第1節 不可解ないじめ問題

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PM 16:15 探偵事務所 如月


 北海道札幌市。自然と都市部が隣接するこの街に、1人の魔術師が探偵業を営んでいる。

 中島公園からそう遠くないところで、古い屋敷を店にしている女は誰か。

 私である。今日もまた人がいなく、暇を持て余していたところである。っとまぁ、小さな依頼をちまちまとこなしているだけだが。

 今日だけで、5件ぐらいの依頼を解決したのか、営業時間から相当経っていた。


「もうこんな時間か。案外、時の流れってものは早いものだね」


「姉さんったら、魔具の鑑定に結構時間かけるんだもの。それなら、時間の流れは早いに決まってるでしょ?」


 私の妹、ラスティアは資料の整理を終わらせ、体を伸ばしている。市からの税金の請求書などをまとめてもらっていたのだ。

 気分転換がてら、ラスティアは私の空になってるマグカップにコーヒーを淹れる。

 私はコーヒーを口に入れ、ハンコを依頼書に押す。そして、それを完了後の請求書をホチキスで止める。

 それを私は、終わらせた分だけ延々と行う。すると、古い電話器から電話がかかった。


「もしもし」


『もしもし? あら? アルじゃない』


 電話の相手は、セシリアだった。いつも通り、暇になってかけてきたのだろう。

 電波の感じから、どうやら日本国外にいるらしい。

 

「セシリアか。暇でかけてきたの?」


『今はね。まぁ、私の暇つぶしに少し付き合いなさいよ』


「暇つぶしって、君、今どこにいるのさ」


 セシリアの電話越しから、何かの騒音が響いている。珍しく、戦地にいるようだ。


『今? 丁度アフガンの方にいるわ。『師団』の護衛で、私込みで借り出されてるのよ。

 あのお子様の要請でね。全く、こっちとしては例の魔術師の処刑に出ようとしたところなのにね』


「そう。なら、この街に絡むことは今回は特に何もないってわけか」


『さぁ? そのうち来るでしょうよ。じゃ、私はこれで』


 ガチャッっと音と共に、電話を切る。どうやら、今回はセシリアはこっちに来れないらしい。

 参ったな。もしまた厄介事が起きたら、私1人で対処するしかないらしい。

 それが起きなことを願っていたが、事務所のドアが開く音と共に、その想いは気泡に消えていたのだった。


「ご、ごめんください。こ、ここって、探偵事務所 如月であってますか?」


 学生達が、ここに訪ねてきたようだ。制服から見るように、この辺の高校に通ってる生徒達だ。

 人数的には3人。女の子が2人と男の子が1人だ。


「えぇ。そうですが? どういった要件で?」


 ラスティアが、訪れた学生達の対応を行う。すると、学生達が合言葉を喋り、私は椅子から立ち上がる。


「姉さん。合言葉ありの要件だけど、どうする?」


「決まってるでしょ? それじゃ、みんな腰をかけて」


 私は、学生達をソファーに座らせ、彼らの事情を聞く。ラスティアはコーヒーを用意し、学生達にもてなす。


「それじゃまず、要件の前に何でここへ来たかを教えてもらえる?」


「掲示板で、ここの存在を知りました。調べたら、中島公園の近隣に店を構えてるのを知って来ました」


 やはりそうか。学生達に、あえてここを知ったのか聞いたら、やっぱりネット掲示板だったようだ。

 誰が流してるのかは、今はどうでもいいだろう。それよりもまずは、学生達の要件を聞こう。


「なるほど。それじゃ、要件を聞こうか」


「はい! では、単刀直入に――――――私たちのクラスのいじめを止めてください!」


 眼鏡をかけた女子高生が、私に頼み込む。私は彼女がいういじめに、首を傾げる。


「いじめ? それは先生に頼むのが筋じゃないの? 学校とは無縁の私に言ったて意味がないじゃ」


「いいえ、先生じゃ頼めれないから、あなたにお願いしてるんです。そうでなきゃ、妹の……!」


「お願いします! あなたじゃなきゃいけないんです!」


 短髪の女子高生が、男子高生の拳を握り私に頭を下げる。

 私は、彼の顔を見てただ事ではないことを察した。


「わかったよ。何が起きたか、教えてもらえるかな? 君達から聞いたことは、誰にも言わないことを約束して、いいかな?」


 私は、彼らから校内で起きているいじめについて、話を聞く。


「実は、クラスのカースト上位にいる連中のいじめが日に日に酷くなるばかりなんです。

 あいつら、前から悪質ないじめを繰り返して来ていたので、教師達の警戒していたんですが、ある日を堺におかしくなったんです」


「おかしくなった? それはどういう?」


「その日から、どれだけ彼らがいじめをしても誰も見向きをしなくなったんです。

 それにいい気になった彼らは、エスカレートしていって、今では関係のない生徒にまで被害が及んでるんです。

 その絡みで、彼の妹は……」


 眼鏡をかけた女子高生が言おうとしたが、男子高生に止められる。


「妹は、奴らに孕ませられたんです! 俺は助けに行ったのですが……。奴らの奇妙な力の前に屈服し……それで妹は……」


「その妹さんは、今はどうされてるの?」


「今は入院しています。でも、精神的なダメージは深刻で、退院ができない状況なんです」


 彼らの話を聞き、不快感を覚える。これはもう、早急に手を打たないと行けないらしい。

 ラスティアの方を見ると、左手で右手を握っている。彼らの話を聞いて、昔のことでも思い出したのだろう。


「なるほど。要件はわかったよ。では、明日から取り掛かることとしよう」


「いいんですか?」


「あぁ、もちろん。それと、今回は無償で請け負うとしよう。学生から巻き上げおうなんて野暮なことをしないよ」


 彼らは、一礼をし事務所を後にする。私は彼らを見送り、そしてラスティアの方を見る。


「大丈夫かい?」


「うん……。大丈夫だよ」


 ラスティアは、少し顔を悪くしながら、頷く。そして、すぐさま食事の用意を始める。

 こうして、私は今日の営業を終わらせるのだった。

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