孤児院天使さんは今日も曇り空に向かって「光あれ」と呟く

南瓜の王冠

第1話 モーセの如く割れる曇り空

十年前は廃物件だった教会兼孤児院でふと思う…こっちに転生してから十年も経ったのかと。


転生した当時こそ困惑したもののその時やっていたMMORPGのマイキャラに転生していた為案外大抵の事が何とかなったのだ。と言っても私は基本的に生産職…それも「農家」なのだが。


転移すぐ住む家は無いかと周囲に話を聞き向かった不動産屋的な場所に金を払ってまで押し付けられた産廃物件だが、何だかんだ長く住んでいると愛着が湧いてくるし、それに共に孤児達を育て上げた戦友なのだ。


十年の間に孤児院を卒業した孤児も多々いれば新しく入ってきた子も多い。転生前の自分に言ってもそんなボランティアじみた事をするなんて信じないだろうが何だかんだやり甲斐も感じていた。


だから私は子供達の明日の洗濯物を乾かす邪魔をする不躾な雲に向かって謳うのだ。


「光あれ」と。


言い忘れていたがMMORPG時代から引き継いだ私の種族は『天使』だ。

この場所…魔国ではかなり珍しい種族だと自負している。


私の一言によりモーセの如く割れ光が差し込めていく雲を見ながら目を細めた。

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