情けない男の、たった一つ。

おにいちゃんです

Prologue

今から、本当にガキみたいな事言わせてもらうがな。

学校なんてクソだ。俺の今在籍しているようなタイプのそれは、特に。

多数派に迫害される為に電車に揺られ、無意味な事を知る為に物を書き、アホみたいに面倒でクソ重い物を背負って帰路につく。

どうせここで覚えた知識なんて大抵、ここかその次かでさよならだろう。


……今は3限、公民の時間だ。まだ一学期だからか知らんが、ろくな事を教えられない。こんな内容、みんな知っている。

1955年10月24日。創立10周年を迎えた国際連合が、ある声明を発表した。あるもの、いや者たちの存在を、認める声明を。


一応正式にそれの存在が認められたのは、これが初めてだ。日本を含めて、各国では戦前から噂や資料はあったと言うが…まあ、それを言い出すとキリがない。


ともかく、世界は……“超能力”の存在を認めた訳だ。


それまでには色々と呼び名があったが、その時に『T』という名称が設定されたらしい。英語で才能……Talentの頭文字を取って、T。


まあ実際にはそう呼んでる奴もいるし、呼んでない奴もいる。Tというのは短いし覚えやすいから、俺はそう呼ぶ事にしているが。

ともあれ、それの所有者は数を増やしていった。そしてその間に技術は進み、最低限所有者か否かの区別くらいはつけられるようになったらしい。


そんでそれから少しして、どっかの企業がTの教育を専門にした学校を創った。そいつがあまりにも上手く行ったもんだからブームが巻き起こり、それに乗ってうちの初代学長……ああ、あとその他のみなさんがこの学校を建立した。初代T教育校が20年前、うちの設立が8年前の事だ。


Tに関する法律も何も決められていなかったくせして、こういうのだけは速攻で始められるのには違和感が残るが……まあお偉いさんにとっちゃ、T持ちを監視しながら隔離できるって点で見れば、さぞ楽だっただろうな。


ちなみにそれが理由かは知らんが、基本的にこういう学校は公立だ。うちのような私立の学校は珍しい。

え?俺のT?……碌なもんじゃない、聞くのはやめときな。

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