プロローグ

PM 4:40 イギリス ロンドン


 ここは、魔術院まじゅついん。世界各国から魔術師達が集う、言わば魔術師の総本山そうほんざんだ。

 私、草薙美羽はこの魔術院の中でも、高い地位にいる組織、『魔術評議会』の議長専属の秘書である。

 どこから見ても華やかに見えるのは無理はない、のだが。


「はぁ……。なんで、こんなに書類が溜まってるのかしらね」


 ご覧の通り、書類しょるいの山である。私はそれに覆われており、やってもやっても無くならない。

 それに比べ、あっちはというと。


「リリィ。少しは手伝いなさいよ」


「えぇ〜。それは君の仕事でしょう? 僕は、この書物の読書で忙しいから、頑張ってね〜」


 リリィの言葉に、イラッとする。この子供は、やる気のないことには興味がないのだ。

 なぜ議長になったんだ? つくづく謎に感じてしまう。

 そうして、終わりの見えない資料の処理をしていると、扉から、誰かが来たみたいだ。


「ただいま〜。ってまたこんなに資料が溜まってる!!」


「おかえり〜。執行者宛しっこうしゃあての資料、持ってきた〜?」


「持ってきたけど、これじゃ置けれないよ」


 朱い髪を丸く纏めた少女が、持ってきた資料を置けれなくて困ってる。リリィのサボりぐせのつけだから仕方ないが、ここまで貯められると迷惑でしかない。


「お帰りなさい、イロハ。それは私が預かるから、座ってちょうだい」


「ありがとう、お姉ちゃん。もう、リリィちゃんは興味のあることしかしないんだから」


 イロハは、リリィのサボり癖の酷さに呆れている。そして、持ってきた資料を私に渡す。

 渡された資料を見てみると、何やら気になる資料を見つける。私はそれを見てみると、あの街に関する資料を見つけた。


「ん? 札幌に関する資料が合ったけど、何かあったの?」


「うん。札幌の学校で不可解ないじめ問題が起きてるんだって。執行者の方には、持って行っていいって言ってたから持ってきたの」


「不可解ないじめ問題? 魔術でも絡んでるのかしら?」


 私達がそんな会話をしていると、リリィが本を閉じてデスクに頬を着く。


「それ、魔術師が絡んでるよ。魔術師が非魔術師に魔術を教えるのはこっちの了承りょうしょうが必要になる決まりだしね。

 良かれと思ってやるのはいいけど、違反行為には変わりがないね」


 リリィの発言に、私達は驚愕する。確かに、一般人が魔術を知ることなんてあり得るはずがない。

 だからと言って、それを看過することもできない。


「なら、セシリアさんに依頼するしか……」


「だめだよ。セシリアには、別案件で今中東の方に行かせてるよ」


 セシリアさんが動けれないことに、困り果てる。さて、どうしたものか。


「なら、美羽、君が行けばいい。それなら全て解決するよ」


 リリィは、私にこの件の派遣を支持する。あまりにも突然なことに、驚きを隠せない。


「な、何を言ってるの!? お姉ちゃんは、リリィちゃんの秘書でしょ!? 行けれるわけないでしょ!」


「何を馬鹿なことを! そんなのできるわけ無いでしょう!」


 私とイロハの反論はんろんに、リリィは笑みを浮かべる。


「できるよ。僕の認可にんかがあれば、君ら2人を行かせる事だって可能さ」


 そういえばそうだった。彼女は魔術院のトップである『評議会議長』だった。

 私は、嫌々とそれを承諾をする。


「わかったわ。でも、その代わりこの資料の山、どうにかしなさいよ」


「はいはい。それじゃよろしく〜」


「気をつけてね、お姉ちゃん。それと、あの人にあったらよろしくって伝えてね」


 私は、イロハの頭を撫でると議長室を後にする。

 こうして、私は唐突にあの人が、『魔女』と呼ばれてるあの人のいる街に向かうのだった。

 

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