第14話
「悟、おかしいよ。どうしてよ。なんで黙っていなくなっちゃうの?」
放課後の空き教室。私は悟が使っていた椅子に腰掛け机に頭を乗せ少しでも悟の温もりを感じたかったが、そこにあるのはただ冷たい椅子と机で。もう何も温もりなんて残ってなくて。
私の言葉は誰にも反応されることもなく、宙に消える。
いつかひょっこり顔を出してくれるんじゃないか。また私の前に現われて撫でてくれるんじゃないかなんて思って悟に会いに行くためだけに学校に通うも悟は現れるはずもなく日々を無駄に浪費していっている。
私だってこんな縋りつくようなことはしたくはないけれど、私にとって悟という人間はあまりにも大きすぎたのだ。悟が死んだことで後追い自殺をしてしまいたくなるほどに。悟が居なくなってから私には悟しかいないことに改めて気づかされた。確かに友達も大事だ、家族も大事だ。それよりも大事だったのが悟だったというだけ。
心に穴が空くという表現を聞いた頃があるけれど、こんな感じなんだと実感した。自然と何度流したかもわからない涙が零れた。
これから先を生きていく自信が粉々になって、明日をどう生きればいいのかさえ分からなくなっていた。悟が生きているときであれば、悟に会いたい、悟の声が聞きたい、悟と話したい。そんな思いが沸々と湧いてきて、私の生きる理由になっていた。
それが無くなってしまったのだ。
時間が解決してくれるだろうか..............なんて思いこもうとしたがそれすら心は受け付けないようで今は緩やかにただ死を待ちたいなんて考えに至ってしまっている。
せっかく悟に助けてもらったのだから、せめて悟の分まで精一杯生きようと思いたいのだがどうしようもなく足が重いし震えるのだ。前をどうしても向けない。支えてくれる、暖めてくれる、慰めてくれる悟がいないから。
私は一人で歩くこともできない程弱い。悟が居なきゃ何にもできない程に弱いのだ。
悟がくれた耳に付いているピアスをそっと撫でる。悟が私にくれたプレゼント。あの時には既に悟なしじゃ生きていけない程心酔していたのかもしれない。
悟との思い出に浸っているといつしか虚しくなりまた涙が零れてしまう。一頻り涙を流した後、窓の外を見るともう真っ暗になっていた。
荷物をもって、空き教室から出る前に...........
「また明日」
私は何となくそう言った。勿論、誰もいるはずもない。他人から見れば頭のおかしい行為だろうけれど、私は昨日も、一昨日もずっとこうして「また明日」と言ってきた。
強いて言うのならば悟の机と椅子に言っているのかもしれないし、ここに来れば悟との思い出を振り返れるからかもしれない、悟を絶対に忘れない様にするためかもしれない。
虚しくなるのは分かっているのにするのだから馬鹿の所業としか言えないけれど、私はこれを卒業するまで止めるつもりは一切ない。それにこの先もずっと悟の事を考え続けて生きていくだろう。
新しい恋なんていらないし、興味もない。私には悟だけって分かっちゃったから。
悟、あんただけいればよかったのに。私は多くを望みすぎたのかもしれない。でも望まなかったらそもそも悟とは出会っていなかった。
「悟..............私、自信ないよ。悟が居なきゃダメなんだってわかった」
一人寂しく下校する。
心が明らかに弱っているのが自分でも分かった。
悟..............また支えてよ。私の隣を歩いてよ。私を
「タスケテ」
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