は泣き始め僕の胸を涙で濡らしていく。
祥子の方へと振り向くと、ぶくりと顔を膨らませて此方を見ていた。
「悟、また助けるの?もう十分じゃない?」
「……ごめん」
「……別にいいけれど」
こうして、僕はまた助けてしまった。
僕はこれから先も父親の呪縛に捕らわれ続け、こうして誰かが死にそうになっていれば助けようとしてしまうのかもしれない。
きっと僕が死ぬまでこれは続いていくような気がする。誰かを助け続けたところで子の呪縛からは逃れられないし、贖罪は死ぬまで終わらないだろう。
........あぁ、早く死にたい。
----------------------------------------------------------------
こんにちわ、kanikuiです。
若干消化不良化と思いますがこの話はここでいったん完結とさせていただきます。曇らせなんて言ったものの、いつの間にか曇らせ以上の物を書いてしまっていました。まぁみんなヤンデレ好きだしいいよね........なんて。
美鈴の過去や可憐の過去は出さず仕舞いになってしまったのは申し訳ありません。悟以上の重い過去が思いつかなかった私の落ち度です。悟の過去を書いた時点で燃え尽きていました。
そんなわけでこれ以上書いていてもグダグダとしてしまうと思い、ここで終わらせます。
この作品を読んでくださってありがとうございました。
そして次いでですが『キモデブブサイクが三人の美少女を攻略するRTA』を出すのでよろしくお願いします。女の子の激重感情が好きな人は是非。
それでは、またどこかで会いましょう。
僕が死んだことになったら、知らぬ間に彼女たちは曇っていた かにくい @kanikui
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます